2010年8月19日に公開されたハチさんの「マトリョシカ」について考察していきます!
ハチの正体は、言わずと知れた米津玄師さんです。
米津玄師さんは昔、ニコニコ動画にハチという名前でボーカロイド動画を投稿しており、そこで人気を博したことがデビューのきっかけの一つになっています。
また、その後のボーカロイドの躍進ぶりを見ると米津玄師さんがボーカロイドの火付け役になったと言っても過言ではありません。
そして、ハチとしての数あるヒット曲の中でも、ひと際異彩を放つのがこの「マトリョシカ」です。
マトリョシカとは体の中に一回り小さな人形がいくつも入れ子になっているロシアの木製おもちゃです。
楽曲を公開するたびに注目を集め、SNSなどで楽曲に対する様々な考察を書くリスナー達。
ところが、中には自分の意図とはかけ離れた解釈もあったようで、そんな状況から生まれた曲がこの「マトリョシカ」なのです。
一体ハチさんはどんなことを感じていたのでしょうか?
では、歌詞の考察を始めていきましょう!

マトリョシカ 歌詞考察
どんどん広がる拡大解釈
考え過ぎのメッセージ
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
誰に届くかも知らないで
きっと私はいつでもそう
継ぎ接ぎ狂ったマトリョシカ
「考え過ぎのメッセージ 誰に届くかも知らないで」はハチさんが作った歌詞に対して、あらゆる解釈を述べる人に向けて書かれたものだと思われます。
ハチさんがニコニコ動画に曲を投稿するとコメント欄、SNS、ブログなどで様々な感想が書き込まれていきます。
それらの中には、深読みしすぎてハチさんの意図とは異なっている部分があったのではないかと推察します。
たくさんの人のたくさんの解釈によって、どんどん曲の真意や本質から遠ざかっていき、中身が見えなくなっていく。
その様を皮肉っているのが「継ぎ接ぎ狂ったマトリョシカ」の一文ですね。
頭痛が歌うパッケージ
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
いつまで経っても針は四時
誰も教えてくれないで
世界は逆さに回り出す
「頭痛が歌うパッケージ」については分解して一つずつ考えます。
頭が痛いというのは、単に頭部が痛むという意味以外に、解決の難しい問題や心配事に悩まされるという意味もあります。
パッケージは外見を表していると思われます。
つまり、「頭痛が歌うパッケージ」は外見はキチッとしているが中身は頭が痛い内容になっていることを意味しているのではないでしょうか。
「いつまで経っても針は四時」の「四時」はなんとも中途半端な時間ですよね。
時間が経ったにも関わらず、解釈は中途半端な状態で真意にたどり着けていないという意味だと解釈しました。
「誰も教えてくれないで 世界は逆さに回り出す」は正しい答えを誰も教えてくれない結果、思いもよらない方向へどんどん話が進んでいく様子が伝わってきます。
ああ、割れそうだ
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
記憶も全部投げ出して
ああ、知りたいな
深くまで
「ああ、割れそうだ」は先ほどのフレーズの「頭が痛い」の延長線上の感情かもしれません。
「記憶も全部投げ出して」しまいたいほど、暴走していく拡大解釈。
逆にどうしてそんな風に考えるかを「知りたいな 深くまで」と皮肉が込められているように感じます。
あのね、もっといっぱい舞って頂戴
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
カリンカ?マリンカ?弦を弾いて
こんな感情どうしようか?
ちょっと教えてくれないか?
感度良好 524
フロイト?ケロイド?鍵を叩いて
全部全部笑っちゃおうぜ
さっさと踊れよ馬鹿溜まり
言葉遊びから生まれるリズム感が楽しいサビです。
的外れな解釈も含めて、あらゆる感想に「もっといっぱい舞って頂戴」とハチ
さんは言っています。
カリンカもマリンカもロシアのワードですが、ここは語呂の良さを重視したようで特に意味はないと思われます。
この意味のないという部分に意味があると思われます。
どんな解釈も好きにやってくれという一方で、もはや意味すらないような解釈たちを見て、制作者の私はどんな感情でいればいいのか?逆に教えてくれないか?とハチさんが嘆いている様子が伺えます。
「感度良好 524」の524についてはネットでも様々な憶測が飛び交っています。
私は524は1と3がない状態であることから【意味がない】ことを表しているのではないかと思いました。
「フロイト?ケロイド?鍵を叩いて」も語感重視で、あまり意味はないようです。
「さっさと踊れよ馬鹿溜まり」は強烈な皮肉でもあり、もっと一緒に盛り上がろうというどちらの意味も込められているように感じますね。
滲みでてくる投げやり感と本音
てんで幼稚な手を叩こう
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
わざと狂った調子でほら
きっと私はどうでもいい
世界の温度が溶けていく
「てんで幼稚な手を叩こう わざと狂った調子でほら」は相手に合わせて意図的に世界観を崩し、幼稚な表現をしている様子を表しています。
「きっと私はどうでもいい 世界の温度が溶けていく」からは投げやりになりそうになるハチさんの心情が伺えます。
あなたと私でランデブー?ほらランデブー?
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
あらま飛んでったアバンチュール?
足取り歪んで1,2,1,2
ランデブーもアバンチュールも恋愛を想起させるワードですが、「あらま飛んでったアバンチュール?」は、恋愛という解釈は的外れだと言っているようにもとれます。
確かに恋愛の歌詞は誰でも経験しているからこそ多くの人の心に響きやすいですが、何でもかんでも恋愛に当てはめて考えるのも考えものですよね。
「足取り歪んで1,2,1,2」はどんどん歪んでいく解釈を更に煽っているようです。
ああ、吐きそうだ
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
私の全部受け止めて
ああ、その両手で
受け止めて
あまりにも真意から遠ざかりすぎた解釈をたくさん見ているうちに、とうとう物申したくなったようです。
「ああ、吐きそうだ」は曲の本当の意味を吐き出してしまいたいということだと思います。
もしそれがリスナーの解釈とは違っていたとしても、あれだけ知りたがっていたんだから受け止めきれるでしょう?という気持ちが込められていると推察します。
あのね、ちょっと聞いてよ大事なこと
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
カリンカ?マリンカ?頬を抓って
だってだって我慢できないの
もっと素敵な事をしよう?
痛い痛いなんて泣かないで
パレイド?マレイド?もっと叩いて
待ってなんて言って待って待って
たった一人になる前に
「あのね、ちょっと聞いてよ大事なこと」
「だってだって我慢できないの」この二文からいよいよ我慢の限界が来たことがひしひしと伝わってきます。
順番が前後しますが、「痛い痛いなんて泣かないで」「もっと素敵な事しよう?」というのが最も伝えたいメッセージだと感じました。
人は痛みに敏感です。
そして、感情を伝える手段が少ない子供は泣くという形をとりますが、それは人の気を引くのに有効なやり方だからです。
つまり、たくさんの解釈の中には純粋な解釈ばかりではなく、『私だけがここに気付いた!』という人に注目されたいという自己顕示欲から書いていると思われるようなものもあったようです。
しかし、それは所詮一人よがりの解釈に過ぎません。
「たった一人になる前に」そんなことはやめて、純粋に音楽を楽しもう?というのが「もっと素敵な事しよう?」の真意ではないでしょうか。
最後に残した強烈なメッセージ「さっさといなくなれ」
あなたと私でランデブー?ほらランデブー?
あらま飛んでったアバンチュール?
足取り歪んで1,2,1,2
酔い潰せ歌い出せ今日もほら
継ぎ接ぎ狂ったマトリョシカもっといっぱい舞って頂戴
出典:マトリョシカ / 作詞・作曲:ハチ
カリンカ?マリンカ?弦を弾いて
こんな感情どうしようか?
ちょっと教えてくれないか?
感度良好 524
フロイト?ケロイド?鍵を叩いて
全部全部笑っちゃおうぜ
さっさと踊っていなくなれ
チュチュ
一部違う部分はありますが、大筋ここまで出てきた歌詞と同じ内容です。
「酔い潰せ歌いだせ今日もほら」と散々煽りながら、最後の最後に「さっさと踊っていなくなれ」とさらっと入れてしまうあたり、もはや恐ろしいと感じます。
リスナーに向かって「いなくなれ」なんて口が裂けても言えなさそうですが、それでも炎上しないのはそれだけ曲の雰囲気に合っていて、違和感なく自然に聴けるアレンジになっているからですね。

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さいごに
既に日本を代表するアーティストの一人となった今の米津玄師さんだと、立場上とても書けなさそうな歌詞ですよね。
しかし、曲の雰囲気や世界観は変わっておらず、こういったパンチのある内容から「Lemon」のような万人に共感されるような曲が書けるからこそ、今の地位を築かれたんだなと改めて感じました。
今の曲と昔の曲、同じアーティストでも全然違うように楽しめるって素敵な事ですよね。
まさに「もっと素敵な事しよう?」とはこういうことなのかもしれません。