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今、大人気の4ピースバンド・オレンジスパイニクラブの初のフルアルバム『アンメジャラブル』に収録された『退屈かも知れない』の歌詞を考察します!
作詞・作曲はスズキナオト(ギター・コーラス)。
退屈とは「なすべきことがなくて時間をもてあましその状況に嫌気がさしている」という意味。
時間がありあまっている状況に幸せではなく、嫌悪感を抱いている辛い状況を指しています。
主人公は、なぜ「かも知れない」と不明確な言い方をしているのでしょうか?
冴えない退廃的な毎日の描写が妙にリアルで、五感がうごめいてしまうほどに親和性の高い『退屈かもしれない』。
オレンジスパイニクラブの卓越した表現力の高さをぜひ身に感じてみてください!

『退屈かもしれない』歌詞考察
生臭い女

”嫌な女の生臭い匂い”という強烈な不穏ワードから始まる冒頭。
「嫌な女」ということは、主人公の恋人や好きな人ではないことが分かります。
それどころか、性格が悪く、誰にでも媚びを売るような女性を指しているのでしょうか。
内面からあふれ出る性格の悪さと、 鼻をつくような体臭の入り混じる香水の匂い。それらを”生臭い”と二重に表現しているように思います。
しかし主人公はこの女を抱いている様子。しかも外で。
不快に近い感情を持っている相手なのに、自身の「欲」を満たすために女を抱いている主人公のダメさ加減、腐っている性根の悪さが垣間見れます。
えずつ衝動

嫌な女を抱いてしまうほど、主人公は退廃的な生活を送っています。
しかし主人公は自分に吐き気がするほど嫌気が差しているようです。そう、自身の退廃さを十分に自覚してるから辛いのです。
そんな心を吐き出してしまいたいと”アルミ缶9%”のアルコールを飲み干してしまう荒廃ようです。
終始イライラする心で見上げた月は、主人公の心を反映するように釈然としません。
真っ暗な夜道を月あかりがうるさく主人公を照らす様子が目に浮かびます。
退廃に溺れて

主人公が”勝手に待った”のは何なのでしょうか?
”バレないように好かれないように”という言葉から、冒頭の”生臭い匂いの女”を指しているのが予想されます。
あんなにも嫌がっている女を勝手に待っている主人公は、相手は誰でも良いから自分の退屈な時間をつぶして、欲求を満たしたいと思っているのでしょう。
体たらくで最低な自分を自覚してしまうと強烈な自己嫌悪に陥るために目を背け、”退屈かもしれない”とさらりと言ってしまう主人公の堕落した心情が読み取れます。
敗北した生活

アニメの登場人物で表現される敗北感。
乗り越えたり勝利することのないアニメの人物は、主人公の現状に重なっています。
もし主人公の生活がアニメになったら、なんの充実感も得られないでしょう。
主人公の味気ない生活が垣間見れる歌詞です。
最も壊したい相手

空虚感を満たすために主人公は風俗へ赴きます。
”寒い空調”と周囲の環境を俯瞰できるほどに主人公は冷静。
しかし一度満たされたらさらなる虚無感が襲うため、どんどん空っぽの欲望が主人公の心を覆います。
”隠してたノートの愛の言葉”は、「いざ」という時に女を落とすうわべの愛情の言葉でしょうか。
そんな言葉を投げかけて目の前にいる女を”壊したい”という衝動に駆られます。
「先に」ということは、本当に最も壊したいのは自分自身なのが分かります。
デカダンスの中に潜む希望

主人公にとって今、女を抱いて別れることは”バイビー”と言えるくらい軽い出来事。
でもそんな別れ方をしたときに主人公を襲うのは、自分自身がひどく退廃しているという現実です。
「もうそんな荒廃した生活や陳腐な欲望に溺れたくない」―。
そんな主人公のかすかな希望が見え隠れしている歌詞ではないでしょうか。
”つまらない恋がしたい”
”次は退屈な愛を選びたい”
今までは「恋」「愛」まで到達しなかった主人公。
ここにきて初めて「ちゃんと相手と心の通った愛情関係を結びたい」と思っているのでしょう。
どんなに時間があっても、しっかりと相手を愛せるような恋愛を求めているのが分かります。
そして、振り出しに

先ほどのサビの歌詞と同じになりますが、主人公は再び退廃した生活へと戻ってしまっていっている様子。
好きでもない女に追いかけられ、自身の欲望のままに寝る。
そんな怠惰で堕落した有り様が最後まで解消されることは無さそうです。
主人公がこのような現状を「退屈かもしれない」と言うのは、何が正しく何が間違っているのかもうわからないからだと予想されます。そして今が幸せなのか不幸せなのか、路頭に迷っているのでしょう。
救いのない最後に、胸が締め付けられるような楽曲です。

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おわりに
飽き飽きした冷めきった気持ち、堕落した悲壮感。
経験したことがないのになんだか共感してしまうようなオレンジスパイニクラブ『退屈かも知れない』。
日常のワンシーンや、心の隙間に挟まった感情描写が卓越しているからリスナーも心を寄せることができるのだと思います。
『退屈かも知れない』、ぜひ聴いてみてください!