今回は人気ボカロP・ピノキオピーが6月3日にリリースした新曲「転生林檎」を考察していきたいと思います。
「神っぽいな」や「魔法少女とチョコレゐト」も歌ってみた動画が多数作られている人気アーティスト。
「転生林檎」には、どんな意味が込められているのでしょうか?
早速歌詞を見ていきましょう!
転生林檎 歌詞考察
平凡な自分が嫌 なんでもない生活が嫌
胡散臭い売人から買った 怪しい林檎を頬張った
賢いワナビーはみんなやってる 一端の何者かに
生まれ変わってやり直せる 転生林檎
この楽曲では、齧ると人生をリセットできる林檎・転生林檎を使って、何度も転生を繰り返す主人公が歌われます。
何の取り柄もなく、平凡な自分や面白みのない日常に嫌気が差し、胡散臭い売人から買った怪しい林檎。
昔話やファンタジーにおいて林檎は、しばしば悪いものとして描かれます(白雪姫の毒りんごetc)
そうした林檎のイメージもあって、選ばれたのではないでしょうか?
また、林檎の果実の花言葉は「誘惑」
アダムとイブの林檎の神話に由来しています。
主人公が転生できる不思議な林檎の誘惑に負け、転生を繰り返す未来を暗示しているようですね。
<ワナビー(wannabe)>とは、何かになりたがっている人のこと。
成功している人たちは、皆この転生林檎でリセットしているのでしょう。
ある表現者になった 全世界で賞賛された
自分は特別で 他は凡人で その才能に酔いしれた
だが 人を愛する才能はなく 愛する仲間は去っていった
あー また ダメでした 転生しよう
転生林檎を手に入れた主人公は、ある表現者になります。
MVを見るとスプレーを片手に絵を描いているので、画家になったのでしょう。
その類まれなる才能が世界で称賛され、一躍有名になりますが、表現の天才になった主人公は、凡人の仲間にうまく接することが出来ず、一人ぼっちになってしまいます。
<あー また ダメでした 転生しよう>
ある発明家になった 世紀の大発明をした
世界が平和になりますように 本気で心から願った
だが 発明は兵器利用されて 残酷な血の雨が降った
あー また ダメでした 転生しよう
次はある発明家になり、歴史を変えるような大発明をします。
世界の平和を求めて作り上げた発明品でしたが、結局争いに巻き込まれ、発明品は兵器として利用されます。
ロケットの父と呼ばれるフォン・ブラウン博士は、宇宙開発に大きな影響を与えた人物です。
しかし、第二次世界大戦下のドイツでは、ロケットの技術を応用してミサイルの開発を余儀なくされます。
また、原子爆弾を発明したロバート・オッペンハイマー博士は、世界が扱いきれないほどの威力を持った兵器を作り、戦争を無意味にしょうと考えていましたが、新兵器の威力を見た人々が通常の兵器のように使ってしまったと絶望したそうです。
この曲の主人公も、似たような境遇だったのでしょうか?
自分の発明が多くの人の命を奪ったことに絶望した主人公は、また林檎を齧ってリセットします。
才能がないからチェンジ またリセット
頭悪いからチェンジ またリセット
人生の攻略法 幸福の必勝法
見境ないね 「自分」が消えちゃったの?
「才能がないから」「頭悪いから」と様々な理由でリセットを繰り返す主人公。
より良い人生を送るためにリセマラ(リセットマラソン:最初に手に入れられるランダムアイテムのために、ゲームの起動を繰り返すこと)しているようですね。
そんな主人公に対し
<見境ないね 「自分」が消えちゃったの?>
と投げかけます。
主人公はどう感じているのでしょうか?
くりかえし くりかえし 生まれ変わり
山積みの亡骸の上でダンシング
リインカーネーション リインカーネーションの悲痛な叫び
愛して 愛して 嫌
くりかえし くりかえし 生まれ変わり
きらめく似たり寄ったりのストーリー
リインカーネーション リインカーネーションの果てのオーバーキル
どうして どうして
転生林檎でリセットを繰り返す内、どんどん溜まっていく亡骸。
「リインカーネーション」とは、死者の魂が生まれ変わることを意味しています。
何度も生まれ変わりを繰り返す主人公に、リインカーネーションが悲鳴を上げている様子が浮かんできますね。
転生を繰り返しても、大体の人生は同じような内容。
最初はうまく行っても、いつか絶望が訪れます。
そのたびに、林檎をシャクシャク齧る主人公。
「どうして何度もやり直しているのに、自分の人生はうまく行かないんだろう」と悩んでいる様子が歌われています。
ある救世主になった 無償の愛を分け与えた
たくさんの人が慕い 尊敬し 老いも若きも頭下げた
だが 純粋すぎて悪に騙され 骨までしゃぶられてしまった
あー また ダメでした 転生しよう
続いて転生したのは、ある救世主。
歌詞を見ているとイエスキリストが想像されますね。
この楽曲には、ピノキオピーさんの過去作要素が登場します。
この部分では「ノンブレス・オブリージュ」を思わせるMVになっていますね。
純粋すぎた救世主は騙され、骨までしゃぶられてしまいます。
<あー また ダメでした 転生しよう>
ある革命家になった 変な綺麗事を嫌った
正直者が馬鹿を見る世界でルールを疑い戦った
だが 手に入れた力に溺れ 平和ごと燃やしてしまった
あー また ダメでした 転生しよう
救世主の次は革命家。
正直者が馬鹿を見るという表現は、過去作「魔法少女とチョコレゐト」とも通じる部分がありますね。
理不尽な世界を正すため革命を起こし、見事成功する主人公でしたが、革命後に手に入れた力に溺れて、自ら勝ち取った平和を崩し去ってしまいました。
成功しても結局ダメになるループから抜け出せないでいる主人公の姿が浮かびます。
人望がないからチェンジ またリセット
大義がないからチェンジ またリセット
快楽の奴隷 インテリの亡霊
異世界でも 現実はシャバかったよ
「人望がない」「大義がない」リセットリセットリセット・・・
<異世界でも 現実はシャバかったよ> の部分では過去作の初音ミクが登場し、盛り上がりましたね。
転生して異世界に行っても、現実は元いた世界と変わらず、つまらなく退屈なものだったよ、というメッセージを、違う世界線の初音ミクが伝えてくれているような気がしました。
ある冒険者になった 理想を求めて旅立った
無謀な挑戦でも貫く姿勢に人々は感動した
だが 理想を求めるがあまり 罪のない人が犠牲になった
あー あー またダメ? どこへ向かうのだろう?
次はある冒険者。
理想を追い求め、どこまでも突き進む姿に人々は感動し、成功を収めます。
しかし、自分の理想を追い求めるあまり、罪のない人を犠牲にしてしまう。
結局失敗する主人公の、お決まり転生パターンです。
ああ 転生が終わった 平凡な自分に戻った
悲しいけど なんだかホッとした さあ 自分はどうしようか
シラフに戻ったら みんなやめてく 自分が自分であるために
ゴミ箱に捨てた 転生林檎
何度も転生を繰り返した主人公は、最終的に元の平凡な自分に戻ります。
<悲しいけど なんだかホッとした さあ 自分はどうしようか>
という歌詞から、これまで繰り返してきた特別な人生ではなく、自分の人生を歩もうとしていることがわかります。
そう考えるのは、主人公だけではないようです。
みんなシラフに戻ったら転生リピートをやめ、自分の人生を生きようとする。
これまで使い倒してきた転生林檎をゴミ箱に投げ捨て曲は終わります。
この曲を通してピノキオピーさんが伝えたいことは、「どんなに綺羅びやかで羨ましい人生でも、その人生に【自分】が居なければ意味がない」ということなのではないでしょうか?
逆に、どんなに平凡で退屈な人生でも、しっかりとした【自分】を持って生きていれば、必ず幸せになれると歌っているようにも思いました。
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さいごに
いかがでしたか?
ピノキオピーさんの楽曲は、毎回内容が濃いので考えさせられます。
これからの活躍からも目が離せませんね。