Mrs. GREEN APPLE(ミセス)の7thシングル「青と夏」(2018年8月)のカップリング曲「点描の唄」は、井上苑子さんとのデュエットが印象的なラブバラード。
佐野勇斗さんと葵わかなさん主演、南波あつこさんの漫画が原作の映画「青夏 きみに恋した30日」(2018年8月公開)の挿入歌です。
タイトルの「点描」(てんびょう)にはどのような意味が込められているのでしょうか。
ボーカル&ギターの大森元貴さんが作詞・作曲・編曲を担当した「点描の唄」の歌詞を考察します。
映画「青夏」の概要
都会育ちの女子高生・理緒(葵わかなさん)が夏休みの間だけ田舎で過ごし、地元の男子高生・吟蔵(佐野勇斗さん)と「夏限定の恋」をする物語です。

点描の唄 (feat.井上苑子) 歌詞考察!
1番は女性の心情が描かれている

タイトルの「点描」とは絵画の技法で、線ではなく点で描く「ドット絵」のこと。
独立した点は線でつながっていませんが、全体としてひとつのまとまった絵に見えるという特徴があります。
つまり「点描の唄」は「点描画」のような歌という意味です。
井上苑子さんが歌うパートは女性目線、大森元貴さんが歌うパートは男性目線で描かれていて、それぞれ独白ですが、サビではアンサンブル(合唱)となってまとまっています。
1番は井上苑子さんがメインで歌っているので、映画の女性主人公・理緒の思いが表現されていると解釈できます。

1番のAメロ・Bメロは基本的に井上苑子さんがメインボーカルですが、「強がらないで~」の部分を歌っているのは大森元貴さん、「限りある」からサビにかけてはアンサンブルです。
映画では、理緒が吟蔵に告白するものの、吟蔵は「住む世界が違う」という理由で交際を断ります。
失恋すると泣きたい気分になるものですが、「強がって涙をこらえる必要はない」と吟蔵が返事をしているようです。
理緒は吟蔵と夏休み中しか一緒にいられないとしても、「出会えて良かった」と幸せに浸っています。

夏休みが終わると、理緒は都会に戻らなければいけません。
サビでは、吟蔵とずっと一緒にいることはできないとわかりながらも、願わずにはいられない切ない気持ちが伝わってきます。
しかも交際を拒否されたので、手をつなぐことさえできません。
それでも理緒は吟蔵を好きという気持ちを大切にしています。
付き合うという具体的な行動は伴わなくても、ただ誰かを好きだと思うだけで温かい気持ちになるような青春の1ページが表現されているのではないでしょうか。
2番で男性の思いが明らかになる

大森元貴さんがメインボーカルを務める2番です。
吟蔵は理緒を振りましが、一緒にいられる期間が限られているから交際を断っただけで、本当は理緒に魅かれていたことが明らかになります。
理緒は失恋したわけではなく、実は両思いでした。
しかし付き合ったところで別れなければいけないことは決まっているため交際には発展せず、お互いに片思いをしているような状況です。
2番にはBメロがなく間奏になっていますが、映画ではここに台詞が入ります。

アンサンブルになっているサビです。
両思いなら短い間でも付き合って、遠距離恋愛を続けた後に、一緒にいられる将来を模索する方法もあるのではないでしょうか。
ところが吟蔵は、地元での「当たり前」の暮らし以外にも選択肢があることに考えが及びません。
地元の人なら付き合えるけれど、都会の人とは付き合えないと思い込んでいるのでしょう。
たとえ交際できなくても、好きという純粋な気持ちに変わりはありません。
叶わないとわかりながらファンタジックに願うところが刹那的な青春らしいでしょう。
ただ好きであることの尊さ

最後はアンサンブル、サビの応酬です。
実際に付き合うと別の感情やトラブルが発生する可能性もあるので、お互いに好きすぎてたまらない時期というのが最もピュアかもしれませんね。
好きという思いだけでは現実を生きるのが難しい側面もありますが、儚い感情だからこその美しさが表現されています。

残念ながら時間は止まりませんが、「点描の唄」という絵画的な表現方法によって、「今しかない青春時代」が瞬間保存されているような感覚に陥ります。
告白しようかどうか迷っている人は、純粋に好きという気持ちで満たされている「現在」がどれほど幸せなのか、思い知ることができるのではないでしょうか。
たとえ失恋しても「本気で好きだった」と思えたら、自分を褒めてあげてもいいかもしれませんね。

結局ふたりは付き合わないままラストを迎えます。
それでも映画や「点描の唄」で描かれた夏が色あせることなく続くような余韻に浸れるのではないでしょうか。
青春真っ最中で恋にときめいている人はもちろん、かつての淡い夏の思い出を振り返りたいときに聴いてみるのもいいですね。

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さいごに
「点描の唄」はAbemaTVの恋愛リアリティ番組「今日、好きになりました。」第34~36弾(2021年4月5日~7月19日)の挿入歌にも起用されました。
インストアルバム「5 -Instrumentals-」(2020年12月)にも収録されています。