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6月16日にリリースされる米津玄師さんのシングル『Pale Blue』に収録されている新曲「死神」の歌詞を解釈していきたいと思います。
表題曲「Pale Blue」はドラマ「リコカツ」の主題歌として書き下ろされた楽曲で、5月31日に配信開始された後、初週DL数8.9万DLを記録し、「オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキング」で初登場1位を獲得しました。
そんな大ヒット中のシングルに収録されている本楽曲。
死神というインパクトのあるタイトルですが、歌詞を見てもどういう意味なのかしっくりこないという人が多いと思いのではないでしょうか
本記事では、歌詞の背景から徹底的に解説していくので、読み切った方は歌詞の意味が完璧に理解できるはずです!
それでは早速みていきましょう!
死神は落語の演目!?
米津さんはインタビューで「死神」のモチーフについて以下のようにコメントしています。
「死神」は落語ですね。
「Pale Blue」は本当に死ぬかと思いながら作ったんです。
いよいよ締切に間に合わないかもしれない、でももし間に合わなくてドラマの主題歌がなくなったらいろいろ迷惑をかけることになる。
これはヤバいぞと、うめきながら作っていて。で、それがなんとか間に合ったんですよ。
ひと安心して本当に好きなことだけやろうと作り始めたのが「死神」です。
落語の演目をモチーフにして作られていたんですね。
歌詞考察の前に、その落語についてもご紹介します。
古典落語「死神」のあらすじ
後半は怖い話としても有名なので知っている人も多いかもしれません。
借金まみれで、首を吊ろうとした男の前に死神が現れ、金儲けの方法を教えてやるとささやきます。
その方法とは、医者になることでした。
死神が見えるようになった男は、死神が枕元にいれば必ず亡くなり、足元にいれば呪文を唱えて追い払うことで命を助けることができると教えてもらいます。
そして最後に、枕元に死神がいる場合はどれだけ金を積まれても余計な手出しはしていけないと忠告を受けます。
男は死神から教わった方法を使い、沢山の人々を助け、名医と呼ばれるようになります。
しかし、医者の仕事で稼いだお金も、妻以外の女性と贅沢をしたせいですぐに無くなってしまいました。
そんな中、ある大富豪からの依頼で、治せば大金を払うと言われた主人公。
報酬に目が眩み、患者の寝ている布団を180度回転させることで、枕元にいる死神を足元にし、呪文を唱えて追い払います。
患者は助かりましたが、男は忠告を破ったことに怒った死神に地下の世界へ連れて行かれます。
大量のろうそくが並べられた地下世界で、今にも消えそうなろうそくが自分の寿命だと教えらる男。
必死に新しいろうそくに移し替えようとするのですが、上手く行かず男は死んでしまいます。
移し替えに失敗するパターンは、上手くいかなかったり、ついたものの安堵のため息で消えてしまったりといろいろありますが、自分のしたことの報いを受けるという話になっています。
先程のインタビューの続きで米津さんはこう答えています。
「死神」という演目には「アジャラカモクレン テケレッツのパー」という印象的なフレーズがあって。
死神を追い払う呪文みたいな言葉で、人によっては「アジャラカモクレン」と「テケレッツのパー」の間にいろんな言葉が入るんです。
その言葉の響きが非常に好きで、これを音楽にしたら面白いんじゃないかなというところからカジュアルに作っていったら、こういう感じの曲になりました。
死神を追い払う呪文が元になって生まれた楽曲なんですね。
どんな歌詞なのか楽しみです!

「死神」 歌詞考察!
米津さんが「Pale Blue」の制作を終え、自分の好きなように作ったという「死神」。
早速歌詞の意味を解釈していきましょう!
借金まみれの男に手を差し伸べる死神

借金まみれで、人生に希望の光なんて見えない主人公。
こんなくだらない人生はいつになったら終わるんだろうかと鬱屈とした気分でしょう。
そして、ここでの「手前」は自分の経済状況を表している言葉だと解釈します。
自分の財力では所在ない(手持ち無沙汰)という状態です。
私たちが生きる理由は何でしょうか?
もしも自分の財産がなくなったら、この男のように死にたくなるのでしょうか?
心が弱っているときには普段はしないようなことをしてしまったり、普段は信じないようなことも信じてしまうことがあります。
この男も、お金があれば死神を信じることはなかったかもしれませんね。

「じゃらける」というのは米津さんの出身地徳島県の阿波弁でふざけるという意味です。
「与太」とはここではでたらめで、ふざけた言葉のことです
死神が見えるようになった男は、医学の知識は全く無いにもかかわらず、でたらめな言葉と呪文だけで死神を祓い、大金を得るようになりました。
そんなことをして稼いだお金はまさに「悪銭」といえるでしょう。
大金を得るようになった男ですが、その使い道はろくでもないものばかりです。
この歌詞は死神視点で男の様子を描いていますね。
忠告を無視した男は罰を受ける

因果応報という言葉がこれほどふさわしい男は他にいないでしょう。
報酬に目がくらんだ男は、死神の忠告を無視して、無理やり死神を祓いました。
怒った死神に寿命を短くされますが、男はこのように死神に助けを求めたのでしょう。
実際の落語を聞いてみると分かりますが、主人公の男は向こう見ずで楽観的。深く物事を考えない性格です。
なんとか死神に救済を求めますが、そもそも自分が忠告を無視したのが悪いのです。

ろうそくの火は自分の寿命をあらわしています。
今にも消えそうな自分のろうそくを見る男は、少しは反省したでしょうか?
医者と自称し、大金を稼いで人生を謳歌していたのもつかの間、悪い行いは全て自分に返ってきます。
借金まみれでどん底にいたところから、金を得て、人生が面白くなるのではないかと期待していた男。
しかし、そんな都合のいい話はありません。

「渡りに船」とは、川を渡ろうとするときに渡し場にたまたま船がいることから、必要なものや条件が都合良く揃うという意味の言葉です。
借金まみれで家族も失い、死のう死のうとさまよっていた男。
そんなときに現れ、男を医者に仕立て上げてくれた死神はまさに渡りに船の状態だったでしょう。
現代でも、弱っている人に近づいてくる悪人や詐欺は多いですよね。
弱っているときに手を差し伸べてくれる人がいたら、簡単に信用してしまうのでしょう。
「渡りに船」だと思っても、一度立ち止まって本当に信用するべきなのかを考えたほうがいいかもしれません。

「いちびり」とはお調子者という意味。
ここでは調子に乗った自分の行動を後悔しているのではないでしょうか。
「お上」とは死神のことだと考えます。
しかし、男は、少し調子に乗っただけで寿命がくなってしまうのは気がすまないと考えているようです。
この頃には、自分が自殺を考えていたことなどすっかり忘れてしまっているのかもしれませんね(笑)
地獄に落ちた男を死神は助けるのか

この部分は地獄に落ちた男をどのようにして苦しめてやろうかと考える死神の心が歌われています。
約束を破った男はその報いを受けて地獄で苦しめばいい、その泣きわめく顔を見たいという死神らしい考えですね。
落語「死神」には、蝋燭の火が消えて死んでしまった男が死神になり、自分の時と同じように呪文を教えるというエンディングが存在します。
「どうせ俺らの仲間入り」という歌詞はそのエンディングを指しているのではないでしょうか?
自分に呪文を教えた死神も元々は人間で、男と同じように金に目が眩み、地獄に落とされたのでしょう。
人間の救いようのない欲が表現されています。

男は地獄の中から、死神に向かって問いかけています。
「人間とは過ちを犯すものだろう、あんたは過ちを犯したことがないのか」と。
助けを求めている割には随分と横柄な態度ですよね(笑)
「あんなええもん」とは、死神を見分ける能力のことでしょう。
なんの努力もせずに、大金を得る事ができた男。
忠告を破ったのは自分の責任であるにも関わらず、「死神に能力を与えられたからだ」と責任転嫁しています。
とことん救いようがないですね。

そして、死神は全く反省しない男に愛想を尽かし、どこかへ行ってしまったようです。
そのときになって「妻子もいるんです」と情をひこうとする男。しかし、時既に遅しです。
救いの手を失い、地獄に取り残された男が嗅いだ匂いは後味の悪いものかもしれません。
しかし、自己中心的で、自分で責任を背負おうとしない態度を変えなかった男には、地獄に落ちるくらいの罰が必要ですよね。
ちなみに、この「死神」が収録されているアルバム「Pale Blue」の初回限定特典には、フレグランスが付属しています。
もしかしたら、男が嗅いだ地獄の匂いかもしれませんね(笑)
そんなことはないと信じますが…
死神は初めから男を地獄に落とすために取り憑いたのかもしれませんね。

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さいごに
いかがでしたか?
この曲は落語の演目である「死神」とリンクする内容だったため、その話を知らない人にとっては難しい内容になっていたと思います。
しかし、落語の死神を知ると、歌詞の意味がとてもわかり易くなりましたね。
いま、最も注目されているアーティストと言っても過言ではない米津玄師さん。
これからも活躍から目が離せません!