宇多田ヒカルさんのデジタルシングル「PINK BLOOD」(2021年6月)の歌詞の意味を考察します。
NHK・Eテレのアニメ「不滅のあなたへ」第1シリーズ(2021年4月~8月)のオープニングテーマに起用されました。
宇多田ヒカルさんが作詞・作曲・共同プロデュース、小袋成彬さんが共同プロデュースした「PINK BLOOD」の歌詞を紐解きましょう。
「不滅のあなたへ」の概要
原作は大今良時さんのSFファンタジー漫画。
不死身と変化の能力をもつ「球」として地上に投げ込まれたフシが、「球→石→オオカミ→少年」と変化しながら、永遠の旅に出る物語です。

PINK BLOOD 歌詞考察!
タイトルの意味

J-POPらしい「Aメロ→Bメロ→サビ」というわかりやすい構成ではありません。
どうにか当てはめるなら、タイトルを繰り返す冒頭部分は「イントロのコーラス」かつ「前サビの一部」です。
一般的に血の色といえば赤ですが、あえてピンクになっている真意は明かされていません。
「不滅のあなたへ」の主人公フシが普通の人間とは異なる不思議な存在であることを示唆している可能性もあるでしょう。
あるいは蓮の花やローズクォーツを連想する愛の色の象徴とも受け取れそうです。

ラップ調になりすぎない、ゆるやかなラップによる「サビの前半」です。
「PINK BLOOD」で描かれているのは自分を肯定してアイデンティティを見つける「自己愛」。
宇多田ヒカルさん自身、他人に依存し、自分を見失うような人間関係に悩んだ時期もあったようです。
そこで「自分とは何か?」という普遍的なテーマが、「不滅のあなたへ」の登場人物の心情とも重なりました。
他人の目を気にして「キレイ」に見せようとしたり、他人が「キレイ」と評価するものに流されたりする必要はないという強い決意が伝わってきます。

いわゆるAメロに相当するボーカルパートです。
「空気を読む」ことが暗黙の了解となっている昨今、まわりに合わせすぎると自分を見失う危険性もあることが指摘されています。

Bメロに相当するボーカルパートです。
「私」の価値を決められるのは「私」だけという、ハッとさせられるメッセージが込められています。
たしかにどれほど他人に評価されても、その基準が自分の価値観とズレていた場合、納得感は得られないでしょう。
他人に期待される自分を演じるうちに、人生の方向性すらブレる可能性があります。
自分らしい生き方やありのままの自分を大切にしたいものですね。

「誰にも~」の部分が繰り返された後に続く、ゆるやかなラップ調の「サビの後半」です。
自分が悪いときでも他人のせいにするのはもちろん良くありませんが、謙虚さをはき違えて自分を責めすぎるのは「カッコ悪い」ことだと気づかされます。
王座を失っても自分らしさを追求しよう!

全体的に切れ目なくつながった浮遊感ただようサウンドですが、あえてJ-POP的な構成に当てはめるなら「2番のAメロ」に相当するボーカルパートと言えるでしょう。
これまでは自分を肯定する「私」の強い意思が表現されていましたが、ここで他人の「あなた」が登場しました。
自分を見失う出来事といえば、やはり恋愛関係。
恋人の予定に合わせて「部屋」で待っていても、なかなか帰ってこなかったのかもしれません。
こうした他人に依存するような状態を「コドモ」と表現し、そこから抜け出そうとしています。
アニメの主人公フシが変化する様子とも重なるのではないでしょうか。

「2番のBメロ」に相当するボーカルパートでは、孤独を紛らわす(心の穴を埋める)ための恋人(何か)であれば失ってもかまわないという覚悟がみなぎっています。
たしかに「誰かに癒してもらいたい」と期待している限り、他人に依存する状態から抜け出すことはできません。
「自分の価値を決められるのは自分だけ」と同じように、「自分を元気づけられるのも自分だけ」と気づくことが「自己愛」にたどり着くポイントになりそうです。

ゆるやかなラップ調のサビにつながりそうなところですが、新たなボーカルの大サビへと変化しています。
サウンドでもフシの変化を表しているようです。
「終わりの見えない道」というのも、永遠に冒険を続けるフシと重なります。
「サイコロを振って進むすごろく」のように、困難な人生でも楽しみながら前進しようという話でしょう。
「後悔を着こなす」というおしゃれな表現に元気づけられる人も多いのではないでしょうか。

すごろくのようなボードゲームには「一回休め」がありますが、現実の人生ではなかなか休めず、無理しすぎてしまうときもあるものです。
それでも「まわりを気にする必要はない」と言われたら、自分を大切にすることを思い出せるはず。
フシは、動物の「王座」ともいえるオオカミのままではいられません。
また、J-POPの「王座」に君臨するだけでなく、自分らしい音楽を追求しようとする宇多田ヒカルさんの決意も読み取れたのではないでしょうか。

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さいごに
ドレイク(Drake)やフランク・オーシャン(Frank Ocean)などのヒップホップに影響を受けている宇多田ヒカルさん。
音楽家として歌詞もサウンドも、J-POPの枠から飛び出す変化を続けているところが「不滅のあなたへ」のテーマとも重なります。