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スズキユウスケ・ナオト兄弟、ナオトと幼馴染のゆっきー、ゆりとの4人バンド、オレンジスパイニクラブ。
今回は、上京して2年足らずでオレンジスパイニクラブの名前を広く知らしめた『キンモクセイ』の歌詞を考察していきます!
『キンモクセイ』は1stミニ・アルバム『イラつくときはいつだって』に収録されている楽曲。
TikTokや音楽ストリーミングサービスを中心に若者から人気を得て、Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で最高20位を獲得。
どこか切なくて甘酸っぱい青春を描いた『キンモクセイ』は、忘れかけていた”あの頃”を彷彿とさせるきゅんとした優しさが詰まった楽曲になっています。
筆者もInstagramで『キンモクセイ』に耳を奪われて以来、オレンジスパイニクラブの存在を知り、ファンになりました。
そんな『キンモクセイ』の歌詞は一体どんなものなのか、考察していきます!

『キンモクセイ』歌詞考察
迷惑ばかりかける僕

オレンジスパイニクラブに登場する主人公は、良くも悪くも女々しくて弱気な人物が多め。
『キンモクセイ』もそのひとつ。
愚痴や脆い気持ちが心に溜まり、その行き場を無くし煮え切らない状態です。
そんな時に「僕」を助けてくれる存在への気持ちを歌ったのが『キンモクセイ』。
まだ付き合っていない女の子への淡い恋心があふれ出してしまうプロセスが描かれているので、順を追って読んでいきましょう。
渇き切った夏に訪れた恋

”ああでもないこうでもない”
自分がどうすれば良いのか分からなくなっている主人公。他人からの意見も受け付けられず、鬱屈とした気持ちが心をいつも覆っています。
進路や就職、テストやバイト。学生時代のモラトリアムなあの鬱々とした感覚が蘇ります。
そんな時に主人公を助けてくれるのが、「君」の存在。
”君に愚痴吐いて生き間に合ってる”
今の宙ぶらりんな主人公を支えてくれる「君」は、主人公のQOLを支えてくれるような存在のようです。
”揺らしている”
”渇いてく”
閉塞感に満ちた主人公の今が端的に表現された形容詞からは、オレンジスパイニクラブの表現力の高さが窺えます。
信号のない十字路とは

主人公と「君」は同じ大学の同級生なのでしょうか?
ふたりは日が暮れるまでずっと話を続けます。
”信号のない十字路”という表現からは、主人公自身や「君」とのこれから関係がいまだに見えないことを示唆しているようにも感じます。
同時に「君」はその反対方向をずっと見ています。
この先がなかなかはっきりしない主人公と、しっかりと未来を見据えている「君」。
この先、二人がなんとなく交わらないことの切なさも予感させます。
ただ、今たった一瞬だけでも交わっている「君」との時間に、主人公は恋心を募らせてしまいます。
金木犀の花言葉は…

「君」とバイバイした主人公は、「君」がまるで金木犀のような存在だと直感します。
とろけるようなあのいい匂いを醸しだす金木犀をイメージして、主人公はその匂いに連れられるように「君」に夢中になっていきます。
実は金木犀には「謙虚」「気高い人」「真実」「陶酔」「誘惑」という花言葉があります。
主人公にとって「君」は花言葉が表すように、自分に甘やかな感情をもたらしてくれる存在なのは間違いありません。
”夏の終わりの初夏の気温”とは少し矛盾している文章ですが、主人公の心の温度が初夏のような暑さを帯びているという比喩表現でしょう。
今まで隠してきた気持ちが露わになって、「君」への恋心がグッと高鳴ってしまいます。
行動できない主人公

散髪にも行っていないような主人公。そんな彼の心を表すように何かを隠す心情が”前髪で隠さないで”という歌詞に表れています。
しかし主人公の心の中に秘められた思いは「握っていたいのはあんたの右手」。
「君」の前では本音を隠してしまうけれど、一人になった時には「手を繋ぎたい」。
行動に移せない弱気な主人公の姿がありありと浮かびます。
パッと晴れる恋心

なかなか「君」に思いを言えない主人公のようですが、ふたりだけの間にある”アイコンタクト”は実行できている模様。思いを告げられない恋心は空中に漂いながらも、主人公の心を満たしています。
”体温すらも一目で分かる”ほどに、主人公と「君」の距離は近づいているのです。
今まで閉塞感と孤独感に満ちていた主人公の気持ちも、「君」の存在によってとっくに解消されています。
恋人にはなれずただ隣にいるしかできない状態を「最低」とは思ってみるも、恋しているその気持ちだけで主人公は「最高」なわけです。
「君」は主人公の心を射抜き続け、主人公の心を晴れやかにさせています。
遺された春と、これから来る秋

主人公を明るくさせた恋心ですが、実は最初から「終わり」は見えていました。
キンモクセイの花言葉の一つ「気高い」が表すように、主人公にとって「君」は高嶺の花。
”ハルが酔ってみているような黄色っぽい映画のその先を”
この歌詞からは、主人公がうららかな気持ちで酔っ払っているように「君」への恋心を燃やしている反面、金木犀のような「君」はどんどん遠ざかって主人公のもとを離れて行っている様子を映し出しているように思います。
「黄色っぽい映画」も、「君」と過ごしたワンシーンの比喩、その回想だと思われます。
金木犀は秋の花。
春の季節にただ一人留まってしまっている主人公は、「君」との間に広がる距離感へ焦りを覚えているのでしょう。
「春」ではなく「ハル」と片仮名になっている点も、今までの関係が「作り物」であったような印象を受けます。
金木犀のかおりに思いを乗せて

淡い恋心を歌った楽曲と思いきや、実は儚く散った失恋ソングだった『キンモクセイ』。
金木犀のにおいがするのは、一年のなかでの少しの間だけ。
それと同じく、主人公の前に「君」がいたのも一瞬の夢のような出来事だったのでしょう。
それでも主人公はまだまだ煮え切らない恋心を燃やし続けるところで楽曲は終わりを迎えます。
ここまでくると”香りまで想像しちゃうなんてバカね”という独り言は、とても悲しい印象をもたらしますね。
最初から「終わり」が分かっていた叶わぬ恋、自分には訪れない恋の成就がひたすらに切なく響きます。
僕を叱って

最初と同じフレーズで終わる『キンモクセイ』。
しかし冒頭とは異なり、いつまでも「君」に恋している自分を”叱って”と言っているように思えてなりません。
再び孤独感を抱きながらも、主人公は本当の秋を迎えるのでしょう。

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おわりに
若者の間で大人気になった『キンモクセイ』。
「季節」の表現が巧みに仕組まれている本楽曲を改めて聴き直すと、恋愛の明るい部分と暗い部分の両方を感じ、センチメンタルな気持ちになります。それはオレンジスパイニクラブのなせる業でもあるでしょう。
オレンジスパイニクラブの代表曲『キンモクセイ』、個人的にはぜひ散歩しながら聴いてほしい楽曲です!