スピッツの44thシングル「紫の夜を越えて」(2021年3月)の歌詞の意味を考察します。
報道番組「news23」(2021年1~8月)のエンディングテーマとして書き下ろされました。
草野マサムネさんが作詞・作曲した「紫の夜を越えて」の歌詞を紐解きましょう。
紫の夜を越えて 歌詞考察!
紫の夜とは?
「紫の夜を越えて」はスピッツのメジャーデビュー30周年の日に配信リリースされた、夜の報道番組のED曲。
「コロナ禍で社会全体が不安の霧に覆われそうになるなか、報道番組を見た後、霧が晴れて明るいほうを向けるように」といった願いが込められています。
また、スピッツのこれまでの活動を彷彿とさせる言葉もそこはかとなく盛り込まれているようです。
たとえば「惑星」といえば、3rdアルバム「惑星のかけら」(ほしのかけら、1992年9月)と表題曲の4thシングル(1992年9月)、インディーズ時代のタイトルに「惑星」が入った楽曲も連想できるでしょう。
ただ、どちらも艶っぽい内容で今回の社会派の歌詞にはつながりません。
SFファンタジーのような感覚で「どこかに美しい惑星があるらしい」という話かもしれませんし、「地球こそ美しい惑星だと思えるようになってきた」と解釈することもできそうです。
新型コロナのパンデミックでソーシャルディスタンスを保つ必要があるため、孤独を感じる機会が増えました。
スマホやパソコン、テレビなどの「画面」を通じて娯楽を楽しんだり、コミュニケーションをとったりすることもできますが、実際に会うわけではないので「実体がない」ことを「匂いのない正義」と表現しているのでしょう。
1番のサビの前半です。
冒頭で紹介した楽曲に込められた願いを踏まえると、「社会全体が不安の霧に覆われそうな日々」つまり「新型コロナのパンデミックが続く日々」こそ「紫の夜」と考えられます。
「コロナ禍を乗り越えよう」と呼びかけている相手は「光の粒」です。
ライブの際、ステージに立つスピッツのメンバーには、観客一人ひとりが「光の粒」に見えることに由来するのかもしれません。
ファンだけでなく、スピッツのメンバーも含めた誰もが「小さな存在かもしれないけれど、希望の光を放っている」といったニュアンスを感じます。
「光の粒=美しい惑星」という解釈も成り立つでしょう。
1番のサビの後半です。
社会情勢や報道番組のエンディングで流れることを考慮すると、いわゆる応援歌になりそうなもの。
ところがスピッツはただ「一緒にいて欲しい」と願っています。
その理由は、「応援する側・される側」や「なぐさめる側・なぐさめられる側」の受け手側だと認識させられるとさまざまな思いが巡り、心が崩壊するほど「ギリギリ」な現状だからではないでしょうか。
パンデミック中に誰もが思い知ったのは「あたりまえ」こそ「ありがたい」、「ありがち」こそ「特別」だったということ。
冒頭の「惑星」の話も、「君」を「なぐさめる」ためのものではなく、ただ「一緒にいる」という「ありがち」で「特別」な行為だったことが浮き彫りになります。
砂の風に抗う理由
新型コロナに限った話でもありませんが、パンデミック状態が「続く」なら、ウィズコロナのように「傷」を抱えながら生きる方法を見出す必要もあるでしょう。
コロナ以前なら心の「傷」は忘れたほうがいい「記憶」でしたが、ずっと「傷」が「続く」なら「抱きしめよう」という話です。
「記憶」が「メモリーズ」と言い換えられているため、22ndシングル「メモリーズ」(2000年6月)を連想できます。
「砂の風」は「新型コロナ、パンデミック、過酷な状況」を表しているでしょう。
「できることならコロナに打ち勝ち、再生して、元の日々を取り戻したい」と願っているイメージです。
「袖」(そで)を「はばたかせる」と「砂の風に逆らう」ことになります。
そうすることで「君がどこかにあると話していた美しい惑星」に願いが「届く」かもしれません。
あるいは「地球が美しい惑星になる、地球を美しい惑星だと思える、小さな一人ひとりが美しい惑星のように輝く」可能性もあるでしょう。
一緒に乗り越えよう!
予測不可能な日々が「続く」なか、どうにか現状を打破して、ウィズコロナ・ポストコロナ時代のニューノーマル(新しい日常)に対応していく必要がありますね。
1番のサビの前半と後半の「一緒にいて欲しい」までが繰り返された後、「遠くまで~越えて」というラストにつながります。
どれほど「遠い」未来を見通そうとしても、何しろ「砂の風」に立ち向かっている状況なので「涙目」になるのも無理はありません。
それでも現状に「目」を瞑ることなく、過酷な日々を乗り越えるべく「一緒にいよう」という結末でした。
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さいごに
「紫の夜を越えて」の歌詞に出てきた「メモリーズ」には「生真面目な祈り」だけでなく「半分嘘のメモリーズ」というフレーズもあり、「惑星」関連2曲の歌詞は艶っぽさや「悪ふざけ」が際立ちます。
社会派の30周年記念ソングにこうした過去曲を連想できる言葉が入っているのは、さまざまな「傷」を抱えながらも「一緒にいよう」とファンに呼びかけている証かもしれませんね。