クリープハイプ「お引っ越し」の歌詞の意味を考察します。
5thアルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」(2018年9月)の収録曲。
尾崎世界観さんが作詞・作曲した「お引っ越し」の歌詞をチェックしましょう。

お引っ越し 歌詞考察!
同棲カップルの別れ

気心の知れた同棲カップルがケンカしたようです。
泣けば心配してくれるとわかっているから泣く、という予定調和のような関係性なのでしょう。
悪いことをしても泣けば許されると思っている子どもみたいな甘えが感じられます。
ところがいつもの調子ですねて「出て行く」と言ったのに、相手が引き止めてくれないというイレギュラーなことが起きました。
本気で同棲を解消するつもりはなく、離れようとすれば追いかけてくれると信じ込んでいたのでしょう。
しかし引き止めてもらえなければ、本当に出て行かなければいけません。

これまで何度も離れたり仲良くなったり、「やり直す」行為を繰り返してきたのでしょう。
恋愛初期なら、本音とは裏腹な「素直じゃない」態度さえ愛しいものかもしれません。
ただ、常に駆け引きされ、甘えを受け止める寛容さを要求されると疲れますね。
ほんの少しヤキモチを妬くとか、時折すねるくらいならかわいげはあるものの、「素直じゃないところも好きと言ったはず」と開き直るほど思いやりがない場合は問題です。

本人は「馬鹿」なことをしたとわかっているというか、些細な強がりで別れる流れになり、後悔していても言い出せず、泣く泣く別れるしかない物語が描かれています。
「ごめん。出て行くなんて嘘」というのが本音で、そう言えば「やり直せる」かもしれませんが、そのような「賢い」やり方は柄でもないと思っているのでしょう。
すねて言い出した言葉を引っ込められない愚か者を貫こうとしています。
何とも「馬鹿」げた話ですが、結局タイトルの「お引っ越し」につながり、準備を始めました。
「ダンボール」の重量を言葉の「軽さ」になぞられているところが文学的ですね。

「大きくて~荷物」は「未練」や「愛する気持ち」などのメタファーでしょうか。
相手を「愛する気持ち」は今でも「大きい」けれど、「未練」があるのは器の「小さい」話など、矛盾が混在する「素直じゃない性格」が発動しているようです。
あるいは語り手がこれまで相手に示してきた「馬鹿らしさ」や「素直じゃない性格」こそ、相手以外の「誰にも通用しないやっかいなもの」(どこにも入らない荷物)だから「置いて行く」ということかもしれません。
語り手にしてみると、「馬鹿」で「素直じゃない」素のままで甘えられるほど、相手に頼りきっていた、愛していたという考え方になりそうです。
置いて行く荷物は未練?

虫歯などの「治療」には歯科に通う必要があるので、途中だったということはやはり本気で別れるつもりはなかったのでしょう。
せっかく物理的な「近道」を発見しても、人生の遠回りになってしまいました。
「ポイントカード」のくだりは、これまで積み重ねてきた努力が無駄になったというか、2人の関係性がこわれたことを表しているでしょう。
その流れで自分自身が「コワレモノ」になったという表現につながります。
「細心の注意を払った」のに「取扱注意」になったというくどさもご愛敬。
歯科の「次回予約」までしていたところが切ないですね。

引き続き「お引っ越し」の準備です。
この期に及んで「手伝って」と頼む厚かましさを持ち合わせているところも語り手らしい「馬鹿」らしさなのか、あるいは「馬鹿」を貫き通しているのかもしれません。
部屋にある物の所有者が2人のうちどちらか「忘れる」ほど深いつき合いで、本当は今後もずっと一緒に暮らすつもりだったことが伝わってきます。
このまま「馬鹿」な自分を貫き通し、「馬鹿」げた別れを遂行するためには、相手のことを「忘れてしまえばいい」というか、「忘れなければならない」といったやるせない心の内も表現されているでしょう。
「ダンボール」の重量になぞらえた言葉は、1番では「軽かった」のに2番では「重く」なりました。
勢いで別れることになり、最初は軽口を叩きながら軽々と「ダンボール」を積み上げていたのに、次第に実感が伴ってきて「ダンボール」も言葉も「重く」なったようです。

「荷物=この(心の)隙間」という結末なので、「未練」や「相手」と捉えるのが妥当でしょうか。
「ダンボール」の中身は「荷物」ですが、心の中身は「相手」。
その「相手」を「置いて行く」ことになり、「心=ダンボール」に「隙間=未練」が生まれました。
「荷物=未練」が「大きい」場合、「心=ダンボール」から「溢れ出して」音が鳴っているイメージです。
「荷物=未練」が「小さい」場合、「心=ダンボール」が空っぽに近い状態になり、わずかに残った何かの動き回る音(馬鹿馬鹿しさがカタカタ?)が響いているのでしょう。
何とも虚しい「お引っ越し」でした。

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さいごに
物語性豊かに不本意な別れが描かれた「お引っ越し」。
大切な存在を失わないためには、相手を思いやる素直さが必要という反面教師になったのではないでしょうか。