今回は『シン・エヴァンゲリオン劇場版?』のテーマソングに起用された宇多田ヒカルの『One Last Kiss』の歌詞を考察していきます!
これまで14年にわたり『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に楽曲提供をしてきた宇多田ヒカル。
制作のたびに大まかなプロットのみを聞いて楽曲制作に入っていたそうですが、本楽曲は初めて「台本を読んで最後のシーンを思い浮かべながら、曲の第一音(イントロのシンセ)からプログラミングと作曲を始めた」のだそう。
そんな制作背景のある『One Last Kiss』の歌詞を早速見ていきましょう!
『One Last Kiss』エピソード
『One Last Kiss』のテーマは「喪失」。
宇多田ヒカルは2013年に母親・藤圭子を亡くし、その悲しみを抱えることになりました。
そんな中『One Last Kiss』の制作を通して見えてきたものがあるそうです。(以下、インタビュー文)
「One Last Kissの制作を始めて、ようやく理解できました。重要なのは、悲しみを捨てようとするのではなく、常にそれを抱えているということを受け入れること。痛みはまだ残るけれど、それでいいのだと思います。喪失であったものが贈り物になったのです。」
喪失を贈り物だと言い切れる力強さに、励まされる人も多い楽曲だと思います。

『One Last Kiss』歌詞考察
世界的な美しさを超越するもの

”ルーブル”とはルーブル美術館のこと。主人公は世界的に有名な場所を訪れても”なんてことなかったわ”と言います。それは”私だけのモナリザに出会ってたから”の歌詞につながります。
主人公は既に、自分にとっても最も大事な存在に出会っていて、その喜びに比べたら本物のモナリザの絵画なんて大したことなかったのでしょう。「自分だけのモナリザ」に既に会えているのだから。
しかし”喪失の予感”という歌詞から、主人公は既に「あなた」を喪失しているのがうかがえます。
初めて「あなた」に出会った瞬間の喜びに比例して、「あなた」を失った時の痛みがどれほど強いものになるのか、主人公ははじめから不穏な予感を抱いていたのです。
あなたが思っている以上にあなたを愛している

ここではタイトルの『One Last Kiss』の意味が紐解かれます。
キスは好意や愛情を表すサイン。
しかし「あなた」と別れることになった主人公は、最後にキスを求めているのが分かります。
今までたくさんの思い出を作ってきたけれど、別れる前に最後の思い出を重ねたいと思っているのです。
”I love you more than you’ll ever know”は「あなたが思っている以上にあなたを愛している」という意味。でも、こんなにも愛しているにも関わらず、主人公は別れを迎えてしまいます。
深く悲しいけれど、「あなた」を大切に思っていたのを忘れないためにもキスを求めているのです。
愛することの不条理さ

好きな人との写真は欲しいものですが、「あなた」は写真が苦手な人のようです。
でも主人公は”でもそんなものはいらないわ”と気に障る様子はありません。それは写真以上に「あなた」の記憶が心に残っているからです。
しかし、そう言えるのは主人公の強気な発言でした。本当は”寂しくないふりをしてた”と綴られます。
主人公にとって「あなた」との出会いは至上の喜びであり、人生の重要な出来事でした。
失ってしまった今、相応の傷が主人公の胸に刻まれています。
愛する人が存在するということは、いつか別れの現実を迎え入れなくてはいけないということ。
愛することの不条理さが胸を覆う一節です。
最後のキスをしてくれませんか?

“can you give me one last kiss?”は「最後のキスをしてくれませんか?」という意味。
二人の思い出の証として最後のキスを求めています。
”忘れたくても忘れられないほど”という言葉からは、主人公にとって「あなた」が最愛の人であったのが分かりますね。
最期まで忘れられない人

主人公は、この世が終焉を迎えても、歳を重ねようとも、愛する人忘れることはないだろうと予想しています。それほどまでに主人公の心に存在感を残した「あなた」の大きさが分かりますね。
ラストの”吹いていった風”は、「あなた」の比喩だと言えるでしょう。
風は吹いていったらそのまま去ってしまうだけ。目にも見えないので追いかけても決して届きません。それはもう二度と会えない「あなた」を示しているようですね。
たとえもう会えなくなっても、生きている限りずっと「あなた」の影を追いかける主人公の姿が想起されます。

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おわりに
喪失の光りと影を書いた『One Last Kiss』。愛しくも切ない愛の歌です。
映画の内容にも合っていますが、それを抜いても誰もが人生で経験するような痛みが描かれていて共感度の高い本楽曲。ぜひ聴いてみてください。