コンポーザーのn-buna(ナブナ)さんと女性ボーカルsuis(スイ)さんによるバンド、ヨルシカ。
1stミニアルバム「夏草が邪魔をする」は2017年6月にリリースされました。
全7曲のラストを飾る「雲と幽霊」は、バンド名の由来となった名曲として人気があります。
3曲目の「言って。」との関係も話題です。
作詞・作曲はn-bunaさん。
切なく詩的な「雲と幽霊」の歌詞に込められた意味を考察していきましょう。

雲と幽霊 歌詞考察!
「言って。」のアンサーソング?

「雲と幽霊」の主人公は、亡くなって幽霊になった少年です。
愛する少女を想い、その姿を見に出かけたあと、少女には内緒の行動を起こそうとしています。
あの世で暮らす少年とこの世で暮らす少女。
その距離は遠く離れているのでしょう。
なぜ「遠くの君」が愛する少女だとわかるのかというと、n-bunaさん自身が公言されているとおり、「雲と幽霊」が「言って。」のアンサーソングになっているから。
「言って。」の主人公は、愛する少年を失った少女です。
この2曲は同じ2人の物語ですが、視点が逆になっています。

少年は真夏に亡くなり、夏の終わりを少女と一緒に過ごすことができなかったのかもしれません。
おそらくそれが心残り。
そのため広大なあの世からすると、たった六畳くらいに狭く感じられる地球に戻り、生前に少女と過ごした思い出の場所を巡ろうと考えています。
バス停や誘蛾灯のある街の風景が目に浮かび、切ないですね。
エイミーとエルマの物語とも重なる?

残念ながら、生きている人間には亡くなった存在は見えません。
話すこともできません。
愛する人が幽霊となって近くに来てくれたとしても、ほとんどの場合は気付かないでしょう。
ところが「雲と幽霊」の少年と「言って。」の少女の心は通じ合っています。
生と死という圧倒的な隔たりがあっても、お互いにわかり合うことができるほどの愛。
少年が確信するには理由があります。

1番のサビです。
2人の心には「空が青い」「雲が高い」という風景を一緒に見たときの印象が強く残っています。
どちらも日常にひそむ貴重なありがたさを強烈に感じさせる風景。
少女にとって、幽霊となった少年は「雲の上の存在」という意味にも受け取れるでしょう。
生前、一緒に過ごしたバス停での風景を2人とも懐かしく思い出している。
それは少女側の視点に立った「言って。」の歌詞でもわかります。
このことから少年は2人の心が今でも通じ合っていると確信。
だからこそ「もういい」という表現につながりますが、何が「もういい」のかについては2番の歌詞で明らかになります。
これほど心が通じ合っている2人は、青年エイミーと少女エルマの原型かもしれません。
1stフルアルバム「だから僕は音楽を辞めた」、2ndフルアルバム「エルマ」に登場する2人を重ねてみるのも興味深いでしょう。
MVは逆再生になっている?

ここから2番です。
1番で少年は少女と過ごしたバス停に出かけましたが、2番では少女にも内緒で「遠い街」を訪れます。
この「遠い街」はn-bunaさん自身が暮らしたことのあるスウェーデンをイメージされたそうです。
露店がある石畳の街とのこと。
まるで走馬燈のように、子供の頃の懐かしい風景を思い出しているのでしょう。
1stフルアルバム「だから僕は音楽を辞めた」の青年エイミーが旅したスウェーデンともつながります。

ここで映像制作チームHurray!のぽぷりかさんがディレクションしたアニメーションのMVを見てみましょう。
ベンチに座っていた少年が立ち上がると、膝から下の足先が透けています。
これは少年が幽霊だということ。
歌詞は日本のバス停からスウェーデンの街並みへと歩く物語ですが、MVではスウェーデンから日本へと逆の流れになっています。
しかもMVでは1番と2番の間奏で少年が後ろ向きに歩いたあと、ちょうど「何で~」の歌詞とシンクロして、少年の姿を隠す山積みのレンガの1つが下から上へと戻るのです。
このことから、どうやらMVは逆再生らしいと考えられています。
思い出の場所を逆再生するかのように歩くのは、走馬燈を表しているのかもしれません。
バンド名の由来「夜しかもう眠れずに」

1番のサビの歌詞にあった「もういい」とは、「忘れていい」という意味だったことがわかります。
亡くなった幽霊はいつまでも愛する人を見守ることができますが、生きている人は亡くなった存在に執着しすぎると前へ進めません。
少年にとって、少女に会いに行くだけでなく、少女に内緒で他の場所も巡ることは、現世への心残りを断ち切る意味があったのかもしれません。
幽霊というこの世とあの世の狭間の存在ではなく、あの世へ行き切るために、少年も少女もそれぞれ前を向くために、むしろ忘れてほしいということでしょう。

バンド名の由来となった「夜しかもう眠れずに」という歌詞が出てくるサビです。
生きているあいだは昼寝もできるけれど、亡くなったらもう昼寝はできないという意味でしょう。
昼寝のできない幽霊として、いつまでも少女と心を通わせていたい、走馬燈を眺めていたい。
そんな本音が描かれています。
このあと1番のサビが続き、少女に忘れてほしいと願う「もういい」が強調され、切ないです。
最後に冒頭のAメロが繰り返されるので、永遠にループするような余韻も残ります。

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さいごに
「雲と幽霊」はバンド名の由来となった歌詞が入っているほどの名曲です。
アンサーソングの「言って。」、逆再生?と評判のMV、 エイミーとエルマの物語が描かれた1stフルアルバムや2ndフルアルバムも併せて楽しむと歌詞への理解が深まるでしょう。
愛する人をこの世に残したまま亡くなった少年は、幽霊のままでいたいという本音もありつつ、少女のためにも忘れてほしいと願っています。
生きている人が存在を忘れるほど完璧なあの世が「雲」、この世とあの世の狭間にいるのが「幽霊」だとすると、まさに「雲と幽霊」の狭間をただようような浮遊感が詩的で切ないですね。