King Gnu(キングヌー)「Slumberland」(スランバーランド、2018年12月)の歌詞の意味を考察します。
メジャーデビュー(通算2nd)アルバム「Sympa」(シンパ、2019年1月)のリード曲。
常田大希さんが作詞・作曲した「Slumberland」の歌詞をチェックしましょう。
原曲と影響曲
「Slumberland」は、King Gnuの前身バンドSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)の「PPL」(1stアルバム「Mad me more softly」2015年9月)と2nd配信シングル「都」(2016年5月)を原曲とするリメイク曲。
「PPL」は「People」の略でしょう。
Mrs.Vinci「In Tokyo」
Srv.Vinciより前のMrs.Vinci「In Tokyo」にも、サビの「Wake up people in Tokyo」というフレーズが入っています。
井上陽水「傘がない」
影響を受けた曲は、井上陽水さんの2ndシングル「傘がない」(1972年7月、1stアルバム「断絶」1972年5月)。
弾き語りベストアルバム「弾き語りパッション」(2008年7月)時のMVでは、オダギリジョーさんが井上陽水さんに扮して弾き語っています。

Slumberland 歌詞考察!
目を覚ませ!

King Gnuはハイトーンボイスが特徴的な井口理さんと、オルタナティブな歌声の常田大希さんのツインボーカル。
「Slumberland」では常田大希さんが拡声器を使ってメインボーカルを務めているため攻撃的に聴こえますが、マスメディアを批判しているわけではありません。
むしろ「世間ではさまざまなことが起きているが、自分は今それどころではない」というスタンスで、この点が井上陽水さん「傘がない」の影響を受けています。

「Slumberland」はメジャーデビューアルバム「Sympa」のリード曲なので、King Gnuにとってはメインストリームへ進出する挨拶代わりでもあったでしょう。
Srv.Vinci「Mad me more softly」やMrs.Vinci「In Tokyo」のMVでもわかるとおり、常田大希さんはもともと前衛的なサウンドが好みで、ベースの新井和輝さんやドラムの勢喜遊さんも主にジャズシーンで活動していました。
それでも2017年4月に「ヌーの大群のようにシンパ(共鳴者)を募る」といった意味の、J-POPを意識したロックバンドKing Gnuに改名したのは、音楽で夢を見たかったから。
そのメジャーデビューのタイミングなので、どれほど「悪事」や「薄っぺらい」音楽がはびこっていても、それどころではないという話です。

サビの前半です。
クラシックもロックも同じように聴いて育った常田大希さんは、ロックンローラーになりたいわけではない音楽家。
テレビを持たない時期もあったり、J-POPや歌謡曲はKing Gnuのために集中して聴いたほど疎かったり、もともとオルタナティブな人物です。
それでもメインストリームのJ-POPや、バンドサウンドの王道ロックに挑戦したのは、人々に「目を覚ませ」と伝える必要性があると感じたからではないでしょうか。

サビの後半です。
長野県出身の常田大希さんが「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」など東京にこだわっているのは、混沌とした東京ならではの音楽を発信する拠点にしたいから。
たとえばアメリカにはニューヨーク、ロサンゼルス、ナッシュビル、オースティンなど音楽都市が多数ありますが、日本の音楽はまずメインストリームが変わらないことにはどうにもならない状況かもしれません。
ディスるだけでは変わらない

「Slumberland」はJ-POPの様式に則ったロックですが、ヒップホップ、ジャズ、ファンクなどブラックミュージックの要素も随所に盛り込まれた多層的なサウンドが特徴的。
「すっからかん」な音楽がはびこるシチュエーションに業を煮やして、中身が詰まりまくった音楽をお見舞いするアジテーションが圧巻です。

「みる」と「射る」、「親父」と「マニー」など、全編にわたって語尾の母音をそろえたり、ときには外したりしながら韻を踏んでいるところがヒップホップ的。
闇雲に「ディスる」(批判する)のではなく、お金儲けのためだけに「中身」のない、まがいものの音楽を流通させる仕組みを変えたいと願っているのではないでしょうか。
この後サビが繰り返されます。
眠りの国の操り人形?

タイトルの「Slumberland」は「眠りの国」という意味です。
ほとんどの人は「ビロード」生地の枕で眠り続けているような状態だから、枕カバーが「擦れて溶けた」という喩えでしょうか。

あるいはMVに出てくるマペット(アメリカの子ども番組「セサミストリート」に登場する手袋型操り人形)の生地が「ビロード」だとすると、操り人形の化けの皮が剥がれたということ。
「それでも血が出ないのは、中身が空っぽだから」と批判しているようですが、むしろ「ビロード」と「披露」のライム(韻)に続き、「~み(い段)」の語尾で畳みかける流れに圧倒されます。
最後に繰り返されるサビを聴く頃には、操られていた人も目が覚めたのではないでしょうか。

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さいごに
メインストリームで「中身が空っぽ」な音楽が流通しがちなのは「お金儲けの手段としか思っていない人にとってはそのほうが楽だから」ではないでしょうか。
操り人形の思惑にだまされないよう目を覚まして、音楽愛にあふれた音楽を聴き分けたいものですね。