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大人気スリーピースロックバンド・My Hair is Bad。
彼らが2020年12月23日にリリースしたCDシングル『life』の収録曲、『白春夢(はくしゅんむ)』の歌詞について考察していきます!
『白春夢』は2020年のコロナ禍の中で誕生した楽曲。歌詞の中にもそれが分かる単語が登場します。
ボーカルの椎木さんは「虚無感みたいなものを1曲にできないかな、と思って作ってみた曲です」と述べています。
鬱屈、憂鬱、退屈、飽き…。じっとりとした壮絶時代を生き抜いてきた私たちに捧げられた”大人の青春ソング”とも言えるでしょう。
『白春夢』に込められたMy Hair is Badの想いを紐解いていきます!
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『白春夢』歌詞考察
季節を忘れてしまって
”もう春と言われるならそうだった”
過ぎる季節が何かも分からずに過ぎてゆく日々。春が来ているのかどうかも分からない状況が描かれています。
『白春夢』はコロナ渦に誕生した楽曲。
皆さん自身の生活に重ねて読んでみると、共感の波が胸の中に寄せてこないでしょうか?
”Deja vu”(デジャブ)のように同じような毎日が繰り返すつまらなさ。
今まで普通にできていた旅行や飲み会、ちょっとしたショッピングすらも予断を許さない状況を強いられ、鬱屈・疲弊した心情が綴られています。
トマト缶=血のイメージ?
緊急事態宣言下で外出もできなくなってしまった私たち。
誰とも会わずにつまらない食事をとることも少なくありませんでした。
だから、何を食べても同じ味で「つまらなさ」を感じた人も多かったのではないでしょうか?
”空のトマト缶洗っていた 手料理と言われるならばそうだった”
もはや手料理なのか既製品なのか、その区別すら曖昧になってしまった台所の情景描写。
”水に薄まった赤色”とは、私たちの血を表現しているものと思われます。
生命力が希薄化してしまって、QOL(生活の質)がぐんと下がってしまっている状態を示唆しているように読み取れます。
去年との大きな隔たり
主人公は去年の今頃を思い出します。
その時は”青春と言われるならそうだった”と思えるような”薄暗いクラブ”も、実はとっても大事な瞬間・場所だったのだと思わされます。
コロナが無い頃は、ライブにも行けて、ぎゅうぎゅうなライブハウスでも何も気にすることはありませんでした。
遊びすぎて終電を逃すようなよくあることも、大いなる青春だったと知らされます。
好きな人にも気軽に逢え、何の気なしにキスまでできる。
そうしたことが一切できなくなってしまった悲しみ、取り戻せないあの日々への不甲斐ない思い。
ひしひと伝わる切なさがあります。
今まで「当たり前」だったことは、実は奇跡だったのだと思い知らされるのです。
ここではないどこかへ
ずっと同じ毎日の繰り返しで、夢かうつつか分からなくなってしまうほどの鬱屈した気持ちを抱く主人公。
はたと寝てしまった昼寝の合間などでしょうか?夢の中で、今日の正確な日付を求めています。
今の日々がいつまで続いて、何のために苦しんでいるのか。
答えのない日々をひたすらにもがき続けている私たちの姿が、ここに重ならないでしょうか?
”ずっと住み慣れた部屋なのに早く帰りたい”
ここではないどこかへ「行く」のではなく「帰りたい」と切実に願う主人公。
「帰る」には、安心や憩いの意味があることを前提にすると、終わりの見えない毎日から逃げ出して安らぎのある場所へ戻りたいという懇願がここには込められているように思います。
ニセモノのような毎日
外出しないならば、身だしなみを整える気持ちすら起きなくなります。
挙句の果てに”ホームレスみたい”と笑われてしまう主人公。憂鬱な気持ちが外見にも現れてしまいます。
そんな中で開かれたのは「リモート飲み会」でしょうか。
”不思議と会ってるみたいだった”と綴られますが、”匂いのない花みたいだった”という感想に。
生身のかかわりができない無味乾燥感・虚無感が伝わってきます。
それでも「何もないよりはマシ」と自分に言い聞かせているようです。
”ステイホーム”という単語が目を引く歌詞。自粛期間中に制作されたという『白春夢』の背景がありありと分かる一節ですね。
当たり前を失って初めて知る「幸せ」
どこか現実感のない毎日、夢の中でぼんやり「身を投じよう」と考えてしまうほどの主人公。
コロナウィルスが蔓延していなかったあの時、「退屈だな」とマスクをしないで話せていたあの時間は、本当はとてつもなく尊く貴重なものだったのだと気付く瞬間です。
こんな形で日常を失い、初めて「普通」のありがたみを知った私たちのことでもあるでしょう。
突然思い出した「トマト」の意味とは?
主人公は最初から気付いています。
どれだけ「外出自粛要請」が出るほど危険だと言われていても、外は晴れ、家にずっと居られ、宅配が来るまでは寝られている状況は、今までの日常では「平和」すぎることを。
しかし、今はまったく平和ではありません。
目に見えないものとの闘いで、緊張感の持ち方すらも分からなくなってしまい、孤独だけが深まってゆく寂寥感が胸に広がっていきます。
”都庁が真っ赤に染まっていた”とは、東京都民に警戒を促す「東京アラート」を指すのでしょう。
しかしそのシグナルすらも信じることができません。
ぼんやりとした頭の中で、トマトの存在があるのを思い出す主人公。
ここでの「トマト」は、どれだけしんどくてもやっぱり生きようとする主人公のもともとの生命力のメタファーになっているようにも読み取れます。
芽生える夢たち
長い間、自粛生活を続けてきた主人公。
そんな主人公ですが、最後はちょっぴり元気になります。
いろいろなものを失ってしまったコロナ渦で、わずかに残った本当に大切なことを大事にしていきたいという強い思いが芽生えます。
この生活より前に戻ることはできません。だからこそ、前に進んでゆくしかないという決意が見える最後です。
ここで歌われる”夢から夢”は、コロナ渦でのぼんやりした睡眠の「夢」と、音楽で歩んでゆく未来の「夢」を指すように解釈できないでしょうか。
作詞した椎木さんは、コロナ渦のバンドマンの気持ちを『白春夢』に込めたとも話しています。
ぼんやりふわふわ(=白)とした春(=新しい道)を、夢抱えて歩いていきたい。
そんな気持ちがタイトルに込められているように思います。
主人公にとって様々な意味を持つ「夢」を抱えて、新たな道を歩んで行こうとする勇気がにじんでいます。
おわりに
いかがでしたか?
コロナ渦をテーマにした現代ソング『白春夢』。
自身の鬱屈した気持ちを重ねていただきながらも、マイヘアのビビットな音楽に胸を打たれてほしいです!
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