今回は、ヨルシカの新曲「左右盲」の歌詞を考察していきたいと思います。
7月29日公開の映画『今夜、世界からこの恋が消えても』の主題歌に決定した本楽曲。
「だから僕は音楽を辞めた」や「花に亡霊」など、物語性のある楽曲が人気のヨルシカですが、今回の楽曲には、どのような想いが込められているのでしょうか?
映画の内容、楽曲コメントと合わせて見ていきましょう!
映画『今夜、世界からこの恋が消えても』
7月29日公開の、道枝駿佑さん(なにわ男子)×福本莉子さんW主演映画。
一条岬先生による同名小説を原作としており、1日で記憶が消えてしまう彼女とのラブストーリーが描かれます。
今をときめく若手俳優をキャスティングした話題作。
映画の公開が楽しみですね。
楽曲コメント
ヨルシカのn-bunaさんのコメントを紹介します。
相手の顔や仕草を少しずつ忘れていくことを左右盲になぞらえて書いた楽曲です。オスカー・ワイルドの「幸福な王子」を歌詞のモチーフにしています。
映画版とリリース版で楽曲のアレンジが少し変わっています。映画版では世界観に合うよう映画音楽を統括されている亀田誠治さんと相談しながら、冒頭の生活音的なサンプリングを減らして優しくアコギを聞かせる編成にしたり、最後のサビに男女でのコーラスを入れたり。
よりエンディングに寄り添った、少しドラマチックなアレンジになっています。そのちょっとした違いも映画の中で楽しんでもらえたら幸いです。
オスカー・ワイルド「幸福な王子」は、金箔や宝石をまとった王子の銅像が、ツバメに頼んで、貧しい人に自分に付いている金箔や宝石を分け与える物語です。
装飾品が剥がれて、だんだんとみすぼらしくなっていく王子の姿と、記憶が無くなっていく主人公が重なりますね。
どんな歌詞なのか気になります!
左右盲 歌詞考察
左右盲とは、左と右を瞬時に判断することが難しい人のことを指します。
病気や発達障害ではなく、感覚的に理解が出来ないのです。
運転時、ナビから言われる左右を間違えてしまったり、視力検査で、左右どちらが空いているのか、見えているのに答えるのに時間がかかってしまったりする人は、左右盲かもしれません。
歌詞の中で、どう表現されているのか楽しみですね。
映画のネタバレを含みます。まだご覧になっていない方は十分ご注意ください。
君の右手は頬を突いている
僕は左手に温いマグカップ
君の右眉は少し垂れている
朝がこんなにも降った一つでいい
出典:左右盲 / 作詞・作曲:n-buna
散らぬ牡丹の一つでいい
君の胸を打て
心を忘れるほどの幸福を
一つでいいんだ
右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を
一人行くその静けさを
その一つを教えられたなら
冒頭から左右に関するワードが登場していますね。
”朝がこんなにも降った” という歌詞から、窓の外では、朝から雨が降り続いていることが分かります。
ここで、”君” について考えてみましょう。
映画のストーリーにおける君は、一日で記憶が消えてしまう「真織」です。
楽曲コメントにある「幸福な王子」では、幼いマッチ売りの少女など、王子が自らの装飾品を渡す様々な貧しい人が登場しますが、彼らのことをひっくるめて “君” と表現しているように思いました。
様々な理由で、未来に希望を持てずにいる人達。
そんな彼らの胸を打ち、嫌なことを忘れられるような幸福を届けたいという、主人公の願いが歌われているのではないでしょうか?
歌詞に登場する “牡丹” は、百花の王とも呼ばれており、モチーフにした「幸福の王子」と掛けているのかもしれませんね。
主人公自身、右も左もわからない君との道を、手探りで進んでいる状態ですが、なんとか君の心に響くような何かを成し遂げたいという、強い想いが込められているように感じます。
君の左眉は少し垂れている
上手く思い出せない
僕にはわからないみたい
君の右手にはいつか買った小説
あれ、それって左手だっけ一つでいい
出典:左右盲 / 作詞・作曲:n-buna
夜の日差しの一つでいい
君の胸を打つ、心を覗けるほどの感傷を
一つでいいんだ
夏に舞う雹のその中も手探りで行けることを
君の目は閉じぬことを
冒頭の歌詞と比べてみると、左右が混乱していることが分かります。
右手で頬杖をついていた君は、右手で小説を持つことは出来ないので、主人公が左と右を間違えていることが分かります。
このパートでは、左右以外にも、ちぐはぐになっている部分が見られます。
“夜の日差し” “夏に舞う雹”
これは、一日ごとに記憶がなくなる真織の混乱を表しているのではないでしょうか?
記憶が曖昧でちぐはぐな真織を前に、主人公・透は、真織の記憶に残るほどの幸せを届けたいと再び決意しているように思いました。
“君の目は閉じぬことを”
幸福の王子は、目に埋められていたサファイアを渡してしまうことで、盲目になってしまいます。
自分の目は閉じても、君の目は閉じないでいて欲しい、前を向いて未来に進んでいって欲しいという願いが込められているように感じます。
僕の身体から心を少しずつ剥がして
君に渡して その全部をあげるから
剣の柄からルビーを この瞳からサファイアを
鉛の心臓はただ傍に置いて一つでいい
出典:左右盲 / 作詞・作曲:n-buna
散らぬ牡丹の一つでいい
君の胸を打て
涙も忘れるほどの幸福を
少しでいいんだ
今日の小雨が止むための太陽を
「幸福の王子」の要素が多く含まれているシーンです。
自らの装飾品を貧しい人に分け与えていた王子。
やがて、全ての装飾品が剥がれ、みすぼらしい姿になってしまいました。
最後に残ったのは鉛の心臓。
この心臓にも重要な意味があります。
原作小説からは、歌詞とのつながりが、より鮮明に見えてきます。
記憶が無くなる真織と幸せな日々を過ごしていた透でしたが、心臓があまり良くない状態であると分かります。
真織の親友・泉に、そのことを打ち明ける透。
『神谷透が心臓突然死で亡くなったのは、その翌日の夜のことだった。』
なんと透は、泉に話をした翌日に亡くなってしまうのです。
泉は、前日に聞かされたばかりの透の遺言を思い出します。
「もし僕が死んだら、日野の日記から、僕のことを消去してほしいんだ」
真織と透の関係を繋いでいる日記から、自分の存在を消し去って欲しい、そうすれば、一日で記憶が無くなる真織は、自分の存在を無かったことにできるし、死を知って悲しまずに済む。
透は、残された真織のことを想い、恋人の記憶から自分が消えることを望んだのでした。
人知れず、自らの装飾品を分け与えた幸福の王子とリンクする部分がありますね。
少しでいい
出典:左右盲 / 作詞・作曲:n-buna
君の世界に少しでいい僕の靴跡を
わかるだろうか、君の幸福は
一つじゃないんだ
右も左もわからぬほどに手探りの夜の中を
君が行く長いこれからを
僕だけは笑わぬことを
その一つを教えられたなら
真織の日記から、自分に関する記憶を全て消し去って欲しいと頼んだ透。
はじめは、その遺言を実行出来ずにいた泉でしたが、毎日、顔もわからない彼氏の死を悲しむ真織の姿を見て、透の存在を消すことを決意します。
透に関する記憶を消してから、日毎に回復していく真織。
「なんだろう……何か、とっても大切なことを忘れている気がするんだけどさ。思い出せないや。ま、当たり前か。毎日、その日の記憶がなくなっちゃうんだもんね」
“君が行く長いこれからを 僕だけは笑わぬことを その一つを教えられたなら”
この歌詞には、透が自分の死後も続いていく真織の人生を案じている気持ちが込められているように感じます。
何を食べても味がしないんだ
出典:左右盲 / 作詞・作曲:n-buna
身体が消えてしまったようだ
貴方の心と 私の心が
ずっと一つだと思ってたんだ
ラストは、真織の目線で描かれています。
“何を食べても味がしないんだ 身体が消えてしまったようだ”
透の死の記憶はないものの、大きな喪失感を抱えて毎日を過ごしている真織の様子が描かれています。
“貴方の心と 私の心が ずっと一つだと思ってたんだ”
ずっと一緒に過ごせると思っていた透が、突然居なくなってしまった寂しさ。
記憶は無くても、その存在を感じ取っていた真織の切ない気持ちが伝わってきます。
真織は、透との記憶を思い出すことができるのでしょうか?
感動のラストは、映画でご覧ください。
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さいごに
いかがでしたか?
映画「今夜、世界からこの恋が消えても」は、7月29日公開です!
劇場で「左右盲」が流れるのが楽しみですね!
僕の人生は無色透明だった。真織と出会うまでは――。
クラスメイトに流されるまま、彼女に仕掛けた嘘の告白。しかし彼女は“お互い絶対に本気で好きにならないこと”を条件にその告白を受け入れた。そうして始まった偽りの恋。やがてそれが偽りとは言えなくなったころ――僕は知る。
「病気なんだ私。前向性健忘って言って、夜眠ると忘れちゃうの。一日にあったこと、全部」
彼女はその日の出来事を日記に記録して、朝目覚めたときに復習することで何とか記憶をつなぎとめていた。
その日ごとに記憶を失ってしまう彼女のために、日記が楽しい出来事で溢れるようにと、一日限りの恋を積み重ねていく日々。
しかし僕には真織に伝えていないことがひとつだけある。
いつかこの記憶を
今朝、
毎日 なくてはならない。
だから僕は、“ある作戦”を立てた。
映画公式サイトより