星野源さん「サピエンス」の歌詞の意味を考察します。

サピエンス 歌詞考察
機械になりたい?
独りに浮かんだ
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
滲む音楽が
貴方の鼓膜を揺らした
機械になりたいんだ
優しさを持った
加速するハットは
ベースを連れる
「サピエンス」は全14曲のアルバム『POP VIRUS』の10曲目に収録されていて、アニメ「lain」にインスパイアされた7曲目「Present」の歌詞に出てくる「機械」に呼応した内容になっているようです。
「ホモ・サピエンス」は「ヒト」をあらわす人類学上の学名で、「サピエンス」は「賢い」という意味のラテン語ですが、曲名は「機械に対する人間」というニュアンスで用いられているでしょう。
「孤独を感じ、機械になりたがっている貴方」は、星野源さんが自分自身を鏡で見つめるように俯瞰しているイメージでしょうか。
それでも「優しい音楽が聴こえてくる」らしく、ドラムのハイハットシンバル(ハット)がテンポを速め、ベースが追いかける様子が伝わってきます。
実際のリズム隊は、ドラムが打ち込みではなく生楽器の生演奏、ベースがエレキベースではなくシンセベース(シンベ)です。
ドラムとエレキギター以外は、STUTS(スタッツ)さんのサンプラーMPCをはじめ、シンベ、エレクトリックピアノ(エレピ)のウーリッツァー、ガジェットシンセのOP-1、ポリフォニック・アナログシンセ(JUNO-60、JUNO-106、PROPHET-5)という編成。
打ち込み(プログラミング、DTM、DAW)のみのクラブミュージックやボカロなどほど「機械」的ではありませんが、オーガニックなピアノやアコギやコントラバスなどが使われているわけではなく、「ビンテージの電子音楽」にこだわっている印象です。
歌詞を反映するように、サウンドでも「人間と機械の葛藤」が表現されているのではないでしょうか。
ふと足を止めた
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
些細なユリーカ
誰かの足もと照らした
機械になれないんだ
僕たちはいつも
見えてる天竺
目指しながら
「ユリーカ」は「発見」、「天竺(てんじく)」は「理想郷」といったニュアンスでしょう。
「些細な発見がうつむく人の足もとを照らし、上を向く(希望を抱く)きっかけになることもあるから、機械になれない」と解釈できます。
あれこれ悩むと「感情を失いたい」と思うこともあるかもしれませんが、「優しさ」に触れると「心を捨てることはできない」と思い直すのではないでしょうか。
ただ 馬鹿馬鹿しさの中
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
歌い出す
すでにボーカロイドやアンドロイドといった「機械も歌う」時代に突入していますが、「感情を伴った心と共に歌う」ことができるのは「サピエンス=人間」の特権ともいえるでしょう。
どれほど「馬鹿馬鹿しい」と感じる出来事があっても、「歌い出す」ことによって前に進めるような気がします。
ああ 僕らは
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
いつまでも間違ったまま
世界を変えて走り出す
ふざけた愛しみを味わったまま
やめない意味は
いつの日も寂しさだ
1番のサビです。
もしかしたら人間は「知恵(サピエンス)」を手に入れたことが「間違い」だったのかもしれませんが、それでも「世界を変えるような進化」を続けてきました。
音楽も「アコースティック演奏、身体性(フィジカル)を伴った楽器演奏」から「エレクトリック(電気的)、エレクトロニック(電子的)、デジタルなサウンド」へと進化するにつれ、それぞれのメリットとデメリットをどのように融合させるかが手腕の見せどころになっています。
「人間と機械」あるいは「人間と進化」のあいだには「ふざけた愛(かな)しみ」が横たわっているとしても、「寂しさ」を原動力として「生きることや音楽をやめない」というニュアンスでしょう。
泥水でも花は咲く
花がひらく
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
君がわらう
偶にもらう
愛をもらうよ
「サピエンス」はNTTドコモ「星プロ 青春のドまんなか・スタート」編のCMソングなので、青春時代にさまざまな「間違い」をしでかしながらも人間らしく成長する様子が描かれているのでしょう。
思春期は孤独や矛盾を感じやすい年頃ですが、たとえば音楽などの才能が開花したり、恋愛を意識するようになったり、「馬鹿馬鹿しさ」のなかにもかけがえのない思いが詰まった日々を過ごす人が多いのではないでしょうか。
ただ 空々しさの中
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
夢を見る
「空々(そらぞら)しい空虚さのなかにも、夢や希望を見出すことはできる」という意味かもしれません。
あるいは「孤独に浸って足もとばかり見つめていないで、空を見上げると夢を描くことができるはず」といった応援の言葉としても受け取れます。
星野源さん自身、孤独な青春時代に夢を見るきっかけとなったのが音楽や愛だったのではないでしょうか。
ああ あなたは
出典:サピエンス / 作詞・作曲:星野源
いつの日も間違えたまま
泥水蹴って走り出す
ふざけた愛しさを抱えたまま
転んだ後に
目が合って
笑うだろう
1番のサビが繰り返された後に続くラスサビです。
「愛(かな)しみ」が「愛(いと)しさ」、「貴方」が「あなた」に変わったところが進化に相当するでしょうか。
たとえば携帯電話という「機械」も進化を続けていますが、愛情のこもった道具になるかどうかは人間次第でしょう。
「泥中の蓮(でいちゅうのはす)」ということわざもあり、どのような環境でも美しい花を咲かすことはできるはず。
失敗しても笑い合える日々を過ごしたいものですね。

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さいごに
「機械になりたくてもなれない人間」という世界観が絶妙に表現されたサウンドになっている「サピエンス」。
星野源さんが自分自身の青春時代を振り返りつつ、「青春のドまんなか」にいる若者と共に「僕らの歌」を歌っている印象でした。
機械的な「貴方」から人間らしい「あなた」へと深化することができたのではないでしょうか。