今回は2020年9月18日にリリースされた配信シングル「幽霊失格」の歌詞考察をしていきます。
「幽霊失格」は、ヴォーカル・ギターの尾崎世界観さんが作詞・作曲を手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!

幽霊失格 歌詞考察
君を探す

歌詞の中の登場人物は主人公と「君」の二人です。
まずはタイトルの「幽霊失格」の文字に太宰治の有名な文学作品『人間失格』を思い出しました。非常にインパクトのあるタイトルとなっていますね。
冒頭の「そんな夜を」は、文学的な表現となっています。「そんな夜」とはどの様な夜なのでしょうか?興味をそそられます。
主人公は夜一人で外を歩いているのですが、何かの「気配」を感じて振り向きます。
主人公の歩く姿は「猫背」で、恐らくトボトボと歩いていて、どことなく情けない印象を受けます。
更に、主人公は自身を「飼い主を探す犬」になぞらえています。
その「飼い主」は他でもない「君」に違いないでしょう。しかも「君」は「幽霊」とあります。
本当に「君」はこの世にはもういなくて「幽霊」となってしまっていますが、「幽霊」の様な存在になってしまった、つまり別れてしまって主人公の前から姿を消してしまった、とも考えられますね。
夜、「ガラス」に「幽霊」の「君」が映るのを見る主人公。
映っているのが本当の「幽霊」、または、映っているように見える”幻影”だとしても、主人公はどのような形でも良いから「君」に会いたいという願いが根底にあるのでしょうね。

主人公は怖がるどころか、「顔色悪い ちゃんと食べてる」「心配だよ」と「君」を非常に気遣っています。
更に、「君」がいた時の「熱い手」や「だるい目」などを「思い出」しています。
不在の「君」を心配したり思い出したりと、主人公は「君」のことを未練たっぷりに想っているのがわかりますね。
そして「幽霊」となった「君」なのに怖くないので「幽霊失格」と言っています。
普通は、実際に霊的なモノを見てしまったり、気配を感じると気味悪く思ったり怖がったりするものだと思いますが、主人公は全くそんな様子はありません。
それだけ、もう既にいなくなってしまっているにも関わらず「君」のことを愛しているのでしょうね。
また「君」が「幽霊」でなかったとしても、別れてしまった元カノを未だに思い出しては想いを巡らせ、同時に、想いを募らせていると言えます。
忠犬の如く

ここの冒頭で、「今日は珍しく」とありますので、不在の「君」が「幽霊」もしくは「幻影」で登場するのは初めてではないことがわかります。
「懐かしいとはしゃぎながら」という表現と、「幽霊」もしくは幻影の「君」との対比に可笑しみを感じます。
「幽霊」であれ幻影であれ、何度も「君」に遭遇し、観察し「さすが」と感心している様は面白いですし、どんな状態であれ兎に角「君」に会いたいのだということがわかりますね。

そして、主人公は「幽霊」もしくは幻影の「君」のことを「抱きしめ」ます。どちらの状態であれリアルには「君」は存在しないのには変わりありません。
それでも、「触れなくても」「ちゃんと伝わる」とあり、本当に「君」のことを抱きしめている感覚は実感できているのです。
そして、「君」にとっては”飼い犬”のような存在の主人公ですので、「座って用を足す」ように言われていたのを、未だに守っているのです。
「つくづく犬みたい」と、主人公自ら「君」に対して忠実に従う犬のような存在であることを認識していますね。
憑かれたい

ここで主人公は、「君」のことを細かに表現しています。
「丑三つ時」(=午前2時から2時半頃)に「眠そう」にしていて、いつの間にか「寝息を立てて」寝入ってしまっている「幽霊」らしからぬ「君」。
更に、「この世のものとは思えない」「写真にだけ写る」(=心霊写真)といったフレーズで、「君」が「幽霊」であることがほのめかされています。
また、「幽霊」ではないにしても「この世のものとは思えない」ほど「美し」い、と不在の「君」を称えています。
どちらにしても、主人公は「君」に未練たっぷりで、その魅力にハマっているのがわかりますね。

ラストは主人公の正直な「君」への気持ちが描写されています。
たとえ「君」が「幽霊」であろうと「嬉しい」という気持ちしかなく、決して「怖い」などとは思わない主人公。
「成仏して」しまったら「幽霊」の「君」には会えなくなるので、「恨んで」いて欲しい、とまで思ってしまうとは、「君」が非常に魅力的である、と同時に、「幽霊」になってでも側にいて欲しいという切実な想いが主人公には残っているのでしょう。
そして、ここでは1番冒頭の「化けて」の代わりに「分けて」と、韻を踏んだ言葉遊びが見られます。
主人公は、「君」からはいっそのこと取り憑かれて「化けて」目の前に現れて続けて欲しいし、苦しみも悲しみも「分けて」欲しいと思っています。
「幽霊」という言葉とは裏腹に、主人公の惚気話を聞かされたかのような微笑ましさも感じるラストとなっていますね。

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さいごに
「幽霊」であれ”元カノ”であれ、主人公はすっかり”幻”の「君」に憑りつかれているかのような状態であることは、間違いないようです。
歌詞の最初から最後まで徹底して不在の「君」への執着心が見て取れ、主人公の偏執的な心情が滑稽でもあり愛おしくもなってきます。
「君」の設定が「幽霊」とも”元カノ”とも取れる、巧みな言葉選びが印象的な本楽曲「幽霊失格」。
本楽曲を手掛けたクリープハイプの今後の楽曲にも是非注目したいですね!