今回は2019年11月18日に配信限定シングルとしてリリースされ、2020年1月24日に公開されたMVで藤井風さんが正式にデビューとなったシングル「何なんw」の歌詞考察をしていきます!
「何なんw」は藤井風さんご自身が作詞作曲を手掛けました。
タイトルはもちろん、岡山弁混じりの歌詞で構成される独特の音楽は、「天才が出てきた」と注目を集めています。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!
何なんw 歌詞考察!
距離を感じる恋人同士の日常
冒頭から登場する独特な表現。「岡山弁で歌っていきますよ」というアナウンスの役割も兼ねています。
「はさがった青さ粉」というのは「挟まった青のり」のことです。「はさがる」も「青さ粉」も西日本ではよく聞く言葉ですね。
主人公は向かい合って恋人と食事をしていたのでしょうか、相手の歯に挟まった青のりを指摘するかどうかで悩んでいます。
これだけだと微笑ましいカップルの日常ですが、続く歌詞は「口にしない方がいい真実もあるから」と重い表現が使われています。
これはこのカップルの関係にヒビが入っていて、日常的なことでもお互いの関係性に考えがいってしまう様子を表しています。
藤井風さんご本人がYouTubeに上がっている「何なんw」の解説動画で仰っていましたが、この歌はハイヤーセルフ(自分の中に存在するエゴや嫉妬に支配されないありのままの自分)を探そうとする歌です。
この部分の歌詞はそのハイヤーセルフ視点の感情と思われます。
主人公は恋人と上手くいかず、恋人に対して「知らない方が良かった」と口走ってしまったのでしょう。
しかし本心では「何があってもずっと大好き」と思っています。
実際に恋人同士が喧嘩をすると、自身の素直な気持ちは気づかなかったり無視されがちなもの。主人公のハイヤーセルフも、主人公に無視されてしまいます。
この部分もハイヤーセルフの視点から描かれています。
「雨」は文学の世界では何かを洗い流すことの比喩、もしくは単純に心が沈んでいる様子を表します。
前の部分で恐らく恋人と喧嘩になった主人公。ネガティブな心情に任せて間違った方に進んでいってしまったのでしょう。
本心ではそれが間違っているとわかっていながら、ハイヤーセルフの呼びかけも聞こえないフリをしています。
最後には「肥溜めへとダイブ」していますが、これは完全に望まない結末を自分自身の間違った振る舞いのせいで迎えてしまったことの比喩と思われます。
主人公を責めるハイヤーセルフ
サビではハイヤーセルフが主人公に対して何度も「何なん」と問いかけています。
この問いかけはかなり責めるようなニュアンスですが、ハイヤーセルフから主人公に対してのものです。要するに、自分で自分を責めている場面です。
前の部分でも何度もハイヤーセルフは主人公に対して何度も忠告をし、間違っていると伝えています。
しかし主人公はそれを無視して間違った結末、恐らく恋人と別れるという結末を迎えてしまいました。
にも関わらず主人公はそれを大きく後悔しており、とても情けない顔になっているようです。
「何なん」という言葉で終わっているフレーズが非常に多いサビですが、唯一「何なんw」と「w」がついている部分があります。それが「その顔は何なんw」です。
「w」は笑っているニュアンスを表すものですが、当然ここでは面白くて笑っているものではありません。
顔を見て「何なんw」と言っていることから、ハイヤーセルフとの対話を象徴するように鏡を見て話しているものと思われます。
自分で選んだ間違った道なのに、いざバッドエンドを迎えると情けない顔をしている自分。そんな自分の顔を見て、ハイヤーセルフは「何なんw」と言います。
これは他の部分は自分を責めるようなニュアンスであるのに対し、「顔」に関しては自嘲気味に「何なんw」と言い放っている様子が表現されています。
直接的なセリフにするなら「そんな顔になるんやったら最初から忠告聞いとけば良かったやんw」といったところでしょうか。
「w」をひとつ使うだけで細やかに心情が描かれています。
ハイヤーセルフの声を聞こうとしない主人公
2番に入り、ハイヤーセルフ視点で始まる冒頭。
これまでの歌詞と違い、明確に情景描写が為されていません。
これは恐らく1番からの場面転換を示しており、ナレーションのようなものだと思って良いでしょう。
どんなときに大胆に攻め、どんなときに慎重になれば良いのか本当は自覚しているのが人間というもの。
しかしそれは感情を抜きにした場合のみ実行できることです。
「こうした方が良い」とわかっていても、実際にその通りに行動しない。そんな人間の矛盾に対し、完璧なハイヤーセルフは「知っていることを知らないだけ」と突き放すように語っています。
1番では自分の感情任せの行動で恋人を失ってしまった主人公。
あまりの後悔から情けない顔になってしまっていましたが、そんな後悔も時間が経てば薄れていくもの。
まっさらな気持ちに戻った主人公は、またハイヤーセルフの声を聞かずに感情に任せて行動してしまいます。
そしてまたハイヤーセルフから責めるような言葉が飛んできます。
1番と全く同じ歌詞なのは、恐らく主人公は全く同じ間違いをしたのでしょう。
ということはもう一度できた恋人に対し、同じように感情任せで間違ったことを口走り、頑なにそれが間違っていると認めないまま別れてしまったことになります。
また情けない顔になる主人公と、それを自嘲気味に責めるハイヤーセルフ。
結局人間は感情に振り回され、完璧にはなれないのでしょうか。
助けを求める主人公
ここでハイヤーセルフではない主人公の視点に切り替わります。
全く同じ失敗を繰り返した主人公は、ようやくハイヤーセルフの言うことを聞く気になったようです。
ここで言う「神様」とは、これまでの解釈を踏まえるとハイヤーセルフのこと。
しかし「足元照らして」と自分が進むべき道はわかっていない様子。ハイヤーセルフは「真実なんてとっくのとうに知っていることを知らないだけでしょう」と言っており、本当は主人公も進むべき道がわかっているはず。それでもまだ感情に支配され、ハイヤーセルフを見つけられていないようです。
そしてハイヤーセルフは主人公に応えます。
一度落ち着いて、感情に支配されずにいて欲しいとアドバイスを送ります。
そして自分の声を聞き、また同じように責めるような言葉(サビ部分)を使わせないで欲しいと頼んでいます。
どこか呆れのようなものが含まれており、毎日泣いて帰ってくるのび太に対するドラえもんのような雰囲気が感じ取れます。
結局間違った道を行く主人公
ラストサビは1番2番と同じように「何なん」という言葉が多用されていますが、1番2番よりも「何なん」の数が多くなっています。
助けを求めてきたにも関わらず、結局最後までハイヤーセルフの声を聞かない主人公。
そんな主人公の行動に対し、一文目から「何なんw」と「w」がついています。
これは先ほどまでの自嘲的な意味合いと共に、「まだ繰り返すのか」という呆れも含まれています。
そして「何なん」と言う部分が多くなっているのは、ハイヤーセルフからすると本当に進むべき道がわかっているのに敢えて感情任せに間違った選ぶ主人公に対し、もう理解できないと思っているためです。
ハイヤーセルフからするとわかっているはずの行動をしない主人公。なぜその通りにしないのか、もどかしさが爆発しています。
そして最後に呟くように「何なん」と言っているハイヤーセルフ。この呟きは、もう主人公に自分の声は届かないかもしれないという絶望から来るものでしょうか。
この主人公がハイヤーセルフを見つけられたのか、それはわかりませんが、少なくともこの曲ではハイヤーセルフを見つけるのが難しい(=感情を抜きにして毎回正しい道を行くことは難しい)と歌っていました。
本当はどうするべきかわかっていてもできない人間の不条理さを描いた曲になっていましたね。
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さいごに
タイトル「何なんw」は一見ふざけているようなものでしたが、実際は正しい道がわかっていても感情に支配されて間違った道を選んでしまう人間の不条理さをハイヤーセルフの視点から自嘲気味に歌ったものでした。
岡山弁を交えて親しみやすい曲を作るのかと思いきや、人間の本質的な部分に触れる深いメッセージのこもった曲でした。
今回紹介した「何なんw」は藤井風さんのデビュー曲。彼が「天才」と呼ばれる所以が少しわかったような気がしますね。
今後「天才」藤井風さんがどんな曲をリリースするのか、目が離せません!