クリープハイプ『モノマネ』は、2020年10月に発表された配信限定シングル。
劇場版アニメ『どうにかなる日々』に起用された楽曲です。
また2009年にリリースした『ボーイズENDガールズ』の続編にもなっています。楽曲内には両極に共通した歌詞がいくつか登場しています。
リリース当時の映像がこちら。クリープハイプらしい味がありますね。
「モノマネ」とは自分以外の存在の身振りをマネすることです。
しかし真似るだけであって「その人には絶対なれない」という点がこの楽曲の中で大事なポイントになります。
同じ屋根の下、恋人と似たような日々を送る主人公が、ある「違い」を突き付けられて、お別れを迎えてしまう楽曲。
クリープハイプは比較的、一人称が「あたし」であることが多く、その繊細な悲哀の描写が秀逸です。
『モノマネ』も女性視点のようですが、MVではチャップリンらしき人物に扮した男性が悲しく泣く姿が印象的です。
冷蔵庫やクローゼットを開けても、当時の楽しかった思い出の映像が流れていて、当時への思慕でつぶれてしまう主人公の気持ちがありありと表現されたMVは必見です。
『モノマネ』にはどのような意味が込められているのでしょうか。考察していきます!

モノマネ 歌詞考察
恋人と「同じ」を持つこと

同棲しているカップルでしょうか。
一緒にお風呂に入って、シャンプーの泡で遊んでいる微笑ましいワンシーンです。
同じシャンプーや石けんを使えば、同じにおいになります。
主人公は恋人とそんな「同じ」を持っていることで、ふたりの関係の深さを感じ安心していたようです。
”でもその分 小さくなる石鹸”
ふたりの共通道具である石鹸が小さくなっいくという描写は、これから訪れる不穏な空気の伏線になっているようです。
真似ているのは一人だけ

家まで続く道、見る風景や天気はもちろん、約束して同じにしたキーホルダーさえも一緒です。
主人公は恋人とこんな部分まで「同じ」であるのを感慨深く思っています。
しかしタイトルは「モノマネ」。モノマネって芸人が一方的に誰かの真似をすることが多いですよね?
この点からも、主人公が一方的に恋人のマネをしているのではないでしょうか。
主人公の気持ちの方が、相手よりも強いことがなんとなく分かります。
唯一「モノマネ」できなかったこと

切り取られた何気ない日常のワンシーン。
同じ家の中で、同じテレビを見ている主人公たち。モノマネのテレビが放送されているようです。
主人公はそのモノマネ芸を「下手」だと馬鹿にしますが、その瞬間、主人公は意図せず恋人のモノマネをしていたことに気付かされます。
しかし、それは全く似ていない。
つまり、どれだけ同じ時間を過ごしていても、埋まらない違いが存在することに気付くのです。
”あの時あなたは泣いていたのに何も知らないあたしはただ笑ってた”
同じ瞬間に一緒に居合わせているのに「泣くあなた」と「笑うあたし」。
どれだけ同じキーホルダーを持っていても、相手の感情を同じくすることができなかったことに主人公は二人の悲しい未来を予感します。
酷いモノマネ

ここでは既にお別れした後の主人公の気持ちが描写されます。
主人公は、当時の恋人が泣いていたのを思って、泣くマネをします。
しかし別れた悲しみの涙も重なるか、それはひどいモノマネになってしまうのです。
感情だけは全く似せることができなかった残酷さに打ちのめされ、自責の念に駆られています。
見ていなかったのは

主人公は当時、恋人に対して「あたしのこと全然見てないじゃん」と不貞腐れていました。
しかし主人公はその瞬間「相手を見ていなかったのは自分の方だったのではないか?」と気付いてしまいます。
不貞腐れても笑って許してくれた恋人の優しさに甘えて、相手の気持ちを全く読めていなかった主人公は深く後悔します。
恋人は不貞腐れて怒る主人公に対して、不満を抱えながらも付き合ってくれていたのではないでしょうか?
でも、もう二人の仲が戻ることはありません。
もうどこにもない日々を探して

「一緒」だと勝手に思い、相手の心の中身を知ることができていなかった主人公。
一緒に過ごした毎日を振り返って、あの日々を探し続けます。
取り返しがつかないにもかかわらず、ひたすらに泣くしかありません。
全く重ならなかった自分の想い、ひとりよがりだった自身の気持ちだけが空中浮遊し、もう元にもどらない悲しみが主人公の胸にトゲを残します。

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おわりに
恋人とのいろいろな部分を「モノマネ」と例えられた本楽曲。
一緒に過ごしている情景、実はすれ違っている心の描写。
芥川賞にもノミネートされた尾崎世界観の描く歌詞は、さすがと言っていいほど儚く優しく秀逸です。
クリープハイプを初めて聴く人には、ぜひ聴いてほしい一曲です!