サカナクション「新宝島」の歌詞の意味を考察します。

新宝島 歌詞考察
漫画家と音楽家の夢の景色とは?
次と その次と その次と線を引き続けた
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
次の目的地を描くんだ
宝島
佐藤健さんと神木隆之介さん主演、大場つぐみさん原作、小畑健さん作画の漫画を原作とした実写映画「バクマン。」(2015年10月)の主題歌「新宝島」。
日本テレビ系列の特別番組「ゴールデンまなびウィーク」(2019年、2020年)のテーマソングやバラエティ番組「ナカイの窓」のエンディングテーマのほか、リクルート「タウンワーク」(2015年)、Spotify(2018年)、ソフトバンク「5G」(2020年)、TikTok(2022年)のCMソングにも起用されました。
1番のAメロでは「次の目的地(宝島)へ向かって、線を描く」というテーマが表現されています。
「バクマン。」の漫画家を目指す青年2人にとっては、文字どおり「線を描く」ことで手塚治虫さんのデビュー長編「新宝島」にたどり着きたいという思いが込められているでしょう。
さらにサカナクションおよび山口一郎さん自身を彷彿とさせる音楽家にとっても「ものづくり」という共通点があり、常に「次の目的地」を目指している様子が感じられます。
このまま君を連れて行くと
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
丁寧に描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧に描く
と決めていたよ
1番のサビでは、漫画家や音楽家が「迷ったり苦しんだりしながらも、丁寧なものづくりを心がける決意をしている」ことが伝わってきます。
ただ「誰が誰を(何を)どこに連れて行くのか?」についてはさまざまに解釈できるでしょう。
「バクマン。」になぞらえると、原作担当のシュージンこと高木秋人(神木隆之介さん)が作画担当のサイコーこと真城最高(佐藤健さん)を漫画家の道に誘ったこと、あるいはサイコーと声優志望の亜豆美保(小松菜奈さん)が結婚の約束をしていることも連想できます。
また「サカナクションが自身主催のイベントNFにリスナーを連れて行く」という意味も込められています。
次も その次も その次もまだ目的地じゃない
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
夢の景色を探すんだ
宝島
「夢の景色のような目的地(ゴール)にたどり着くまでには、いくつもの過程がある」という意味でしょうか。
たとえばサカナクションの場合、2015年7月に恵比寿リキッドルームで初めて開催された(NF #00)際の主催イベント名は「NIGHT FISHING」でしたが、2015年9月のlaunch party(NF #01)から「NF」に変わり、ビクターエンタテインメント内に自主レーベル「NF Records」も立ち上げられました。
こうした動きは、2016年11月に山口一郎さんが代表取締役となる「株式会社NF」設立につながります。
その会社設立もゴールではなく、「ロックバンドが持つ夢をアップデートしていく」という山口一郎さん自身の願いが「夢の景色を探す」に該当しそうです。
このまま君を連れて行くと
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌う
と決めてたけど
1番のサビの「描く」が2番のサビでは「歌う」、「決めていたよ」は「決めてたけど」に変わりました。
漫画家も音楽家もさまざまな葛藤を抱えていると思われますが、仲間と共に進む覚悟については違いがあり、「バクマン。」の登場人物の決意は揺るがず、山口一郎さんには迷いがあるのかもしれません。
「連れて行く」相手がリスナーの場合、山口一郎さんやサカナクションがどれほど決意を固め、実行に移しても、実際についてきてくれるかどうかはリスナー次第です。
あるいは「描く」のは漫画家、「歌う」のは音楽家とも限らず、漫画家も音楽家も決心が鈍ることはあると解釈することもできます。
丁寧の繰り返しの謎
このまま君を連れて行くよ
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うよ
やはり漫画家も音楽家も「描く」し「歌う」という意味だったようです。
「揺れたり震えたりしたって丁寧」というのは、「次と(も) その次と(も) その次と(も)」や「丁寧、丁寧、丁寧」のほか、「目的地を、目的地を」や「景色を、景色を」とさりげなく韻を踏みつつ繰り返すリズムもあらわしていたのではないでしょうか。
そう考えると、「音楽を連れて行く」とか「ロックバンドでありながらダンスミュージックも連れて行く」など、解釈の幅が広がるかもしれません。
「ブレることがあっても、共に進もう」というメッセージをリズムでも感じることができます。
それでも君を連れて行くよ
出典:新宝島 / 作詞・作曲:Ichiro Yamaguchi
揺れたり震えたりした線で
描くよ
君の歌を
「バクマン。」の観客層は高校生や大学生が多いということもあり、わかりやすい言葉で綴られていますが、「描くのは君の歌」というラストは漫画家と音楽家に「揺れたり震えたり」しながら融合したような詩的な余韻が感じられるのではないでしょうか。
サイコー&シュージンの共同ペンネーム亜城木夢叶には「亜豆を含む、3人の夢を叶える」という意味が込められているので「亜豆の思いを描く」とか、サカナクションおよび山口一郎さんが「リスナーの歌を描く」と解釈することもできます。
あるいは「音楽の歌を描く」など、さまざまに想像がふくらむところがサカナクションらしいかもしれません。

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さいごに
「新宝島」は、お笑い番組「ドリフ大爆笑」(1977年2月~1998年4月)風のMVや山口一郎さんも出演するカラオケ映像もおもしろいですね。
漫画家や音楽家など、ものづくりに携わる人だけでなく、誰しも目標や課題、やるべきことをひとつずつクリアしながら進むのが人生でしょう。
実際にはシリアスなことでも、コメディタッチで描いたり歌ったりすると楽しくなるかもしれません。
「丁寧、丁寧、丁寧」などの反復のリズムが心地よく、リスナーそれぞれの「新宝島」に導いてくれるのではないでしょうか。