2019年4月にボカロPとして活動を始めた、くじらさん。
「金木犀 feat.Ado」(2019年12月)など、ゲストボーカル(歌い手)を迎えた自身名義の楽曲のほか、yamaさん「春を告げる」(2020年4月)やSixTONES「フィギュア」(2021年8月)などの楽曲提供(作詞・作曲・編曲)でも注目を集めました。
2021年8月に配信リリースされた「悪者」は、ボカロ曲のセルフカバー「アルカホリック・ランデヴー(2020 ver.)」(2020年4月)、「狂えない僕らは(2021 ver.)」(2021年4月)に続く、自身で歌唱している楽曲です。
「悪者になって完全犯罪をする」とはいったいどういう意味なのでしょうか。
くじらさんが作詞・作曲、トリオバンド・Ovall(オーバル)のギター・関口シンゴさんが編曲した「悪者」の歌詞について考察します。

悪者 歌詞考察!
秘密の完全犯罪とは?

「悪者」リリース時の2021年8月といえば、コロナ禍で不要不急の外出自粛中。
夜の街に繰り出すことができず、ストレスがたまりがちな時期です。
歌詞で深夜のデートを描くにしても、コロナ前の過去かコロナ後の未来に設定しなければ不自然になります。
ただ、どれほど外出を控えても収束の見込みは立たないので、実際はしなくても夜遊びしたい気分でしょう。
そこで「悪者になって夜の街を歩こう」という歌詞です。
「夜の街を歩きたい」という願望を「悪者になる」ことで叶えるという発想が秀逸。
羽目を外す想像をすることで、ストレス発散になります。
コロナ禍に縛られない恋愛模様が描かれた歌物語に入り込んでいきましょう。

コンビニに寄った後、部屋に帰ってきた2人。
主人公は「君」が好きな物を見ると、悲しくなる未来が訪れると予感しています。
つまり、いつかは別れなければいけない間柄です。
悪いことだとわかりながら、「午前3時」に2人で騒いでいます。

「悪者になる」とは「禁断の恋に身をゆだねる」という意味でしょう。
恐らく「君」には本命の彼氏がいます。
もしかしたら主人公の「私」にも本命の彼女がいるのかもしれません。
「秘密の完全犯罪」とは「内緒の浮気」のこと。
とにかく黙ってバレないようにしようと企みつつ、破局も覚悟しています。
登場人物を2人とも「悪者」に設定してまでくじらさんが描きたかったのは、「秘密の乾杯」かもしれません。
外出自粛中は、夜に複数でお酒を飲むのも悪いことです。
それでも「悪者」になった体で、くじらさんとリスナーで「秘密の乾杯」をしようという話。
そう想像するのも乙ですね。
結末はどうなった?

「私の全部」という表現を踏まえると、主人公は「君」一筋だったと考えるのが妥当でしょう。
別に本命がいたのは「君」だけ。
わざわざ「高速道路」を使っているので、三角関係を解消するために、主人公は思い出が詰まった部屋を引っ越したと考えられます。

「午前3時」から「4時」へと1時間過ぎただけのような錯覚にも陥りますが、「君」のことが「懐かしい」と感じるくらいの月日は流れたのでしょう。
深夜の徘徊はしっかりコロナ前の設定で、主人公はもう「君」が暮らす場所もわからなくなったのかもしれません。
それでも未練が残っていて、「君」のことを思い出し、眠れない夜を過ごしたようです。

結局「悪者の完全犯罪」は不成立でした。
つまり2人とも「悪者」のままではいられなかった(浮気を続けることはできなかった)という結末です。
主人公が身を引くことで、「君」は本命の彼氏一筋になり、2人とも「悪者」ではなくなったのでしょう。
コンビニで「君」が好きだった物を見て落ち込む覚悟をしていた主人公ですが、その商品はありません。
月日が流れても、店頭に並ばなくなった(ラインナップから外れた)商品をチェックするほど、主人公には未練が残っているようです。
あるいは「君」が「お気に入り」を買うから、在庫切れなのかもしれません。
「懐かしい匂い」は実際の残り香で、主人公が引っ越しても「君」が追いかけてくるから「いつまでも」関係が切れない可能性もあります。
基本的には「禁断の純愛」だったと思われますが、今後も続くホラーだとすると「秘密の完全犯罪」は成立しそうですね。
いずれにしても歌詞の余韻で、まだまだ「夜の街を徘徊」できるのではないでしょうか。

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さいごに
「悪者」のMVは、映像作家のYPさんが監督、ライター&小説家のカツセマサヒコさんが原作、くじらさんが原案&プロデュースを手がけました。
モデルの小日向みうさん、モデルの佐々木涼さん(ユウ役)、モデル&俳優のキクチユウジさんの3人が出演しています。
最後にちらっと映るのは、男の子(キクチユウジさん)のスマホでしょうか。
着信画面の「カコ」という表示をどう解釈するかによって、まったく別の物語になるところがおもしろいですね。
- 女の子(小日向みうさん)の名前が「カコ」で、別れたのにまだ電話がかかってくる
- 男の子(キクチユウジさん)にも、女の子(小日向みうさん)以外に、「カコ」という名前の恋人がいた
- 女の子(小日向みうさん)に未練がある、「過去」の自分(キクチユウジさん)からの着信
など、さまざまに想像を膨らませてお楽しみください。