ヨルシカ「ノーチラス」の歌詞の意味を考察します。
第7回「ドラマ甲子園」大賞作品ドラマ「言の葉」(2020年10月)のメインテーマ曲にも起用された、2ndアルバム「エルマ」(2019年8月)の収録曲。
n-buna(ナブナ)さんが作詞・作曲した「ノーチラス」の歌詞を見ていきましょう。

ノーチラス 歌詞考察!
ノーチラス号との関連性

「ノーチラス」が収録されている2ndアルバム「エルマ」リリース後、ドラマ「言の葉」の主題歌に起用されたという流れなので、ドラマの内容は歌詞には反映されていません。
その2ndアルバムは、1stアルバム「だから僕は音楽を辞めた」(2019年4月)の続編。
どちらもコンセプトアルバムで、1stは音楽を辞めた青年エイミーがスウェーデンを旅しながらエルマという女性に手紙を送り、2ndは手紙の影響を受けたエルマがエイミーの足跡を辿って日記に綴るという設定です。
基本的に2ndはエルマ目線で描かれていますが、「ノーチラス」はエイミーの手紙そのもの、つまりエイミー目線です。
これまでに2人はおそらく日本のカフェで出会い(雨とカプチーノ)、一緒にピアノを弾いたものの、エイミーは余命2年(詩書きとコーヒー)という狭心症などの心臓病(八月、某、月明かり)にかかり(エルマの日記)、エルマの前から姿を消した(エイミーの手紙)という物語がありました。
そして朝起きると体調は良くなっていましたが、雨が降っていることもあり出かけたくない気分のようです。

タイトルの「ノーチラス」はギリシャ語で「船員、船舶」、ラテン語で「小さな船」という意味で、「オウムガイ」の英名、フランス・イギリス・アメリカ海軍の軍艦・潜水艦の名前にもなっています。
ジュール・ヴェルヌのSF・冒険小説「海底二万里」(海底二万マイル、1870年)などにも架空の潜水艦「ノーチラス号」が登場し、こちらがタイトルの由来になりました。
「人間」として生きていると「喉が渇く」などの生理現象に対応しなければならず、冒頭の「夜が明けない」も含め、海深く潜るように悩みは尽きないという印象です。

後の展開を踏まえると、「夜が明ける」は「喪が明ける」と重なるかもしれません。
「さよなら」を「So long」に置き換えると、「時間がかかっても構わないから、いつか心が晴れたら、僕が描いた君(の詩)を見て」と解釈できるでしょう。
冒頭の「時計が~夜が明けないから」は「僕が描いた君」、つまりエイミーがエルマのことを思い描いて書いた詩ではないでしょうか。
人生は芸術を模倣する

1stと2ndの2枚のアルバムは、オスカー・ワイルドの対話形式の評論「嘘の衰退」(The Decay of Lying、1889年→1891年)のヴィヴィアンの台詞「人生は芸術を模倣する」(芸術こそが現実、芸術至上主義)を再現した物語。
ピアニストに憧れるエイミーと、その真似をして音楽を作るようになったエルマが描かれています。
1番に続く2番の寝起きの日常描写も、エイミー自身の行動でありながら、エルマも同じことをしそうだと考えて、エイミーが書いた詩かもしれません。
「靴を捨てた」のは、エイミーが「何かをする」決意したからでしょう。

1st収録曲「踊ろうぜ」の「人間なんて辞めたいな」という歌詞が連想できます。

MVではここでエイミーが毒性の人工塗料「花緑青」を飲んで、海に飛び込みます。
1st収録曲「五月は花緑青の窓辺から」などにもあるように、エルマの前から姿を消したエイミーは自ら命を落とします。
エイミーの手紙は「花緑青」のインクの万年筆で書かれていました。
「手紙が届いたら、落ち込んでいても前向きに生きて。寝起きのエルマのことを詩に書いておいたから」といったニュアンスでしょうか。
スウェーデンの旅路を辿るエルマ

n-bunaさん自身、幼少期にスウェーデンに住んでいたことがあり、丘の前に人が立っていて、歩いて行くと丘の向こうにスウェーデンの景色が広がる夢を繰り返し見るそうです。
エルマの前から姿を消した後にエイミーが訪れ、そのエイミーの足跡を模倣するようにエルマが旅したのもスウェーデンです。

「ラップランド」はスカンジナビア半島北部の先住民族サーミ人が住んでいる地域、「ガムラスタン」はスウェーデン・ストックホルムにある旧市街。
1stミニアルバム「夏草が邪魔をする」(2017年6月)はエイミーとエルマの2人で作った音楽というイメージでしょうか。
松尾芭蕉(エイミー)が旅した道のりを辿った与謝蕪村(エルマ)という「芸術の模倣」も盛り込まれています。

エイミーにとってはエルマと奏でたピアノこそが、ヘンリー・ダーガーの長編小説「非現実の王国で」のように芸術至上主義を貫いたものだったのでしょう。
エルマにとっても、エイミーの旅を真似ることで「ノーチラス」の詩に辿り着きましたが、そこから先はエルマ自身が曲をつけることで楽曲になりました。
「好きなように音楽を作ること(=エルマ・君)を忘れ、生活のために音楽を作るようになった僕(=エイミー)の真似をやめて(目を覚まして)、前向きに生きて」というエイミーの願いが届いたのではないでしょうか。

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さいごに
エイミー作詞、エルマ作曲の「ノーチラス」。
最後に1番のサビ「さよならの~描いているから」が繰り返されることで、自分の死後のエルマを気遣うエイミーの思いやりが強調されますね。