Tani Yuukiさんの3rdシングル「Unreachable love song」（2021年2月）の歌詞の意味を考察します。
Unreachable love song 歌詞考察
始まりを回想している
嫌でも探してしまうよ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
至る所に君のことを
こんな気持ちになるならいっそ
知らなきゃよかったよ
基本的に「届かないラブソング」という意味の「Unreachable love song」は、Tani Yuukiさんが実体験を元に創作した失恋ソングです。
ただ「好きな人がいるのに、なかなか告白できない葛藤が描かれている」と解釈できるようにもなっていて、TikTokでは「推し（応援しているアーティスト）への届かない思い」を重ねる人も多いようですが、今回は失恋ソングとして考察していきましょう。
頭サビの前半では、失恋相手に未練が残り苦しんでいる様子が描かれています。
横断歩道待ちの信号
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
電車を待つ人のシルエット
きっとそんなとこにはいないの
Unreachable love song
頭サビの後半です。
山崎まさよしさんの4thシングル「One more time, One more chance」（1997年1月）では亡くなった恋人を「探してしまう」様子が描かれていますが、生きているのに会えない失恋相手を「探してしまう」のも切ないのではないでしょうか。
なぜか瞳が離せないんだ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
喉元まで出た言葉
僕ら以外の全てが
止まってしまったみたいだ
ここから語り手の「僕」が「君」に恋した「始まり」の回想になります。
まわりが目に入らなくなるほど衝撃的な出会いだったようです。
走る稲妻のような
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
心臓を掴まれるような
動けないほど張り詰めた
唐突な始まりだった
頭サビでは語尾が「お段」でそろえられていましたが、続く2つのパートでは語尾が「あ段」でそろえられています。
意味的にも強調したい「唐突な」というキーワードにつなげるために、「～ような」と重ねたりして言葉の響きにこだわっているようです。
stop 今じゃないし、 意気地ないし、空回り
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
be called 出やしないし、ごめんなに？の繰り返し
so-so な日々 ないし悪いくらいでもう終わり？
so long またしまい込んでいる
このパートは「い段」の語尾の「繰り返し」に続き、「う段」の語尾で締めくくる展開です。
「あいうえお」の母音で韻を踏んだり、言葉の響きでリズムを整えたりするのは、ヒップホップやR＆Bによくある手法なので、その点を取り入れているのでしょう。
嫌でも辿ってしまうよ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
至る所で君の想い出を
こんな惨めになるならいっそ
忘れたいくらいだよ
1番のサビ前半です。
頭サビでは「知らなきゃよかった」と嘆いていましたが、さらに「忘れたいくらいだ」と畳みかけています。
逆に「忘れられない」ことが際立つのではないでしょうか。
見送る度に歩いてた陸橋
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
着崩したパーカーにスウェット
きっと気に留めてすらいないの
Unreachable love song
1番のサビ後半です。
頭サビの「信号」が「陸橋」、「シルエット」が「スウェット」に変わるなど、離れたパートで韻を踏む手法も取り入れられています。
「僕」が「忘れられない」ことを「君」は「気にも留めていない」という意味的な対比と言葉のリズムが特徴的です。
終わりを回想している
なぜか瞳が見られないんだ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
吐き出す心無い言葉
僕らだけこの世界から
弾かれてしまったみたいだ
2番に入り、「瞳が離せない」が「瞳が見られない」に変わるなど、「言葉」や「僕ら」の状況もすべて逆の展開になりました。
いったいどうしたのでしょうか。
流れる滝壺のような
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
心臓を掴まれるような
動けないほど張り詰めた
冷たすぎる終わりだった
「あ段」の語尾でそろえているところは1番と同じですが、2番では2人の「終わり」を回想していることがわかってきました。
1番の「走る稲妻」に対し、2番では「流れる滝壺」と表現しているところが、やはり衝撃的な別れだったことを物語っています。
don’t stop 動き回り、立ち回り、空回り
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
get a call 聞くばかりじゃ意味ないし、
暇じゃないし
然う然う 返事無いし、話せないし、続かないし
go home また独り歩いている
とくに言葉の響きやリズム感が重視されているパートですが、1番の「stop」が「don’t stop」に変わるなど、「意味の逆転」にもこだわっている様子が感じられます。
嫌でも溢してしまうよ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
ため息混じる独り言を
ふと気を抜くとすぐに世界ごと
ぼやけてしまうんだよ
2番のサビ前半です。
「溢（こぼ）してしまう」のは「独り言」ですが、「世界がぼやける」ということは「涙もこぼしている」と考えられます。
失恋のショックから立ち直れず、すぐに泣いてしまう状態のようです。
バイト、部活、ノルマに、課題も
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
慣れた動きがままならないよ
ベットに潜りながら歌うの
Unreachable love song
2番のサビ後半です。
どこまでが実話で、どこからがフィクションかはわかりませんが、「バイト」などの身近な言葉が使われているところに親近感を覚える人もいるのではないでしょうか。
「日常生活がままならないほど落ち込んだときは、届かないラブソングを歌いながら眠る」というこの楽曲の本題が提示されました。
消えた未来を描いている
君の居ない世界でさ、息はできるのかな
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
自分がどうしたいか、が一番わからないんだ
どうやら「僕」は「息ができない」と感じるほどの苦しみを味わっているようです。
「自分」の気持ちに整理がつかないくらい混乱している様子も伝わってきます。
たとえば「推し」が結婚したり、活動休止したり、何らかの「推しロス」で体調を崩す人も同じような状態に陥るでしょうか。
時間が経ってしまえばもう笑い話だから
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
でも今の形は無しかな
割り切れず止まったまんま、動けないんだ
どれほど悲しいことがあって悩んでも、「時間の経過」によって「笑い話」に変わることもあると自覚できているところは冷静ですね。
ただ、失恋も「推しロス」もまったく想定外のタイミングで起きると、瞬間風速的な衝撃はすさまじいかもしれません。
今でも描いてしまうよ
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
夢に消えた未来のことを
どれほど時流れてもきっと
忘れられないんだろう
ラスサビの前半です。
過去の出会いと別れを振り返って悲しむだけでなく、「消えた未来」についても思いを馳せています。
その内容は「ずっと一緒にいるはずだった」とか「いつか結婚したかもしれない」といったところでしょうか。
横断歩道待ちの信号
出典:Unreachable love song / 作詞・作曲:Tani Yuuki
電車を待つ人のシルエット
今日も君を重ねて歌うの
Unreachable love song
ラスサビの後半です。
「街で君に似ている人を見つけては面影を重ね、届かないラブソングを歌う」という結末でした。
「独り言がこぼれる」という前フリもあったので、「街で歌う」のは伏線回収なのかもしれません。
ただ「実際に声を出して歌う」と注目の的になるので、「心のなかで歌っている」と解釈しておきましょう。
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さいごに
失恋や「推しロス」直後のときは「時間が経つと笑い話になる」なんて信じられないかもしれませんが、むしろショックが大きいことほど笑い話になりやすい傾向にあります。
心のなかやカラオケで「Unreachable love song」を歌いながら乗り越えましょう。
