2017年7月21日にミュージックビデオが公開された「砂の惑星」について考察していきます!
「砂の惑星」は米津玄師さんがハチという名前でボカロPとして活動していた時に、ボカロ曲として公開したのが最初です。
その後、自身の4枚目のアルバム『BOOTLEG』に米津玄師さんボーカルで収録されたことから、米津玄師さんにとっても大切な曲であることが伺えます。
「砂の惑星」は簡単に言うとニコニコ動画全盛期に人気を博したハチこと米津玄師さんにが、どんどんyoutubeに遅れをとっていく状況に対して思うところを書いた曲です。
ボカロというジャンル、ニコニコ動画というプラットフォームを支えた功労者の米津玄師さんは一体どんなことを感じていたのでしょうか?
では、歌詞の考察を始めていきましょう!

砂の惑星 歌詞考察
廃れたニコニコ動画を支えたいという想い
何もない砂場飛び交う雷鳴 しょうもない音で掠れた生命
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
今後千年草も生えない 砂の惑星さ
こんな具合でまだ磨り減る運命 どこへも行けなくて墜落衛星
立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星さ
冒頭でも書いたように、曲中での砂は枯れ果てた状態を意味し、砂場とはどんどん公開楽曲数が減っていくニコニコ動画を指しています。
「何もない砂場飛び交う雷鳴」はまさに何もない状況で、更にまだまだ悪化していくんじゃないかと感じさせるフレーズですね。
「しょうもない音で掠れた生命」はニコニコ動画に投稿される動画の数と質の低下によって、ユーザーの感性さえ奪われていくんじゃないかという懸念のように感じます。
「今後千年草も生えない 砂の惑星さ」
「立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星さ」については今のニコニコ動画の状況から考えると、まさに予言のようになってしまいましたね。
米津玄師さんの読みは、ずばり当たっていたのです。
のらりくらり歩き回り たどり着いた祈り
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
君が今も生きてるなら 応えてくれ僕に
「たどり着いた祈り」から、それでもニコニコ動画に頑張ってほしいという応援メッセージのようにもとれます。
「君が今も生きてるなら 応えてくれ僕に」はユーザーへの呼びかけで、まだまだニコニコ動画は死んでいない、ボカロは死んでいない、そうだと言ってくれ!という熱い叫びではないでしょうか。
イェイ今日の日はサンゴーズダウン つまり元どおりまでバイバイバイ
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
思いついたら歩いていけ 心残り残さないように
イェイ空を切るサンダーストーム 鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は
「サンゴーズダウン」とはSun goes down、日が落ちるという意味です。
今日という日は終わってしまうが、また以前のように盛り上がろうぜという意味ではないでしょうか。
「思いついたら歩いていけ 心残り残さないように」はニコニコ動画が好きなら、終わった終わったと言ってばかりいないで、終わってしまうとしても最後までできることをしようという前向きなメッセージです。
まさにニコニコ動画を牽引してきた米津玄師さんだからこそ、説得力を持つフレーズです。
旧時代への別れ、新世代への呼びかけ
そういや今日は僕らのハッピーバースデイ 思い思いの飾り付けしようぜ
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
甘ったるいだけのケーキ囲んで 歌を歌おうぜ
有象無象の墓の前で敬礼 そうメルトショックにて生まれた生命
この井戸が枯れる前に早く ここを出て行こうぜ
「そういや今日は僕らのハッピーバースデイ」は初音ミクが誕生して10周年を迎えることから来ています。
ニコニコ動画から生まれた文化はたくさんありますが、その代表的な一つがボーカロイドだと思います。
一世を風靡し、今やボーカロイドという一つのジャンルを築きましたが、その一方でそれにすがってばかりいる状況を良く思っていないことが分かるのが次のフレーズです。
「甘ったるいだけのケーキ」にはそんなメッセージが込められているのではないでしょうか。
「そうメルトショックにて生まれた生命」の「メルトショック」とはニコニコ動画で起きたある事件を指しています。
詳細は割愛しますが「メルトショック」は初音ミク全盛期で起こった出来事であり、当時の初音ミクの人気を裏付けることになりました。
そんな時代を生き、影響を受けた人たちが世の中にたくさんいることは間違いありません。
中には素晴らしい才能を持った若者もいるでしょう。
そんな人たちに向けたメッセージが「この井戸が枯れる前に早く ここを出て行こうぜ」という一文です。
ニコニコ動画を応援したいという一方で、若者クリエイターには視野を広げてほしいと願っていることが伺えます。
ねえねえねえあなたと私でランデブー? すでに廃れた砂漠で何思う
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
今だパッパパッと飛び出せマイヒーロー どうか迷える我らを救いたまえ
ぶっ飛んで行こうぜもっと エイエイオーでよーいどんと
あのダンスホール モザイクの奥 太古代のオーパーツ
光線銃でバンババンバン 少年少女謳う希望論
驚天動地そんで古今未曾有の思い出は電子音
ここは一般の人からすると何の意味かさっぱり分からないと思うのですが、ボカロファンにはたまらない部分なんです!
そう、色んなボカロヒット曲の歌詞のフレーズが散りばめられているのです。
「ねえねえあなたと私でランデブー?」→マトリョシカ
「未だパッパパッと飛び出せマイヒーロー」→パンダヒーロー
「ぶっ飛んで行こうぜもっと」→え?あぁ、そう。
「エイエイオーでよーいどんと」→おこちゃま戦争
「あのダンスホール モザイクの奥」→ワールズ・エンドダンスホール、モザイクロール
「太古代のオーパーツ」→カミサマネジマキ
「光線銃でバンババンバン」→千本桜
「少年少女謳う希望論」→チルドレンレコード
「驚天動地そんで古今未曾有の思い出は電子音」→お姫様は電子音で眠る
これだけクセのあるフレーズが並ぶと本来なら聴いていて違和感を覚えそうなものですが、全くそう感じさせない作曲・編曲センスもまた素晴らしいとしか言いようがありません。
戸惑い憂い怒り狂い たどり着いた祈り
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
君の心死なずいるなら 応答せよ早急に
一番のBメロではリスナーに対する呼びかけでしたが、この二番のBメロはクリエイターへの呼びかけになっています。
楽曲を制作する過程、公開した後のリスナーの反応など、動画一つ公開するのにも様々な感情が巡ります。
「君の心死なずいるなら 応答せよ早急に」はまだ戦おうという意思はあるか、あるなら一緒に戦おうと鼓舞している様子が伝わってきますね。
イェイきっとまだボーイズドントクライ つまり仲直りまでバイバイバイ
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
思い出したら教えてくれ あの混沌の夢みたいな歌
イェイ宙を舞うレイザービーム 遠方指し示せばバイバイバイ
天空の城まで僕らを導いてくれ
「イェイきっとまだボーイズドントクライ つまり仲直りまでバイバイバイ」の一文だけでも、ニコニコ動画全盛期時代の戦友への思いやりを感じますね。
「思い出したら教えてくれ あの混沌の夢みたいな歌」には、今思えばあの頃は良かったと感じていたことが分かりますね。
「天空の城まで僕らを導いてくれ」からは、舞台は変わってもまだまだ俺たちは上に行けるんだという自信を感じます。
これを機にまた始める。いや、もう始まっている
歌って踊ろうハッピーバースデイ 砂漠に林檎の木を植えよう
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
でんぐり返りそんじゃバイバイ あとは誰かが勝手にどうぞ
「歌って踊ろうハッピーバースデイ」は初音ミク誕生10周年のタイミングで、「砂漠にリンゴの木を植えよう」と発信しています。
この部分はニコニコ動画をもう一度盛り上げようともとることができますし、新しい場所で更にまた羽ばたいていこうともとれますね。
「でんぐり返りそんじゃバイバイ」では一度状況をひっくり返して元に戻そうという意味合いではないでしょうか。
全てをまっさらな状態に戻した上で「あとは誰かが勝手にどうぞ」と来ているのは、新しい世代、新しい時代を迎合しているようにも感じます。
イェイ今日の日はサンゴーズダウン つまり元どおりまでバイバイバイ
出典:砂の惑星(+初音ミク) / 作詞・作曲:ハチ
思いついたら歩いていけ 心残り残さないように
イェイ空を切るサンダーストーム 鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は
風が吹き曝しなお進む砂の惑星さ
一番と同じ歌詞にラスト一文、「風が吹き曝しなお進む砂の惑星さ」が付け足されています。
「砂の惑星」を過疎化したニコニコ動画に喩えながらも「なお進む」としているのは、ニコニコ動画には未だ素晴らしいクリエイターがいて、彼らによって未だ新しい進化を遂げようとしていることを示唆しています。
と、同時に米津玄師さんがニコニコ動画の現況を未だ見守っているという裏返しでもありますよね。
ニコニコ動画全盛期世代に対してオワコンオワコンとばかり言うのではなく、新しい才能にも目を向けていこうぜというのが米津玄師さんが最も伝えたかったことではないでしょうか。

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さいごに
ニコニコ動画全盛期に熱狂していた方には、思うところがたくさんあったのではないでしょうか。
ニコニコ動画を知らない世代の方には伝わりきらない部分もあると思いますが、敢えて米津玄師さんは時代感を残そうとしたのではないかとも思います。
後から考えれば何とも思わないようなことでも、当時は夢中だったという経験、誰もがありますよね。
その時の感情を忘れないように、いつでも思い出せるように曲の中にしまい込もうとしたのではないかと推察しました。
結果的にそれがニコニコ動画時代を生きたリスナーやクリエイターの共感を呼び、まさに時代の節目に残る曲になったわけですね。
今やyoutubeと比較されることすら少なくなってきたニコニコ動画ですが、今後また新しい文化を生み出して復活することに期待です。
その時に米津玄師さんがどんな反応をするか、それもまた楽しみですね。