多部大（たべ ひろ）さんのデジタルシングル「You」（2022年6月）の歌詞の意味を考察します。
You 歌詞考察
これはプロポーズ？
I’m telling you…
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
I’m fallin’ you…
「You」の登場人物は語り手の「僕」と「君」なので、冒頭の英語は「本当だよ。僕は君のことが好きになった」といったところでしょうか。
1行目を直訳すると「僕は君に言っている」になりますが、「言っとくけど」とか「言ってるでしょう」といった前後の文を強調する決まり文句で、自分の話を相手が信じてくれないときなどに「本当だって！」と念を押す感覚で使われます。
2行目は「I’m fallin’ for you」のことでしょう。
「fall in love」も「fall for you（人）」も「恋に落ちる、好きになる」という意味ですが、現在進行形の「I’m fallin’ for you」は付き合い始めるときの「好きだ」という告白の決まり文句として使われます。
「for」が入っていないと「僕は君を落としている」になってしまうような気もしますが、歌詞全体を踏まえると「好きになった」と解釈するのが妥当なようです。
また、後に「手紙」という言葉も出てくるので、1行目は決まり文句ではなく「手紙」の書き始めとして「僕は君に伝えたいことがあるから、今から言うよ」といったニュアンスなのかもしれません。
ふと目覚めた時横に 君の寝顔があると嬉しい
新しいものはすぐに 君といちばんに試したい
たまにはオシャレ身に纏って 身の丈以上のデートしよう
言葉以上の想いがあふれて 君になんて言えばいいお気にの車で海へ行こう こげ茶の犬を連れて
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
付き合い始めるときの告白というより、プロポーズに近いのかもしれません。
さだまさしさんの「関白宣言」（1979年7月）の現代版といったところでしょうか。
結婚と同棲の区別はつきませんが、いずれにしても「一緒に暮らそう」という話のようです。
「新しいもの」というのはおそらく家電など「生活にまつわるもの」のことでしょう。
ひとつ屋根の下で寝食を共にするようになると、お互いに「普段着の暮らし」になるので、「オシャレ」や「非日常的なデート」も忘れないようにしたいと考えているようです。
こうした「君への想い」は「言葉」で伝えるのが難しいくらい「あふれている」ので、冒頭の「I’m telling you」という決まり文句が飛び出したとも考えられます。
もしかしたら「お気に入り」を「お気に」と省略し、「こげ茶」と文字数を合わせるような感覚で、「I’m fallin’ for you」の「for」を省いたのでしょうか。
君の一粒を僕が噛み締めた時に弾けたの
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
君がもし僕を忘れても また最初から始めるよ
「君と付き合い始めたとき」あるいは「君と出会ったとき」に大好きになった（想いがあふれた）という意味でしょう。
「弾ける一粒（おいしさ）」には「ポップコーン、炭酸ガス系のパチパチキャンディ、フリスクなどのミント系タブレット、ラムネ、かき氷、いちご」などが当てはまるでしょうか。
刺激的においしいお菓子や果物などにたとえるほど、「僕にとって君への想いは最初から盛り上がっていた」という話でしょう。
ただ、「もし」という仮定の話にしても、「君が僕を忘れる」ことを想像しているところは意味深です。
「君が恋愛初期のドキドキ感を忘れても～」というニュアンスなのかもしれませんが、「すでに君が僕を忘れたから、こうして最初から始めている」可能性も浮上したタイミングで、冒頭の英語が繰り返されます。
また最初から始めよう
まだ眠いままの朝に カーテンを閉めて二度寝しよう
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
陽が登り切った頃に お気に入りの喫茶店行こう
サンセットが綺麗だとはしゃいで 二人だけのセルフィーを撮ろう
まだ眠くないの夜に 部屋着のままアイスを買いに行こう
「二人」の関係性や距離感については具体的には描かれていないので、さまざまに想像できるというか、リスナーそれぞれの恋愛を重ねることもできるようになっているのかもしれません。
基本的には「関白宣言」の現代版路線かと思われますが、「夕焼けを背景にしたセルフィー（自撮り）」や「深夜のアイス」などで盛り上がりたいところは、恋愛初期の雰囲気が漂います。
付き合いが長くなって「君が最初のドキドキ感を忘れた」からこうして語っているのか、「君が僕を忘れる」可能性がある老後や死後も一緒にいようという話なのか、さまざまな想像がふくらむでしょう。
手紙を書くよ大人になっても
字が汚くて笑う君を見たい
言葉じゃ足りない この歌でも足りない
いつも 背中合わせより 向かい合おうきっと何かが変わっても君だけがずっといて
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
「この歌が手紙」というオチなのかと思いきや、「この歌」と「手紙」は別物のようです。
「この歌を書いている今は子ども」で「将来、大人になっても手紙を書く」という流れになっています。
「子ども」が付き合っている状態で、「大人」が結婚を意味すると仮定すると、時間軸として「今」は「付き合い始め」に相当しそうです。
「将来、一緒に暮らすことを夢に見ながら、向き合い始めたところ」なのかもしれません。
君の一粒を僕が噛み締めた時に弾けたの
出典:You / 作詞:多部大 作曲:多部大・KISIMEN
君がもし僕を忘れても また最初から始めるよ
もしかしたら「弾けた一粒」は「アイス」のことだったのでしょうか。
最後まで「君が僕を忘れる」の謎も解けませんでしたが、「二人」の姿を自撮りしておけば楽しい出来事を思い出すことができる、くらいの軽い意味合いのような感じもします。
ラストに冒頭の英語が繰り返されるので、永遠にループするような循環性があり、いつでも、いつまでも恋愛初期のようなドキドキ感を味わえるでしょう。
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さいごに
やはり「You」という楽曲そのものが「手紙」や「セルフィー」になっているような気もします。
「大人になっても書く手紙」は「プロポーズ」や「日常的なラブレター」のことで、「結婚にまつわる手紙を書く」のはまだ先の話だとしても、「恋愛初期のドキドキ感を自撮りするように綴った手紙」だったのではないでしょうか。
