セカオワが「世界の終わり」から「SEKAI NO OWARI」へとバンド名の表記を変えたのは、全3曲ともリード曲のメジャーデビューシングル「INORI」をリリースした2011年8月17日でした。
そのうちの1曲が「不死鳥」。
人間とロボットのロマンチックなラブソングですが、タイトルは何を表しているのでしょうか。
Fukase(深瀬慧)さんが作詞、Nakajin(中島真一)さんが作曲、SEKAI NO OWARIが編曲した「不死鳥」の歌詞の意味を考察します。
不死鳥 歌詞考察!
人間とロボットの掛け合いになっている
SEKAI NO OWARI-SEKAOWA=INORI、バンド名のローマ字表記からセカオワを差し引くと「祈り」になります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて願いが込められたタイトルで、どっぷりラブソングの「不死鳥」もこうした時代的な背景を踏まえると深みが増すでしょう。
冒頭では、主人公の「僕」は人間ですが、恋に落ちた相手の「君」は不死身のロボットであるという設定が描かれています。
Aメロの語り手は主人公の「僕」でしたが、Bメロの語り手は不死身のロボットである「君」です。
つまり、男性の「僕」と女性の「君」の掛け合いになっていて、BメロではFukaseさんが女性の心情を代弁しているということ。
女性の命には限りがないので、どれだけ時間がかかっても構わないなら、いつかは男性と再会できるでしょう。
不死身のロボットなら、会いたい人と会えるのは当たり前のことに過ぎません。
だからこそ命に限りがある人間になって、寿命を迎えるまでの「制限時間内」に男性と再会し、当たり前ではない「奇跡」を体験したいという話です。
サビの語り手は、主人公の男性に戻っています。
「不死鳥」とは、その血を飲むと永遠の命を授かるという伝説の「火の鳥」のことです。
想像上の生き物なので実際には存在しません。
それでも人間の男性は、ロボットの女性と同じになりたいと願っています。
死後の世界があるのかどうかも確認することはできませんが、もし「天国」があるとしても、不死身の女性はいつまで経っても訪れることがありません。
もし人間の男性が亡くなったら、ロボットの女性とは会えなくなるので、男性のほうが女性に合わせて永遠の命を授かり、ずっと一緒にいたいと望んでいます。
永遠の命に込められた祈り
男性目線のAメロです。
ロボットを作り出したのは人間なので、ロボットの創造主(神)は人間とも言えるでしょう。
ただ、宇宙の創造主は「神様」なのかどうかも確認することはできません。
しかし、あらゆる生物の命に限りがあることは事実で、それは「宇宙のルール」とも考えられます。
もし「神様」が存在するなら寿命を設けるのは残酷な話であり、「ロボットの神」である人間に死後の世界があっても、それは「天国」ではなさそうだという展開です。
女性目線のBメロです。
「なぜ何もない無ではなく、何かが存在するのか」という哲学の一分野、形而上学の「究極の問い」とか「存在の謎」と呼ばれている存在論の問題が取り上げられています。
寿命がある人間は永遠の命を望み、不老不死のロボットは限りある命や変わりゆく自然を慈しむという、ないものねだりのような状況です。
「万物は流転する」というギリシャの哲学者ヘラクレイトスが提唱した概念とも通じるところがあるでしょう。
1番のサビでは「天国」でしたが、2番のサビでは「地獄」に変わっています。
「天国」であれ「地獄」であれ、死後の世界にはロボットは存在しないので、「僕」は永遠に生きるという意味ですね。
この楽曲に込められた祈りは、やはり「不死鳥よ~」の部分でしょう。
Fukaseさんが初めて取り組んだラブソングであり、実体験が元になっているそうですが、ロボットの彼女という点はフィクションの設定のはずです。
「永遠の命を願う」という祈りは、東日本大震災の影響が大きいと考えられます。
限りある命を大切に生きよう!
ロボット目線で考えると、永遠に生き続けるのは想像以上に大変なことなのかもしれません。
限られた時間を懸命に生きる人間のほうが「美しい」という話でしょう。
人間には当たり前に訪れる寿命も、ロボットにとっては「魔法」のように奇跡的な出来事です。
お互いにないものねだりをしていた相手側の立場に立ってみると、自分の当たり前が奇跡のようにありがたく感じられるのではないでしょうか。
人間の男性も、とうとうロボットの願いを受け入れ、限られた命を尊ぶようになりました。
東日本大震災を踏まえると、「形あるものは~」という歌詞が身に染みますね。
パッと輝いて消える花火も、巡る季節も、人生の象徴です。
永遠の未来を望むより、限られた時間や命を大切にして、奇跡的な出会いに感謝しながら「今」を生き続けたいものですね。
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さいごに
「不死鳥」はメジャー1st(通算2nd)アルバム「ENTERTAINMENT」(2012年7月)や、ベストアルバム「SEKAI NO OWARI 2010-2019」(2021年2月)でも堪能できます。