クリープハイプ「ゆっくり行こう」の歌詞の意味を考察します。
Hondaのドキュメントコンテンツ「Me and Honda」第3弾のために書き下ろされた、5thアルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」(2018年9月)の収録曲。
尾崎世界観さんが作詞・作曲した「ゆっくり行こう」の歌詞を見ていきましょう。

ゆっくり行こう 歌詞考察!
髪だけ変わった君
意味ならないけどだからなに
ゆっくり行こう / 作詞・作曲:尾崎世界観
うるせーよ 黙ってろ もういいよ
茶色く染まった君の髪
でも 同じ声 同じ顔 同じ君
そんなに焦るなよ ゆっくり行こう
「Me and Honda」は「自動車やバイクといったHonda製品を使っている人、作っている人などが集まる広場」ということで、Honda愛用者を紹介するドキュメントコンテンツやポータルサイトが展開されています。
そのドキュメントコンテンツ第3弾はスーパーカブ誕生60周年記念(2018年)の一環で、スーパーカブに乗って通学する鹿児島・種子島の高校生への感謝が込められています。
種子島には電車がなく、バスも少ないため、高校生になるとスーパーカブで通学する文化が根づいているそうです。
こうしたコンセプトに賛同したクリープハイプが「ゆっくり行こう」を書き下ろし、コラボMVが制作されました。
スーパーカブはいわゆる原付バイクなので、小型・中型・大型バイクや自動車より「ゆっくり行こう」というイメージがあるでしょう。
高校生が通学の際にスーパーカブを使うところに着目すると、安全運転の意味も込められているはずです。
さらに種子島のスローライフを連想することもできます。
こうしたさまざまなニュアンスを含みながら、尾崎世界観さんが「ゆっくり行こう」というタイトルや歌詞で表現しているのは高校生活。
ちょっぴり背伸びをしたくなる年頃ですが、「急いで大人になろうとする必要はない」といったメッセージが高校生目線で描かれています。
平均寿命くらいまで生きるとすると、学生ではない、若くない時期のほうが圧倒的に長いので、大人は若者に対して「青春時代や若さを大切にしてほしい」と願いがちです。
ところが当の高校生にしてみると大人っぽいほうがかっこよく思えたり、大人に説教されても「うるせーよ」と感じたり、「意味がある」ことを言うのも言われるのも照れ臭かったりするでしょう。
尾崎世界観さんは大人なので実際には「意味がある」メッセージが盛り込まれているものの、高校生になりきって、同級生の女子か彼女のような「君」に「意味ならない」とかっこつけたり、「うるせーよ」と反抗的な態度を示したりする物語が描かれています。
「君」が「髪を茶色に染めた」ことに対して、「焦る必要はない。ゆっくり行こう」と語りかけているところが優しいですね。
いつか
ゆっくり行こう / 作詞・作曲:尾崎世界観
くだらない妬みや 変わらない痛みに
傷ついて気づく日も
この先いつだって 君の味方だよ
だからなに うるせーよ
「傷つく」と「気づく」のほか、「くだらない妬み(ねたみ)」「変わらない痛み」「だからなに」などで韻を踏むといった言葉遊びが全編にわたり展開されています。
こうした点でも「シリアスになりすぎるのは照れ臭い」若者らしさが表現されていると解釈できそうです。
高校生が「髪を茶色に染める」のは大人っぽく見せたい背伸びかもしれませんし、イライラが募った果ての反抗的な態度や、「傷ついた」出来事を忘れるための気分転換の可能性もあります。
「声や顔はいつもと同じなのに、髪だけが変わった君」を見て、主人公は「君が妬みによる痛みをずっと抱えていたことに気づいた」のかもしれません。
そこで主人公は「傷ついた君」(あるいはこれから傷つくかもしれない君)を癒すために「いつだって君の味方だよ」と思いやりのある言葉を投げかけたのでしょう。
しかし「意味のある」シリアスな言葉を口にするのは照れ臭い年頃なので、「うるせーよ」と照れ隠しの口癖を加えずにはいられません。
一緒なのは偶然?
どうせ明日には元通り
ゆっくり行こう / 作詞・作曲:尾崎世界観
真っ黒に なるくせに いきがるな
だから今日だけは
いつもより悪そうに 怒っても 怖くない
そんなに簡単に 変わらないよ
おそらく茶髪は校則違反なので、「元通りに戻すように」と叱られたら素直に従うしかないのでしょう。
「君」はそこまでわかっていながら「1日だけでもいいから茶髪にしてみたい」心境だったのかもしれません。
しかし主人公は「外見だけ悪ぶったところで、内面は変わらないから怖くない」と「君」の本性をすっかりお見通しです。
これらの主人公のメッセージは大人の説教と同じ「意味がある」ものの、同級生の男子目線で語られているので、若者にも伝わりやすいのではないでしょうか。
居場所がなくなって 自分だけがいつも
ゆっくり行こう / 作詞・作曲:尾崎世界観
ひとりだと思う日も
なんだ偶然だな ほら一緒だよ
だからなに うるせーよ
個人差はありますが、ホルモンバランスが乱れがちになる思春期には、孤独を感じる機会が増える場合もあるものです。
そこまでわかっていても、大人に「君だけが孤独ではない」と言われると、心底「うるせーよ」と抗いたくなるでしょう。
ところが尾崎世界観さんは同級生の男子目線で「偶然だな。一緒だよ」と寄り添ってくれているので、若者も共感しやすいはず。
しかも照れ隠しのように「うるせーよ」と反発し続けるところも、「髪を茶色に染め、いきがったり、悪そうに怒ったり」する「君と一緒」です。
ミラーリング効果をうまく活用しているので、親近感がわきますね。

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さいごに
「ゆっくり行こう」では、実際にクリープハイプが「悪ぶっても本当は孤独な君」のために「居場所」を作ってくれています。
「焦って背伸びをする必要はない」と共感した若者も多いのではないでしょうか。