星野源さんの曲をいくつか聴いてみると「踊る」という言葉がよく出てくることに気づきます。コロナ禍で話題にもなった「うちで踊ろう」もそうでした。それは彼にとって「踊る」ことは「生きる」ことと同義語であるからです。
2015年12月2日にリリースされたCDアルバム『YELLOW DANCER』に収録されている「Week End」はシングルでのリリースはありませんが、2017年、2019年の全国ライブツアーでも歌われ、メロディーラインもそんなに複雑ではないので覚えやすく、みんなで歌って踊り、盛り上がるダンスナンバーとなっています。
この曲の歌詞について見ていきましょう。
Week End 歌詞考察
さよなら
目が覚めたら 君を連れて
未来を今 踊る
週末の街角 ここから 始まる
歌詞はいきなり「さよなら」で始まります。曲のタイトルが「Week End」、日本語で言えば「週末」という意味なので、平日といったところでしょうか。通学通勤をする日常への「さよなら」だと言えるでしょう。
本来は「週末」はweekend、と1単語なはずですが、わざわざ2単語にしているのには意味があるかもしれません。
夢から目が覚めたら 君を連れて
未来を今 踊る
週末の街角 朝まで
身体を交わそう
「夢から目が覚めたら」週末が待っている、まさに「ここから 始まる」のです。楽しい時間です。
導入部では「踊る」という言葉は1回出てきます。
花が色づく頃は
心も浮ついて
誰かに声をかけて
無茶な口説き方して
1番にあたる「花が色づく頃は」からはもちろん季節は春です。
今を踊る すべての人に捧ぐ
俯いた貴方の 腕を掴み 音に乗って
花も咲いて、陽気も良くなって、でもそんな中でも陽気になれない「俯いた貴方」がいて、そんな人の「腕を掴み」と、強引に「音に乗って」踊るのです。それも春という季節で心が浮ついているからなのでしょうか。
夢から目が覚めたら 君を連れて
未来を今 踊る
週末の街角 朝まで
身体を交わそう
1番にあたる部分でも「踊る」という言葉は2回出てきます。
木の葉色づく頃は
心に穴が開いて
指の先少し冷えて
貴方の温度探す
そして「木の葉色づく頃は」からが2番にあたりますが、こちらは秋です。春に対しての秋ということでしょう。春は心がうきうきしますが、秋は逆にちょっと寂しい気持ちになります。「貴方の温度探す」という歌詞をみると、ひとりではないということはわかります。
今を生きる すべての人に捧ぐ
俯いた貴方と 靴を鳴らし 昔を飛べ
1番の「今を踊る」という歌詞が2番では「今を生きる」となっています。秋になっても「俯いた貴方」つまりまだ気持ちの晴れない人がいて、1番では強引に腕を掴んだのに、2番では「貴方と」一緒に「昔を飛べ」となっています。昔を飛ぶということは俯くようなことがあったとしても、忘れてしまえ!前を向こう!というような意味になっています。
2番の部分には「踊る」という言葉は出てきません。代わりに「生きる」となっているのです。
夢から目が覚めたら 君を連れて
未来を今 踊る
週末の街角 朝まで
言葉を交わそう
そしてまた最初のメロディに戻りますが、心を通じ合わせ、「朝まで言葉を交わそう」と、とても親密度が増した感じを受けます。
この曲の中で、一番星野源さんが感情をこめて歌うところが
今を踊る すべての人に捧ぐ
君だけのダンスを 世間のフロアに出て叫べ
というところです。
「君だけのダンス」のダンスは踊ると同じ意味ですし、ここではダンスは生き方、人生と捉えてよいでしょう。「世間のフロア」は置かれている世の中、世界、環境などと置き換えられます。貴方は貴方の人生を歩めばいいんだよ!というメッセージに聞こえます。
夢から現実へ
それまでの「夢」という歌詞は本当に夢であって、ただのふわふわした感じですが、この先の「夢」という言葉にはなぜか現実感が出てきます。
夢から目が覚めたら 君を連れて
未来を今 踊る
週末の街角 朝まで 夜を抱いて
最後の冒頭と同じメロディはまた「さよなら」と始まりますが、この「さよなら」は平日から週末への現実逃避ではなく、夢のようなふわふわした時間への「さよなら」と受け止めることができるでしょう。
そして目が覚めたら未来を「踊る」のではなく「変える」と歌うのです。それも「すべて連れて」。俯くようなこともすべて、ということでしょう。
さよなら
目が覚めたら すべて連れて
未来を今 変える
週末の街角 朝まで
電波を 世間を 未来を 踊ろう
「電波」「世間」は完全に現実世界で、楽しかった週末ではなく、仕事や学業に励まねばならない日々。でもそこにも「未来」はあるのです。その「未来」を「踊ろう」と、星野源さんは歌っているのです。
1曲通して「踊る」という言葉は8回出て来ます。曲としては4分くらいあるのですが最後1分くらいは「ラララ…」なので実質3分くらいの中で8回も「踊る」という言葉を使うというのは多いです。
星野源さんはCDアルバムのライナーノーツで「この仕事になってから、土日も祝日も、曜日感覚すらもなくなってしまいましたが、小学生の頃に感じた、土曜日のあのワクワクした楽しい気持ちを思い出しながら作りました」(『YELLOW DANCER』VICL-64439)と書いています。
星野源さんは子供のころから踊るのが大好きだった、といろいろなところで発言していますし、実際にMVでも踊っていて、映像ディレクターに「星野さん、踊れるんだ」と驚かれているメイキング映像もあります。何のメディアだったか忘れてしまいましたが「バックダンサー」という呼び方が好きではないということで、彼のライブでは必ずダンサーの方たちをきちんと「イレブン・プレイ」というグループ名で紹介し、一人一人の名前を呼びます。
星野源さんにとっては踊るということは生きるのと同じことなのです。実際にこの曲の「踊る」という部分を「生きる」に変えてしまってもまったく同じ意味に聞こえます。
なぜ「Weekend」ではなく「Week End」なのかですが、ただの週末を歌っているのではないから、と思われます。一週間の終わり、であってつまり日々のことなのではないでしょうか。日々のこととはそのまま人生のことです。生きるということです。
「生きる」という言葉はとても重く、厳しい印象を持ちますが、普通に誰もがしていることです。逆に「踊る」という言葉はとても楽しそうな印象を持ちます。
生きることを「踊る」と表現する星野源さんは「人生楽しもう」というメッセージを送ってくれているのです。
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さいごに
いかがでしたか?
星野さんの思いが詰まった素敵な楽曲でしたね。
これからの活躍からも目が離せません!