今回はボカロPのDECO*27さんが作詞作曲し、初音ミクが歌う「乙女解剖」の歌詞考察をしていきます。
不穏なタイトルですね。
「乙女解剖で遊ぼうよ」という歌詞が繰り返されますが、「解剖」と「遊ぶ」の意味があまり簡単に繋がらず、ホラーなのかと身構えてしまいます。
タイトルの意味を考察するため、言葉の意味を辞書で引いてみます。
「乙女」とは、結婚をしていない女性のこと。
一方、「解剖」を調べてみると、二つの意味が出てきます。
昭和~平成中期くらいの学校では、②のような使い方をする場面も多くありました。
この②の意味を意識すると、曲から受ける印象が大きく変わります。
それでは、考察を進めていきましょう。

乙女解剖 歌詞考察
相手を想う気持ちの強さ
乙女解剖であそぼうよ
ドキドキしたいじゃんか誰だって
恥をしたい 痛いくらいが良いんだって知った
あの夜から
先ほどの「解剖」の意味を意識すると、主人公の少女は、好きな相手と身体の関係を持っていることが分かります。
好きなんだからあの夜と同じことをしようよ、また身体の関係を持とうよ。
そんなふうに、相手を誘っています。
こんばんは、今平気かな?
特に言いたいこともないんだけど
もうあれやこれや浮かぶ“いいな”
君が居なくちゃどれでもないや
仮面同士でイチャついてら
MVと同様、ここでは相手に電話をかけているのでしょう。
特に言いたいことも無いのに電話をかけてみたり。
”いいな”も「君が居なくちゃどれでもない」、君が居なければ良いものも良いと思えないと思ったり。
少女が相手を思う気持ちはかなり強いことが分かります。
また、夜中に電話をかけていることから、「仮面同士でイチャついてら」は、街行くカップルを見た時の少女の思いであると考えられます。
それがどういう気持ちなのかは、続く部分を読むと伝わってきます。
それでも、望まない関係
寸寸 恋と表記せず
気持ち vs 退屈はPK戦
そうなにもかもに迷子がおり
泪流してSOSを
半目開きで娘娘する
寸寸とは、物事をずたずたに切り付ける様子のことです。
解剖にも繋がる言葉ですね。
この曲の中では解剖されるのが乙女であることから、ずたずたに切りつけられているのも乙女でしょうか。
そう考えると、「寸寸 恋と表記せず」とは、
少女は傷つけられ続けており、これは恋ではない。
という意味に取ることができます。
恋ではないならば何なのか。
「迷子」という言葉から、少女は自分の居場所が分からなくなっており、自分を見てくれる人を欲しているように感じました。
最初の部分で相手を身体の関係に誘っているのは、そうしないと誰も自分を見てくれないから。
心ではなく、身体だけしか求められない関係。
それはまさに、恋とは表記しない偽物。
先ほどの「仮面同士でイチャついてら」は、道行くカップルを見て自分たちの関係を自嘲していたのでしょう。
周りに見える恋愛はみんな偽物。
だけど、自分たちはもっとひどく偽物。
「気持ち vs 退屈はPK戦」は、もう傷つけられたくない気持ちと、誰にも見てもらえない孤独は嫌だという気持ちがせめぎ合っている様子です。
油断すると、すぐに勝敗がひっくり返ってしまう。
つまり、すぐに相手に流されてしまう自分を示していると思われます。
また、最後の「娘娘する」について。
昭和~平成初期の隠語で、性行為を行うことを「ニャンニャンする」と言っていた時期もありました。
この歌詞のテーマである「解剖」と同様の隠語ですね。
「泪流してSOSを」とある通り、少女は相手を性行為に誘っているものの、それが決して自分の望んだものでないことが伝わってきます。欲しいのは性行為ではなく、自分を見てくれる人の存在。
自分を見てほしい、けれど伝わらない気持ち
こんな早くにごめんね
起こしちゃったよね
今大丈夫?
君が別の人のことを好きになるって夢を見たんだ
否定してほしい ねえ愛して?
夜中の電話の後、起こすような時間にかける電話。
これが恋愛ではないことを知りながら、それでも相手から逃れられない状況は相手に対する依存が見て取れます。
どんな手段を使っても、自分のことを見てほしい。
しかし、心では繋がっておらず、言葉を尽くしても相手には届かない。
それはMVの電話に表れています。
ここでは糸電話で話していますが、相手の電話とを繋ぐ糸が垂れ下がっています。
どんなに大声で話しても、糸電話はぴんと張らないと声を伝えることが出来ない。
だから少女の声は相手に届きません。
朝と夜2回分
君に撒くスパイス
思い込みの狂気 効果はない
ねえ最近冷たいね
先ほどの部分にある「否定してほしい」→「ねえ愛して?」は、明らかに身体の関係に誘う言葉です。
しかし、身体だけで無理やり繋ぎ止めるようないびつな関係は長く続きません。
徐々に関係が冷え始めているのを悟っており、
朝と夜の2回の電話で、関係を何とか修復したい、また自分のことを見てほしいと、様々な言葉を相手にかけます。
やっぱ
乙女解剖であそぼうよ
身を焦がす感情をヌき合って
もうバカみたい 「嫌嫌」がたまんないの
誤解は解けるかな
身を焦がす感情をヌき合って。
生々しい表現に隠れていますが、これは、お互いに何かを抜いているということ。
少女は身体の関係で、相手を身体的に満足させる(精神的な満足であれば、「ヌく」とは言いませんね)。
相手が少女から抜いているのは、書いてある通り、身を焦がす感情でしょうか。
財布を抜き取るとか、レジからお金を抜くというような感じですね。
少女の強い好意を利用して、心を良いように利用する。
ヌき合うという言葉とは裏腹に、描かれているのは心のすれ違い。
乙女解剖であそぼうよ
ドキドキしたいじゃんか誰だって
恥をしたい 痛いくらいが良いんだって知った
あの夜みたいに
最後のサビは最初とほぼ同じですが、
ラスト1行だけが「あの夜みたいに」に変わっています。
あの夜みたいに乙女解剖で遊びたい。
それは、もうあの夜とは違うこと、同じように遊ぶことが出来ないことの表れ。
最初から心は満たされず、望まない関係でしかなかった。
そのことに気づいてしまったら、元のように相手を想い続けるのは難しいのかもしれません。

1ヶ月無料で音楽聴き放題!
通常880円/月のAmazonMusicUnlimitedが今なら1ヶ月で体験可能!
この機会に聴き放題サービスをお試ししてみよう!
いつでも解約OK!
さいごに
不穏なタイトルと、マンガ風に作られたMVが目を引く「乙女解剖」。
しかし、その裏には少女の悲しみが綴られていました。
生々しい表現に隠れた繊細な感情。
ポップさに隠れた苦しみ。
その二面性が、少女の葛藤を上手く描いているように感じました。
歌詞と曲とMVをじっくり見て頂ければ、少女の見ている世界を覗き込むことが出来るかもしれません。
共感できる部分も多いのではないでしょうか。
① 生物を切り開き、内部構造を観察すること。
② ①の意味から転じて、女性を裸体にすること。(隠語大辞典より)