今回は『news zero』のテーマソングに起用された米津玄師さんの新曲「ゆめうつつ」の歌詞考察をしたいと思います!
「ゆめうつつ」は6月発売のニューシングル「Pale Blue」に収録されている一曲です。
タイトルの「ゆめうつつ」とは、夢か現実か区別がつかない様子を意味します。
米津玄師さんはインタビューで次のようにコメントしています。
今回の曲に関していうと「夢と現実の間を反復する」っていう曲にしたいなと思っていて。
現実の、ある意味虚しい出来事だったり、怒りを感じるような事だったり、見渡してみるとそういうものがいくらでもころがっている。
残酷なまでの「現実」と、そこから対極にある「安らかな夢の中」、その夢と現実の間を反復しながら生きていくというのが、自分にとってはものすごく大事なんじゃないかという風に思っていて。
夜のニュースを見てそのあと眠りにつくじゃないですか。
どういう風に眠りにつくかは人によって違うと思いますけど、少なくとも自分は「安らかな空間」というものが生きていく上で必要不可欠だった人間なので、自分と同じような人間もいくらかいるだろうと。
共感してもらえたらありがたいかなと思います。

「ゆめうつつ」歌詞考察!
ニュース番組のテーマソングとして書き上げた、この楽曲のテーマは「夢と現実の反復」。
『news zero』という現実を見終わって眠る人々へのメッセージが込められた曲を解釈していきます。
混沌とした現実世界で疲弊する人々

羊といえば、米津さんのアルバム『STRAY SHEEP』の収録曲「迷える羊」ですね。
「迷える羊」は、混乱する世界に生きる現在の人々(迷える羊)が千年後の未来に生きる人たちに何ができるのか、考えさせてくれる曲でした。
この曲での羊も、私たち人間を表していると思われます。
「間抜けな惑星」=地球ですね。
新型コロナウイルスでの混乱を収めることの出来ない世界を「間抜けな」と表現したのでしょうか?

「風」「花」「鳥」というワードから「花鳥風月」という言葉が浮かんだ人も多いのではないでしょうか?
最近のニュースでは、イーロン・マスク氏が設立した会社である「SpaceX」や、「SpaceX」と月旅行の契約を結んだZOZO創業者の前澤氏など、月に関するニュースが多く取り上げられました。
「瀟洒」は[しょうしゃ]と読み、すっきりとして洒落ている様を表します。
まさに「SpaceX」の前衛的なデザインのシャトルを指した言葉ですね。
この部分で注目したいのは、月以外の「風」「花」「鳥」の並びです。
四字熟語通りなら「花」「鳥」「風」になるはずですが、なぜ順番が違うのでしょう?
すべて二文字の単語なので韻は問題ではないはずです。
筆者は、わざと並び替えることで、現在の社会の混乱を表現したかったのではないかと考えました。

アドバルーンは日本語で広告気球、空高く浮かび上がり多くの人の目に留まる大きな風船です。
これは、ニュースを始めとしたメディアを指しているのではないかと推測しました。
メディアは誰かを救うこともありますが、その裏で誰かを傷つけるかもしれないという残酷な二面性を持っています。
ここでは、誰かのために裏で犠牲になっている誰かがいるということを表現したかったのだと思います。
そんな二面性を持つ不安定な世界に生きている人々が、「わたしは何処にいるんだろう」と不安になっている事がわかりますね。

現実社会の中で迷い傷つき声を上げることすら出来ない羊たちは、夜空に輝く月の光に誘われて、現実を忘れ夢の世界に入りたいと願います。
自分もいつか死んで消えていくのだろう、そう考えた羊は何でも自由にできる救いの場所・夢の中で過ごしたいと思ったのです。
現実を忘れて、自由に過ごしたいという思いは、生きにくい現代社会を生きる多くの人が抱えている願いではないでしょうか?
誰にも支配されない自由な夢の世界

窮屈な現実とは異なり、自由に声を上げることができる夢の中は羊たちにとっての楽園です。
日常生活を送っているだけで聞こえてくるノイズ=「革命家の野次」も夢の世界には入り込めません。
自分だけの自由な空間で思う存分過ごしてほしいという歌詞ですね。
この歌詞は、現実世界でも夢の世界のように声を上げていいんだよという米津さんからのメッセージのようにも聞こえました。

夢の世界では、自分の味方、同じ価値観を持った人とつながることが出来ます。
幼少期、オンラインゲームにハマっていたという米津さん。
当時は、今よりもゲームをしている人が少なく、その中でのコミュニケーションが心地よかったそうです。
こうした自分の体験も反映されているのかもしれませんね。
分からないではなく「解らない」あんな人は、価値観の違う人を指しています。
上手く噛み合わない人のことはどう頑張っても理解できないときもありますよね。
その「あんな人」も自分の夢の世界を持っています。
他人が立ち入ることの出来ない「物語の裏」で楽しく踊っているのです。
「また明日」はそんな夢の世界に入るための魔法の言葉なのかもしれません。
生きているだけで疲れる現実世界

夢と現実の狭間に生きている人々の姿が浮かんできますね。
日々のニュースの中には、聞きたくないような嫌なものもあります。
誰にも相談できずに、自殺という選択をしてしまった人も多かった2020年。
汚れた現実世界でだんだんと濁っていく心、そんな現実に疲れたなら助けを求めてほしいという米津さんの思いだと考えました。

誰かの何気ない一言で、人知れず傷ついている人がいます。
その傷は癒えることなく増えていきますが、いつかは死を迎え、存在ごと消えてなくなります。
せめて夢の世界でだけは、誰かの発言や行動で傷つくことなく平和に過ごしたい、と思っているのは自分ひとりではないはずです。
夢の世界での救済

羽が生えて自由に飛んでいけるのは、まさに夢の世界でのことですね。
背中の羽で自由に飛べるなら、現実世界での傷もきっと癒えることでしょう。
ここでの主人公は「羊」、羽の生えた羊というのはギリシャ神話のプリクソスの話に登場します。
簡単に説明すると、継母に殺されそうになったプリクソスのもとに、神様が翼が生えた金色の毛を持つ羊を授けて助け出し、無事脱出したプリクソスが逃げた先の国の王女と結婚するという話です。
プリクソスは逃げ延びた後、主神ゼウスに黄金の毛を捧げ、これが天に登って牡羊座になったと言われています。
また、羊の皮は自分を迎え入れてくれた王様(義理の父)に贈ります。
贈り物を受け取った王は、その皮を決して眠らないドラゴンに守らせるのです。
このドラゴンこそ、「むくれ顔の蛇」なのではないでしょうか?
眠らないドラゴンは見ることのない夢の世界で、安心して日々の傷を癒やしなさいというメッセージが込められているように感じました。

誰にも邪魔されない夢の世界の中では、安心して過ごすことが出来ます。
「あんな姿」=現実世界の傷つき疲れ果てた姿、ではなく、子供の頃に戻って無邪気に楽しく過ごしてほしいという願いのように聞こえました。
夢の世界で傷を癒やし、夢の世界に向かって「また明日」、再び現実世界に戻っていく人々へ向けたメッセージが込められた楽曲ですね。

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まとめ
各所に深い意味を持った比喩が使われているこの楽曲。
いろいろな考察があると思いますので、あくまで一例として楽しんでいただけたら幸いです。
米津さんらしさは残しつつ、ニュース番組のテーマソングとしての要素も取り入れた素晴らしい楽曲ですね。
この「ゆめうつつ」が収録されているシングル『Pale Blue』は2021年6月16日に発売されるので、楽しみに待ちたいと思います。