バンプことBUMP OF CHICKENのデジタルシングル「クロノスタシス」(2022年4月)は、アニメ映画「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」(2022年4月)の主題歌。
藤原基央さんが作詞・作曲した「クロノスタシス」の歌詞の意味を考察します。
「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」の概要
青山剛昌さんの漫画を原作とした「名探偵コナン」劇場版シリーズの25作目「ハロウィンの花嫁」。
主人公の江戸川コナン(工藤新一)のほか、東京・渋谷で結婚式を挙げる刑事カップルの高木渉と佐藤美和子、「警察学校組」の降谷零(安室透)、松田陣平、萩原研二、諸伏景光、伊達航という同期5人がキーパーソンとして登場しています。

クロノスタシス 歌詞考察!
クロノスタシスの意味
もう一度ドアを開けるまで
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
ノルマで生き延びただけのような今日を
読まない手紙みたいに重ねて
また部屋を出る
「クロノスタシス」の登場人物は、語り手の「僕」と「君」。
映画の主題歌なので、「誰目線の歌詞なのか?」や「誰と誰をあらわしているのか?」が気になる人も多いでしょう。
結論としては、「僕」は藤原基央さん自身で、「作品の登場人物と重なる部分を抽出する」という作詞方法がとられたと考えられます。
主題歌などのタイアップ曲の場合、作品先行の「書き下ろし」と楽曲先行の場合もある「起用」の2パターンに分かれ、「クロノスタシス」は「起用された」と発表されました。
ただ、楽曲リリースと映画公開の時期を踏まえると、まったく作品内容を意識せずに楽曲制作されたとも断言できません。
この微妙なラインを意識しつつ、歌詞を紐解いていきましょう。
帰宅してから再び外出するまでのあいだ、「ただ今日を生き延びること」が「ノルマ=達成すべき作業」と化し、知り合いからの連絡にも答えないような日々が続いている「僕」。
毎日の仕事をこなすだけで疲れ果てているのかもしれませんし、虚無感を抱えながら惰性で生きている可能性も考えらえます。
映画に照らし合わせると、同期5人のうち1人だけ生き残っている降谷零、亡くなった松田陣平への思いを乗り越えて結婚する佐藤美和子の心情なども重なりそうです。
明け方 多分夢を見ていた
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
思い出そうとはしなかった
懐かしさが足跡みたいに
証拠として残っていたから
「夢を見た」感覚がありながら目覚めたときは、意識的に内容を「思い出そう」としなければすぐに忘れてしまいがちですが、そうしなくても「君の夢」だったとわかるほど「懐かしさ」で満たされていたという話でしょう。
「足跡」や「証拠」といった言葉遣いがミステリー仕立てですね。
大通り
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
誰かの落とした約束が
跨がれていく
道路に待ち合わせなどの「約束」が書かれたメモが落ちていても誰も拾わず、大勢の人が行き交う様子が描写されています。
藤原さん自身にも果たせなかった「君」との「約束」があるのかもしれませんし、渋谷の「大通り」も連想できるのではないでしょうか。
この街は居場所を隠している
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
仲間外れ達の行列
並んだままで待つ答えで
僕は僕を どう救える
1番のサビ前半です。
「居場所を求めて、仲間たちが行列をなす街」という定石をすかすところに藤原さんらしさが垣間見えます。
「約束」が見向きもされない「街」には「居場所」も「仲間」も見当たらないと考える「僕」が、自分自身を「救う」方法を模索しているようです。
あくまでも藤原さん自身の心情が描かれていると理解しつつ、渋谷に集結した「警察学校組」(仲間外れ達の行列)を連想するコナンファンも多いのではないでしょうか。
飾られた古い絵画のように
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
秒針の止まった記憶の中
何回も聞いた 君の声が
しまっていた言葉を まだ 探している
タイトルの「クロノスタシス」とは「視線を移動させ、サッカード(急速眼球運動)が起きた直後に見た映像が長続きするように感じられる、目の錯覚」のこと。
代表例として「アナログ時計を見た瞬間、秒針が止まって見える現象」が挙げられます。
この1番のサビ後半で描かれていることそのものですね。
今となっては過去にしか存在しない「君の声」を反芻し、「君が言わなかった言葉」あるいは「君がこれから言うはずだった言葉」を「探している」といったところでしょうか。
ここでも4人の同期を失った降谷や佐藤刑事の心情も重なりそうです。
過去と未来がつながる
ビルボードの上 雲の隙間に
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
小さな点滅を見送った
ここにいると教えるみたいに
遠くなって消えていった
友だちとUFOのようなISS(国際宇宙ステーション)や飛行機(小さな点滅)を見たという藤原さん自身のエピソードが盛り込まれているパートです。
不意を突かれて思い出す
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
些細な偶然だけ 鍵にして
どこか似たくしゃみ 聞いただとか
匂いがした その程度で
「過去に見送り、今は小さな点滅になった君を思い出すきっかけを探している」のでしょうか。
臆病で狡いから
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
忘れたふりをしなきゃ
逃げ出しそうで
「君のことをずっと忘れられないままだと辛すぎて耐えられないから、思い出すきっかけを探して、忘れたふりをしている」ということですね。
例えば未来 変えられるような
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
大それた力じゃなくていい
君のいない 世界の中で
息をする理由に応えたい
2番のサビ前半です。
大切な人を失い、「生きる理由」を見失いかけている人にとっては「かけがえのない力」になる言葉が並んでいます。
僕の奥 残ったひと欠片
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
時計にも消せなかったもの
枯れた喉を 振り絞って
いつか君に伝えたいことがあるだろう
2番のサビ後半です。
「僕の奥 残ったひと欠片」は「君の声がしまっていた言葉」にも通じるところがあり、過去だけではなく、今も存在しているものの、具体的に「君に伝える」とすれば「いつか」(未来)になるとのこと。
「~ひと欠片」や「~言葉」の中身が今は明かされないことによって、未来へつながるという「時間にとらわれない」様子が描写されているようです。
映画の内容も重なる
それっぽい台詞で誤魔化した
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
必要に応じて笑ったりした
拾わなかった瞬間ばかり どうしてこんなに
今更いちいち眩しい
「適当な返事や作り笑いで受け流した何気ない過去ほど、今になって懐かしく思えるのはなぜだろう」と自問自答しています。
この街は居場所を隠している
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
仲間外れ達の行列
並んだままで待つ答えで
僕は僕を どう救える
1番のサビ前半と2番のサビ後半「伝えたいことが」までが繰り返された後に続く、2番のサビ前半の変化形です。
藤原さん自身の心情に、映画の内容も絶妙に重なっています。
飾られた古い絵画のように
出典:クロノスタシス / 作詞・作曲:藤原基央
秒針の止まった記憶の中
鮮明に繰り返す 君の声が
運んできた答えを まだ
しまっていた言葉を 今 探している
ラストは1番のサビ後半の変化形です。
「君の声が答えを運んできた」や「今しまっていた言葉を探している」についても、降谷の心情が重なるのではないでしょうか。

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さいごに
結局「君」についても、藤原さんと友だちが空を見上げて思いを馳せるような誰かだったのか、リスナーも重なっていたのか、松田や萩原など同期4人を重ねてもいいのか、曖昧なままです。
「僕」は藤原さん自身と本人が明言していても、降谷目線の歌詞と夢想したくなるほど、映画と重なる部分がたくさんありました。
バンプファンもコナンファンも「曖昧ぶりを堪能する、物語になぞらえる」とそれぞれ楽しめますね。