今回は、ずっと真夜中でいいのに。の新曲「消えてしまいそうです」の歌詞を考察していきたいと思います。
9月16日にNetflixで全世界独占配信、日本全国ロードショーとなるアニメーション映画『雨を告げる漂流団地』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。
挿入歌に起用されている「夏枯れ」は、ノスタルジーで爽やかな夏の想い出を歌った楽曲でしたが、今回の「消えてしまいそうです」では、どんな歌詞が綴られているのでしょうか?
映画の内容と楽曲コメントも合わせて見ていきましょう!
映画『雨を告げる漂流団地』
2018年公開の『ペンギン・ハイウェイ』で、第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。
2020年の長編映画『泣きたい私は猫をかぶる』がNetflix にて全世界独占配信され、世界30カ国以上で再生回数の多い映画ランキングTOP10に入るなど、世界的にも高い評価を受けているアニメーションスタジオ「スタジオコロリド」が、長編アニメーション映画第3弾として制作した映画作品です。
漂流した子供たちは、無事に元いた世界に帰ることができるのか?
9月16日の公開が楽しみですね!
楽曲コメント
ずっと真夜中でいいのに。のACAねさんのコメントをご紹介します。
制作にあたり石田監督から物語としての想い/ヒントをいただき、すぐさまメモやら何やら広げながら取りかかると普段の自分とも繋がりました。
季節が暮れるたび枯れるたびに想いを馳せてしまうような作品に浸りながら新たな夏の曲を作らせていただきました。(もともと団地の纏う もの懐かしさや たた住まいがとても好きで監督と盛り上がれて嬉しかった)主題歌と挿入歌として交わることができて感謝です。
監督とのディスカッションを通して完成したという本楽曲。
映画のストーリーがどのように反映されているのか、楽しみです!

消えてしまいそうです 歌詞考察
映画のネタバレを含みます。ご注意ください。
助けたい表面 寂しさが少年
始めからここに浸ってしまうから
片手間だって わかったから
痒いもんね 体育座り本音
畳の香ばしい匂いが痛くする
もう ひとけのない部屋スーパーの曲がり角 歩いた
出典:消えてしまいそうです / 作詞・作曲:ACAね
秘密のはなし そんな帰り道が
恋しくなってしまうから
願うもんね 夢なんかじゃなくて
君の合図 歩き方で気づくよ
もう ひとけのない部屋
監督から物語への思いをヒアリングして作られたというこの楽曲。
石田監督は「映画は、二人の少年少女の痛みを引き受けながら作っていました。
この歌も、それを引き受けてくれたと思います。」とコメントされています。
物語の主人公である二人の少年少女。
姉弟のように育った幼馴染の二人ですが、祖父の他界やお互いの成長によって、関係がギクシャクしていきます。
冒頭の歌詞では、疎遠になってしまったことへの寂しさが歌われているように感じました。
今はおばけ団地と呼ばれている、二人が育った団地の香ばしい畳の匂い。
“体育座り”というワードも、小学生の二人を想起させる素敵な歌詞ですね。
秘密のはなしをしながら一緒に帰った通学路を見て、懐かしんでいる様子が伺えます。
“もう ひとけのない部屋” という歌詞は、取り壊しの進む「おばけ団地」を指しているのでしょう。
二人の思い出が詰まった部屋が無くなってしまうことに寂しさを感じます。
柔らかな緑は ただ
僕を やり直させようと必死で
ままごとを続けた
木を ねぇどうしたいんだ
あゝ 今日が君の吸い込んだ空気で
出典:消えてしまいそうです / 作詞・作曲:ACAね
消えてしまいそうです
未完成で 低姿勢で 気持ち任せです
乱暴に手を振った 気配に負けそうです
君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏
団地の様子は変わってしまっても、周りに生えている草木は変わりません。
二人の関係を見てきた緑は、昔の家族のような関係に戻って欲しいという意味なのではないでしょうか?
“木を ねぇどうしたいんだ” という歌詞には、木(ぼく=僕)という言葉遊びが込められていますね。
ずっとそこにあり続ける木は、僕をどうしたいんだろう?
そんな航祐の疑問が浮かびます。
“君の吸い込んだ空気で 消えてしまいそうです”
タイトルにもある「消えてしまいそう」とは、何を表しているのでしょうか?
映画の内容、続く歌詞から考えると、自分の未熟さを表現しているのではないかと感じました。
小学校6年生の二人は、ちょうど思春期が始まった頃。
心も身体も大人ではないが全く子どもでもないという成長段階を迎えています。
“未完成で 低姿勢で 気持ち任せです” という歌詞からも、主人公が未熟さを自覚した様子が伺えます。
映画描かれる、不思議なサバイバル生活を通して、小学6年生の子供が成長していく姿を表現しているように思います。
“君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏”
君(夏芽)をなんとしてでも守り抜きたい、そんな航祐の強い想いが感じられました。
屋上から一番近い階段あははって
簡単に放り投げた哀傷論
表したところでだって
どうにもならない
成長も儘ならない
8月9月育っては生滅
もう 行き場のない部屋=僕柔らかな緑は ただ
出典:消えてしまいそうです / 作詞・作曲:ACAね
僕を やり直させようと必死で
ままごとを続けた
木を ねぇどうしたいんだ
自由は 強打
歌詞では “屋上から一番近い階段あははって” とありますが、実際に曲を聴いてみると、「一番近い階段上って」と聞こえました。
この部分も木(ぼく)と同じように、2つの意味が込められているのではないでしょうか?
漂流する団地の屋上に行くため、階段を上る子どもたち。
「あはは」と笑って上る無邪気な姿を表現しているように感じました。
“哀傷論”
哀傷とは、悲しい物思いに沈むこと。
辛いこと、悲しいことは、すぐに忘れてしまう子どもたちのポジティブさが歌われている歌詞です。
“8月9月育っては生滅”
この部分は、先程の木(ぼく)とリンクしているように思います。
8月9月に成長した草木も、その後に来る冬で生滅してしまう。
今の楽しい時間もいずれ消滅してしまう、この思い出もいつか消えてしまう、と嘆いているのではないでしょうか?
君の吸い込んだ空気で
消えてしまいそうです
未完成で 低姿勢で 気持ち任せです
乱暴に手を振った 気配に負けそうです
君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏巻き込めないよ 回り込めない夜更けは
出典:消えてしまいそうです / 作詞・作曲:ACAね
眉唾の眼で張り裂けそう 弱いんだよ
無理に笑うように変わった あの日から
気づいてたのに
時空は 遠に先走ってゆくよ 僕の前を
おばけ団地で謎の少年に出会い、不思議な現象に巻き込まれてしまった子どもたち。
漂流生活の中で、まだまだ子供である自分の未熟さ、無力さに気づきます。
“無理に笑うように変わった あの日から”
無理に笑っているのは夏芽、あの日とは航祐の祖父・安次が亡くなった日のことでしょう。
安次を本当の父のように慕っていた夏芽の気持ちの変化に気づいていた航祐。
でも、何も出来なかった弱い自分を攻めているように聞こえました。
夏芽を大切に思う航祐の気持ちが伝わってくる歌詞ですね。
ねぇどうしたいんだ
今日が 何度目の季節だったもう吸い込んだ空気で
出典:消えてしまいそうです / 作詞・作曲:ACAね
認めてしまいそうです
未完成で 低姿勢で 気持ち任せです
乱暴に手を振った 気配に負けそうです
僕のSOSは 君のものって 思い込みたい夏
この映画では、少年少女たちの「成長」、成長に伴う痛みが描かれています。
“ねぇどうしたいんだ” と自分自身に問いかける主人公の姿が浮かんできますね。
これまでは “君のSOSは 僕のものって 思い込んだ夏” でしたが、ラストでは “僕のSOSは 君のもの” と歌われています。
自分が夏芽を想っているのと同じように、夏芽も自分のことを想っていてほしいという航祐の淡い恋心が歌われているように感じました。

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さいごに
いかがでしたか?
ACAねさんの言葉遊びが詰まった、素敵な楽曲でしたね。
これからの活動にも注目です!
まるで姉弟のように育った幼なじみの航祐と夏芽。
小学6年生になった二人は、航祐の祖父・安次の他界をきっかけにギクシャクしはじめた。
夏休みのある日、航祐はクラスメイトとともに、取り壊しの進む「おばけ団地」に忍び込む。
その団地は、航祐と夏芽が育った思い出の家。
航祐はそこで思いがけず夏芽と遭遇し、謎の少年・のっぽの存在について聞かされる。
すると、突然不思議な現象に巻き込まれ――
気づくとそこは、あたり一面の大海原。
航祐たちを乗せ、団地は謎の海を漂流する。
はじめてのサバイバル生活。力を合わせる子どもたち。
泣いたりケンカしたり、仲直りしたり?
果たして元の世界へ戻れるのか?
ひと夏の別れの旅がはじまる―
映画公式サイトより