宇多田ヒカルさん「光」の歌詞の意味を考察します。
光 歌詞考察
光の中、目が覚める
どんな時だって
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
たった一人で
運命忘れて
生きてきたのに
突然の光の中、目が覚める
真夜中に
ディズニーと提携したスクウェアのゲームソフト「キングダム ハーツ」のテーマソングで、アサヒ飲料「三ツ矢サイダー バヤリースオレンジ キングダムハーツデザイン」のCMソングにも起用された「光」。
そのアクションRPG「キングダム ハーツ」の世界観と宇多田ヒカルさん自身のプライベートの両方が連想できるような独自の歌物語になっています。
頭サビの冒頭から「どんな～」と「たった～」の語尾を母音「あ」で伸ばし、「うんめ～い」と母音「え」で外す（そろえすぎない）言葉の響きか印象的です。
ただし「だって、一人で、忘れて、生きて」の語尾の母音は「え」で、母音「あ」は「光（ひか～り）の中」、母音「え」は「目が覚める」に集約される印象です。
こうした言葉の響きに呼応するように、「光の中、目が覚める」がこの曲の主題になっていると考えられます。
さらに「生きてきたのに」と「真夜中に↓」の語尾は母音「い」で、音程も低い（急に下がる）といった特徴があり、「光と闇」の対比がサウンドでも表現されているといえるでしょう。
「キングダム ハーツ」の主人公ソラが「デスティニーアイランド」から「外の世界」へと旅する物語が重なります。
また、宇多田ヒカルの名前を彷彿とさせる曲名になっていることもあり、後の映画監督・紀里谷和明さんとの結婚（2002年～2007年）が示唆されていたのではないかと話題になりました。
静かに出口に立って
暗闇に光を撃て今時約束なんて不安にさせるだけかな
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
願いを口にしたいだけさ
家族にも紹介するよ
きっとうまくいくよ
「闇」と戦うソラの心情が表現されているようですが、「出口に立つ、約束、家族にも紹介する」といった表現が宇多田ヒカルさんの結婚につながる印象を受けます。
さまざまな想像がふくらみつつ、ゲームの内容や実話そのままではない独自の歌物語とすると、「ずっと孤独に生きてきたのに、闇に光が差すような運命的な出会いがあり、家族にも紹介すると約束した」といったところでしょう。
跳ねるリズムのサビから一転して、「静かに」という言葉どおり、ゆったりしたテンポの歌い方になり、「今時～」とアクセントの効いたリズムが入るといった緩急のつけ方がおもしろいです。
「願い、紹介」など、ずっとさりげなく韻を踏み続けていて、RPGをイメージさせる「撃て」の音程の高低差も耳に残ります。
どんな時だって
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
ずっと二人で
どんな時だって
側にいるから
君という光が私を見つける
真夜中に
頭サビの「一人」が1番のサビでは「二人」になりました。
宇多田ヒカルさん自身のような語り手の「私＝光」ではなく、「運命」の相手と思われる「君＝光」となっていて、ズラシが効いています。
1回目の結婚（2002年9月発表）をひかえた宇多田ヒカルさんは卵巣腫瘍の摘出手術（2002年4月）をしていて、「光」（2002年3月）の制作中は「真夜中」のような気分だったのかもしれません。
「キングダム ハーツ」の世界観に照らし合わせると、鍵の形をした伝説の武器キーブレードが使い手を「見つける」ところが重なりそうです。
あるいはソラの親友リクやヒロインのカイリが「私」で、「ソラ＝君」というパターンも想像できます。
いずれにしても「光の心をもった君が、闇のなかでも私を見つける」と解釈できるでしょう。
運命の仮面をとるとは？
うるさい通りに入って
運命の仮面をとれ先読みのし過ぎなんて意味の無いことは止めて
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
今日はおいしい物を食べようよ
未来はずっと先だよ
僕にも分からない
「光と闇」の対比と連動するように、1番の「静かに出口に立って」が2番では「うるさい通りに入って」になり、「静かとうるさい、出ると入る」という対比も生まれました。
さまざまに解釈できますが、「運命の仮面をとる」ことにより、語り手の一人称が「私」から「僕」に変わったようです。
「運命」がテーマの「キングダム ハーツ」の「仮面＝物語」を「先読み」して歌詞に反映させるのは「意味が無い＝ネタバレになる」ので、「キングダム ハーツ」の登場人物を彷彿とさせる「私」ではなく、宇多田ヒカルさん自身のような「僕」になったのかもしれません。
あるいは「結婚」などの「運命」や「未来」を「先読み」しても「意味が無い」ので、「今日」の食事を大切にしようと解釈することもできそうです。
完成させないで
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
もっと良くして
ワンシーンずつ撮って
いけばいいから
君という光が私のシナリオ
映し出す
「完成させずにもっと良くしたい」のは「人生、ゲーム、歌詞」などが考えられます。
「完成、ワンシーン、撮る、シナリオ、映し出す」が映画にまつわる表現になっていて、人生について語られているはずですが、映画監督の紀里谷和明さんを連想する人も多いでしょう。
もっと話そうよ
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
目前の明日の事も
テレビ消して
私の事だけを見ていてよ
話し言葉としてはあまり用いられない「目前（もくぜん）」は、「もっと」とアタマで韻を踏む狙いがあるのでしょう。
「キングダム ハーツ」はゲーム、紀里谷和明さんは映画監督なので、「消してほしい」のは「テレビ」なのでしょうか。
あるいは「テレビ＝宇多田ヒカルさん自身を彷彿とさせる日常的な物語」と「キングダム ハーツ」の登場人物に寄り添った「私」の葛藤が描かれているのかもしれません。
どんなに良くったって
出典:光 / 作詞・作曲:Utada Hikaru
信じきれないね
そんな時だって
側にいるから
君という光が私を見つける
真夜中に
具体的な物語を深読みすることもできますが、「君という俯瞰的な視点をもつことで、自分自身が見えてくる（光を意識することで闇が浮き彫りになり、悩みが解決する）」といった抽象的な解釈も成立するところが奥深いですね。
ラストに「もっと話そうよ～見ていてよ」のパートが繰り返されます。
「ずっと先の未来は分からない」としても「目前の明日について話す」ことはできるので、少しずつ日々を重ねていきたいものです。
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さいごに
宇多田ヒカルさんは基本的に「実話をそのまま歌詞にするのはあり得ない」と考えるタイプなので、「結婚」云々の「先読み」はあくまでもリスナーによる想像にすぎません。
それでもさまざまに考察したくなる歌詞になっていたのではないでしょうか。
