この記事では前作から2年を経てリリースされた東京事変の名曲『能動的三分間』の歌詞を考察していきます！
「ウォータリングキスミント」のCMソングにも起用され、椎名林檎がじゅるりと唇を鳴らしていたのが印象的だったのを覚えている人も多いのではないでしょうか？
『能動的三分間』にまつわるエピソード
①解散を示唆していた？
『能動的三分間』は東京事変の解散をほのめかしてる楽曲だとも言われています。
その理由は解散時、椎名が発表したコメントが『能動的三分間』のラストを和訳したものだったからです。それは
「我々が死んだら電源を入れて君の再生装置で蘇らせてくれ さらばだ！」
というものでした。
リリース時期と解散時期は3年と離れていますが、グループや「音楽そのもの」へ強い意志が感じられる楽曲です。
②楽曲は「3:00」
タイトル通り『能動的三分間』の楽曲時間は3分間。
ポップスが売れる楽曲分数は「3分」という黄金律に基づき「東京事変が3分で曲を作ればこんなに格好良くなり、売れるのだ」というコンセプトに基づき制作されました。
BPM（テンポ）は120で、これは椎名林檎のセッティング時の癖によって決まったもの。
「BPM=120というテンポなら1小節2秒×90小節演奏するとちょうど3分間になる」という計算で作られたのだそうです。こうしたエピソードからも、東京事変の職人のような技術性の高さが窺えますね。
では詳しく歌詞の内容を追っていきましょう。
『能動的三分間』歌詞考察
その3分間にあなたは何をするの？
和訳：あなたは一人で足跡麺を作っている。熱いお湯を注ぐだけ。完成するまで何をするの？生還せよ、昇天せよ。
「東京事変らしいクールな英文歌詞で始まった！」と思いきや、カップラーメンを作るという描写で開始。
拍子抜けしてしまいそうですが、ここから徐々に登場事変ワールドに連れていかれるのは間違いありません。
「3分間」とは、即席麺の待ち時間など「手短にできるもの」を表す代表的な時間分数ではないでしょうか？
「3分間」は誰にも平等の時間数で、絶対的なもの。しかし、限られたその短い時間の中で何をするのかは、人によって異なります。
ここでは「その3分間であなたは何にもしないの？」といった少々強めのメッセージが隠されているのです。
時は全世界の誰にとっても平等
・遣る瀬無い＝どうしようもない
・沙汰止み＝命令や計画などが中止になること
難解な言葉が続きますが、どうしようもない現状を前に溜息を漏らしてしまう私たちをイメージしてもらえると良いかもしれません。
しかし嘆いても、時間は止まってくれません。
スピードが異様に早く、情報量の多い現代社会。確かに嘆くことは多くなったかもしれません。
そうした現実を捉え、「そこでただ立ち尽くすのは無駄なのでは？」というメッセージを飛ばしているようです。
私たちの曲を聴いてほしい
「サンデードライバー」とはたまにの休日にしか運転しない人を指します。つまりここでは、現代社会にうまく適応できなかったり、落ち込んで沈む未熟者のこと。
そんな人たちが精神崩壊してしまいそうなら「東京事変の曲を聴いてほしい」と言っているのです。
”ヒッチハイクの巧いベテランペーパードライバー”とは、その未熟者を指しているのでしょう。
「東京事変の楽曲をあれこれと聞き、生きながらえるのだ」と未熟者を強く背中を押しているのです。
東京事変の狙い
未熟者へ救済の手を指し伸ばした東京事変。
「どんどん進め」とリスナーへと進言します。
”骸骨を狙えシンセサイザー”とは「リスナーの核心部を音楽で突こう」といったところでしょうか。
自分たちの音楽を通じて、聴く者を虜にし、命ごと従えようというような少々強めなメッセージを感じ取れますね。
”Hit！格付（ランキング）のイノチは短い”とは、昨今の音楽がインスタント化している状況を皮肉った言葉です。即席麺のように、音楽も即席化していることを指しているのでしょう。
すべてが早くなっている今「あなたはどう過ごすの？」という煽りのメッセージの輪郭が明確化していきます。
時間は無情にも平等
・寄る辺ない＝身を寄せるあてがなく孤独で不安な状態
・現し身＝この世に生を受けている身体
・怨親平等＝敵も味方も同じように処遇すること
インスタントに構成される社会。私たちは不安に襲われるのも少なくないでしょう。
心身は疲れ果て、何をする気も起きないことも多々あります。
でも時間だけは無情にも同じスピードで進んでいく。善人でも悪人でも条件は一緒です。
「その中で私たちができることは何なのか？」と再び考えさせられる歌詞です。
「3分間」が意図するもの
「ダイナマイター」とは「壊し屋」つまり「心身が崩壊しそうなその人」を意味します。
タイマーが切れたら本当に壊れてしまう。そうした暁には「東京事変の音楽が効力を持て！」と言っているようです。
ここの”愛憎”が指すのは、人間の持つあらゆる喜怒哀楽だと思います。それらの感情を克服した人は「昇天」するようにすべてを乗り切れるのだと主張しているのでしょう。
”脳天を浸せイコライザー”とは、1番と同じく音楽を介してリスナーの脳内を支配してしまおうという強気発言です。
”Rock！音楽（ミュージック）のキキメは長い”とは、昔に生まれた「ロックミュージック」は今もなお人々を魅了し続けている現実を言っているのでしょう。たとえばビートルズなどでしょうか？
現代のインスタント化した音楽と、いにしえの熟成された名曲との相違。どちらがいいのか？どちらのような生き方をしたいか？そう問うているように思います。
東京事変が我々に委ねたもの
和訳：我々は使命を果たしたと思う。しかし始まったものは終わる。決して振り返ってはいけない。任務を全うせよ。幸せな一口目が待っている。我々が死んだら電源装置を入れて君の再生装置で蘇らせてくれ。さらば！
「我々」とは東京事変のこと。音楽を通じて使命を果たしたのだ言い切っています。ここから「解散説」に触れられてしまうようになったのでしょう。
しかし東京事変が本当に言いたいのは「あなたも各自の任務を全うしろ」ということです。
つまり、3分間という短い時間に「能動的に行動せよ」ということ。始まった人生はいつかは終わります。その中で何をできるのか常に能動性をもっていて欲しい、と言ったところでしょう。
もう一つが「再生装置で蘇らせてほしい」ということ。
東京事変が『能動的三分間』をリリースした際に解散を考えていたか分かりませんが「いつか終わってしまうかもしれない自分たちの音楽を蘇らさえるのはあなただ」と指名しているのでしょうね。
はじまりとおわりにしっかりと言及された非常に哲学的で、リスナー愛に満ちたラストです。
1ヶ月無料で音楽聴き放題！
通常880円/月のAmazonMusicUnlimitedが今なら1ヶ月で体験可能！
この機会に聴き放題サービスをお試ししてみよう！
いつでも解約OK！
おわりに
いかがでしたか？
様々な部分に紐解くべき問題が散りばめられたクイズみたいな楽曲だと個人的に感じました。きっとまだまだどこかに解釈すべき東京事変の意図が隠れているかもしれません。
ぜひ自分の解釈で『能動的三分間』を能動的に聴いてみてくださいね！
