2014年から福岡を拠点に活動している眩暈SIREN。
彼らの初両A面シングル『滲む錆色』の歌詞を考察していきます!
『滲む錆色』はイラストレーターのしづ氏が原作を務める新プロジェクト「spinoid」の主題歌にもなり、眩暈SIRENを広く知らしめる楽曲になりました。
「spinoid」はイラスト・アニメーションを用いた映像と、ボイスドラマ、音楽をクロスオーバーさせ「人生とは何か」を描くプロジェクト。
イラストレーターしづは「自分が元々眩暈さんのファンで曲をいつも聴かせて頂いていたので、歌詞や音作りから今の創作活動に多大なる影響を受けていると感じています」とコメントを寄せています。
そんな壮大なプロジェクトにふさわしく、哲学的で深遠な世界観を描いた『滲む錆色』。
「人生とは何か?」という考えに沿いながら読むとさらに深い歌詞に読み取れます。
『滲む錆色』の歌詞を深掘りいていきます!

『滲む錆色』歌詞考察
苦しい「生」の海に溺れて

『滲む錆色』はおそらく「模索」の楽曲と言えます。
「答え」や「希望」だけを求めるだけでなく、葛藤や思索そのものを肯定する楽曲に仕上がっています。
これはボーカル・京寺の人生に対する虚無感や無力感に由来していますが、その悲観的感情によるカタルシスがリスナーのストレスを昇華させる働きを持っているのだと思います。
『滲む錆色』の冒頭も、その悲観的世界観から綴られます。
大いなる存在や他者に”汚れてしまえ”と言われるように、主人公は人生に対して虚無感を覚えている模様。”瓦礫の海”という容易に戻って来れない世界へ足を引っ張られてしまいます。
そんな海に沈んで息を止めつつ生きながらえようとしていても、誰かに裏切られた経験が蘇り、人生の悲しみに溺れていきます。
過去の苦い経験は、今後の人生に暗い影を落とすもの。
それに付き纏われ、未来を悲観している主人公の姿が浮かび上がります。
微々たる願いに思いをかけて

”塵の山”とは、絶望や失意などのマイナスな感情を寄せ集めてできた心を指すのでしょう。
「そんな心にも希望が生まれ、明るい未来を望んでも良いだろうか?」
そんな疑問が提示されている歌詞です。
しかし懐疑的な主人公は、自身が抱く淡い希望を踏みにじる存在の正体を予感します。
生半可な傷からは何も生まれない

様々なものに対し懐疑的で悲観的な主人公。
そんな主人公は目の前の全てのものへ破壊欲求を抱いているようです。
しかし自由の本来の意味を知らないまま破壊をしても、生じるのは幼い傷。
ちゃんとした傷になりきっていないのです。
「自由」には責任が伴います。責任を負わない生半可な傷は、本当の意味での破壊にはなり得ないといった意味がここには込められているように思います。
やはり他人から言われる”汚れてしまえ”という厳しい声によってはじめて主人公は、人生の本当の苦味を感受できるのでしょう。
自分自身にどこまでも厳しく真摯な姿が垣間見れます。
熱のこもる涙は生きている証

”流した”とは「涙」のことでしょう。
そこにこもった”熱”こそが、生きている証明ということでしょう。
主人公は確かに、自身が流した涙の中の熱を感じ、生きる実感を得ています。
確かな感覚を得た主人公は、目の前の現実を変えられる可能性に希望を見出します。
そして、他人や自分自身と分かり合えなかった原因を”互いのせいだった”と思いを馳せ、反省的な視点を持つことができるようになります。
願いの中に含まれた汚さ

主人公は人々が傷つけ合う悲しい理由をずっと探していました。
それは自分もずっと苦しんでいるからです。
しかし私たちが傷つけ合うのは、良くも悪くも何かを願い、希望し、懇願しているからではないでしょうか?そんな答えにたどり着きます。
しかしその願いの内容が汚くなっていくにつれて、傷つく人は増えていくことを主人公は嘆いています。
いつまで経っても繕われた嘘の願い、悪意にまみれた現実への憂いが感じられます。
傷跡を肯定する

人間の悪意や裏切りにまみれ、何もかもに希望を抱けない主人公。
これからもなお、”瓦礫の海”と表現される悲しき現実に溺れていきます。
「何も信じることができない」と決まりきった考えすらも脆弱で、ゆらゆらと揺れざるを得ない辛さが綴られます。
しかし傷と傷でつぎはぎになった心は、間違ってはいません。最後に少しだけ「救い」が見えます。
その傷跡を、これからどのように抱えていくのか。
そんな疑問を提唱して楽曲は終わります。

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さいごに
眩暈SIRENの『滲む錆色』いかがでしたか?
人生に対して鋭い視線を持ち、真摯に向き合っているからこそ紡ぎだされる歌詞たち。
一生懸命生きる人に訪れる不条理や理不尽さを暴き出すような、眩暈SIRENにしか書けない楽曲、ぜひ聴いてみてください。