『トマソン』は、ブルボン『濃厚チョコブラウニー』のオーディオ小説『no doubt』のテーマソングとして、マカロニえんぴつが書き下ろした楽曲。2021年10月21日に配信がスタートしました。
オーディオ小説『no doubt』は、 『君の膵臓を食べたい』で有名な作家・住野よるさんが書き下ろした全5話のオリジナル企業タイアップ小説。
“小説やお菓子を含め、生きることに直接は必要なさそうなものが、心に余白を作り人を豊かにする”がテーマになっている青春ストーリー。その主題歌にマカロニえんぴつが抜擢されました。
登場人物のイマイ、イガラシ、イマイの彼女・コバヤシ。彼らの声は、下野紘、梶裕貴、悠木碧と豪華声優陣が担当。そこに重なるマカロニえんぴつの楽曲が、青春を華々しく飾っています。
今回はこの『トマソン』の歌詞について考察していきます!
コメント
『トマソン』の書き下ろしにあたり、マカロニえんぴつのはっとり(Vo・G)と、高野賢也(B・Cho)からコメントが寄せられています。
学生時代、友達と話す時、部活の休憩で一息つけたい時、いつもチョコブラウニーが傍にあり人と時間を繋いでくれました。
今でも制作の合間に食べていて自分の中では凄く大きな存在になっています。
そんな思い出深いチョコブラウニーのCMを今回素敵なチームと共に沢山の方へ届ける事が出来て凄く凄く幸せです。
思い出と思い入れを詰め込んでお届けします。
『トマソン』歌詞考察
トマソンって誰?
”トマソン あんたは誰?”
そんな素っ頓狂な疑問から始まる冒頭。その答えは”暇つぶしの神様”とのこと。
一般的に「トマソン」とは芸術上の概念用語で「美しく保存された役に立たない長物」を指します。
部活やバイトをしていない『no doubt』の主人公イマイとイガラシ。
そんな二人にとって「暇」は人生の大半を構成する時間。「何もすることがないけれどなんとなく大事な時間」であることから、それを「トマソン」と名付けたことが考えられます。
『no doubt』 は高校時代の回想シーンも交じったアニメ。
「青春時代の暇」=「トマソン」が、大人になった二人のもとへやってきたのでしょうか?
どちらにせよ、忘れてしまっていた青春が蘇ってきたワンシーンを感じ取ることができます。
久しぶりの青春
「トマソン」から指令を受けた主人公は、当時を思い出すように過去へ回顧。
”春一番が走るぜ”という歌詞からは、懐かしい青春の一幕が想起されていることが読み取れます。
「一方向に一回のみ通用する乗車切符」を指す”片道切符”の言葉から、後ろを振り返りもせずに一生懸命に歩んできた主人公の性格や姿勢も感じられます。
トマソン=あの頃のオレ
「トマソン」の正体がわからぬまま、その指示に従う主人公。
”粘土だよ いやチョコレイトだヨ”の歌詞には、『濃厚チョコブラウニー』が潜んでいますね。
「粘土」と「チョコレイト」。色形は似ているかもしれませんが、中身は全く異なります。
思い返した青春が一見無駄に見えたけれど、実はとても味わいのあるものだったことを象徴しているように感じます。
「愛憎」は愛しつつも憎むこと。「無象」は種々雑多のつまらない人や物。
いろいろな喜怒哀楽が混在した無数の思い出が、主人公の今の心を形成していることが分かります。
特に何をするわけでもなかった青春時代。それが今に何をもたらしているかは分かりません。
しかし、実はその時間が重要だったと分かった時に、主人公は気付きます。
”お前はオレだな”
「暇」を持て余し、何の疑いもなく生きていた青春時代の純真無垢な自分自身の心に気付いたのだと思います。
生きててよかった人生
・「揺り籠」は赤ちゃん時代
・「酒場」は成人以降
ここでは、子供時代から大人になるまでの時間の早さが、マカロニえんぴつらしくユニークに表現されています。
”往復定期”は「何度も繰り返す」という意味でしょうか。
子どもっぽかったり、大人めいてみたり…。いろいろな経験を重ねてきた主人公は”生きててよかったなぁ”と感慨深く人生を想います。
人生に訪れる同じ太陽
”明け方4時半の陽”
この太陽の光りを見るシーンは、人生にたびたび訪れるものではないでしょうか?
赤ちゃんの時に早く起きてしまった朝。
徹夜でテスト勉強をした朝。
夜に飲みすぎて早く起きてしまった朝。
人生の何気ないシーンで見惚れてしまう”明け方4時の陽”。
言われようのない感情が高まる様子が描かれます。
青春をもう一度
主人公は再び、青春時代の高校生のときのように駆け抜けます。
当時から状況が変わっていたとしても、抱いている夢や希望は変わりません。
そこで急に姿を消そうとする「トマソン」。
今までの文脈から「トマソン」は、主人公の青春そのものの比喩だとも考えらます。
何でもなかったような時間が、実は本当にかけがえのない青春だと知った時、人は大人になるのでしょう。
青春への誇らしい肯定と憧憬で締めくくられます。
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おわりに
いかがでしたか?
実際に『no doubt』を観ると『トマソン』もより味わい深い楽曲になるかもしれません。
ぜひお菓子を片手に聴いてほしい一曲です!
住野さんの小説を読み、自分なりに昇華してみた歌詞です。
青春、友、無駄。僕はヒリつく十代の真ん中でイガラシやトマソンに出会いたかった。