「君がいて水になる」は「ずっと真夜中でいいのに。」のファーストアルバム「正しい偽りからの起床」に収録されている楽曲。
メロウなメロディーとACAねさんの透き通るような歌声が心地よい曲ですが、果たしてその歌詞にはどのような意味が込められているのでしょうか。
徹底的に考察してみたいと思います!
ACAねさん本人はTwitterで「君がいて水になる」について以下のようにコメントしています。
「澄明(ちょうめい)」はちょっと聞き慣れない言葉ですね。
澄明を辞書で引くと「(水・空気などが)澄み切って明るいこと」とあります。
「透明」とよく似た意味の言葉ですが、透明と澄明を比較すると澄明には水や空気のイメージがあります。
汚れがなく美しいものという感じですね。
また「朧げ」は「①月が雲や霞に遮られてぼんやりしているさま。②物事がはっきりしないさま。ぼうっとしているさま。」の2つの意味があります。
基本的には②の物事がはっきりしないさまという意味で考えていいと思いますが、本楽曲のメロディーからは月のイメージも浮かびやすいので、①も頭において考えてもよさそうです。
汚れなく澄み切って明るいけれど、ぼんやりとしている様子。これは「君がいて水になる」の歌詞を解釈していくうえで、一つのキーワードになりそうです。

君がいて水になる 歌詞考察
ではここから実際の歌詞を細かく見ていきましょう。
君と僕の関係は?
はみ出してた 淡い紺色がずっと
僕らの時間を解決させずに 砂を払ったりした
考えとか捉え方も知らないや
朝に齧った憂いで 記憶を眠らせたくて
淡い紺色というと、海の色や夜明け前の空の色のような感じでしょうか。
これは主人公である僕の恋心を表しているのではないかと思います。
僕らの時間を解決させずに、ということは、おそらく僕ら二人の関係はただの恋愛関係ではなく、三角関係や体だけの関係などどこか許されない関係なのでしょう。
でも「はみ出してた淡い紺色」つまり抑えきれない僕の恋心が、まるで砂を払うかのように二人の間にある問題を無理やり払ってしまっているのではないでしょうか。
どこかにゆくのか 留まる勇気が
試されてるのか 疑うことで信じたい
踊りはしないさ 音も無くなれば
手放せた 借りパクしてた 夜弦の月も
二人の関係を進めるべきか、やめるべきか。
「疑うことで信じたい」とは逆説的な表現ですが、何も疑うことがない状態よりも何かを疑ってしまうことがあるときのほうが「信じる」ということに意義が感じられますね。
「借りパクしてた夜弦の月」とは何を意味しているのでしょうか。
「夜弦の月」は造語のようで辞書などには載っていませんが、弦月は半月のこと。下弦の月や上弦の月がありますね。
これは二人が過ごした時間のことを指しているのでしょう。
「借りパクしてた」ということは、「君」には他に彼女、あるいは奥様がいると考えられます。君の隣は、本来は自分以外の女性がいるはずの場所だったのでしょう。
音もなくなれば踊りはしないし、借りパクしてた夜弦の月も手放すことができた。
「音もなくなれば」とは、君がいなければということでしょう。
君がいなければ君に踊らされることもないし、君のことも本来の恋人に返すことができた。
逆にいえば、君がいるからそれは出来なかったということですね。
行き先の見えない船
気配だけで超えられるから
柵や秩序の甘えは 君がいて水になる
色のない輝きを追うばかり
気にしてしまう距離が 僕にだけでありますように
小さな船流れ出す ただ力の抜けた光る方へ
ここでも「柵(しがらみ。水流をせき止めるもの)」「水」「舟」など海を想起させる言葉が多く出てきます。
世間の柵や秩序のことを考えればこの関係は簡単に辞められるだろうというような甘えは、君の存在や気配を感じるだけで消えてなくなってしまい、「色のない輝き」つまり将来性のない今の中途半端な状態の中にある幸せを追ってしまう。
止められない感情が切なく描かれます。流れ出した小さな船は、どこに辿り着くのかわからない二人の関係のことでしょう。
磨り減る心
鮮やかなフルーツに毒を吐いて
習ったばかりの嘘を挟んで
食べ尽くすことでどうにか立っている
変な言葉使う僕でいなきゃ
交わることない 類いにはまって
君を逸らして 傷を抉って
磨り減った心で 歌を歌って
君が笑うなら 僕も笑ってみるよ
今まで夜の海を彷彿とさせるような色彩のイメージが漂っていた中で出てきた「鮮やかなフルーツ」は、自分たちとは違う普通の恋人たちのこと。
「習ったばかりの嘘」という表現から「僕」にとって今のような後ろ暗い関係は初めてのことで、きっと純粋な少女なのだろうと想像できます。
幸せそうな恋人たちに対して毒づきながらでないと立っていられない辛い心情が描かれます。
自分をすり減らしながら無理に笑っている様子が切ないですね。
この後1番と同じサビが繰り返され、Cメロに入ります。
やり場のない気持ち
カシス色の髪が揺れている
喉が乾くほどに泣いている まだ
君のことまだ 途中地点の話をさせてね
何に誰に許可を貰って暮らしてんの
気持ちに名前付ける必要なんてあんの
嗚呼 言い切れない 今は言い切れないままさ
体の水分がなくなりそうなぐらい「僕」が泣いている様子が描かれます。
「君のことまだ」「途中地点」という表現から、今の状態で二人の関係を終わらせたくはないという気持ちが読み取れます。
「暮らしてんの」「必要なんてあんの」という投げやりな文末の表現からは、今の関係が間違っていることはわかっている、でも間違っているとは認めたくない、そんなやり場のない気持ちが感じられますね。
お洒落な言葉でいいから
少しでも触れられた瞬間 憧れで終われない
色のない輝きを追うばかり
探ってしまう歌が 君には届きませんように
小さな船流れ出す ただ力の抜けた光る方へ
「君」がかけてくれる言葉は真心のこもったものでなくていい、着飾った言葉で構わない。
君が僕に触れる限りは、憧れで終わらせることができない。君の本心を探りたい気持ちに、君が気付かないように願ってしまう。
この辺りから、「僕」とは対照的に「君」は僕に対してあまり本気で恋をしているわけではないのかなと推測できますね。
それでも今の関係を終わらせたくない、幸せな未来は見えないけれど気持ちを抑えられない。そんな僕の様子が目に浮かびます。

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まとめ 澄明な気持ちと朧げな未来
『君がいて水になる』は、他に本命の彼女がいる「君」と関係を持ってしまった「僕」の切ない気持ちが描かれた歌でした。
「君」に対しての恋心には汚れがないものの、間違った関係であることはわかっているが認めたくない気持ち。このままではよくないと思いつつも関係を断ち切れず、どこへ辿り着くのかわからない「僕」の気持ちが切なく描かれています。
「僕」の気持ちは汚れなく透き通っているけれど、二人の関係はぼんやりしていてどうなるのかわからないし、どうするべきなのかを考えることも僕には出来ない。
ACAねさんのツイートの「澄明で朧げ」という言葉は、「僕」の恋心を表していたのですね。
歌詞全体に漂う夜明けの海のイメージも相まって、切なくも美しい歌に仕上がっています。
「ずっと真夜中でいいのに。」の美しい世界観に引き込まれた方も多いのではないでしょうか。
今後の楽曲も楽しみですね!