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気分じゃないの (Not In The Mood)【宇多田ヒカル】歌詞の意味を考察!フローティング・ポインツとの共同プロデュース作!

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宇多田ヒカルさん「気分じゃないの (Not In The Mood)」の歌詞の意味を考察します。

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気分じゃないの (Not In The Mood) 歌詞考察

ルポルタージュ風の実話

真っピンクのテーブルに
パステルブルーのパイプ椅子
差し出されたコーヒーカップとソーサーは
予想外な色

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

ボーナストラックを含め、全14曲の傑作アルバム『BADモード』。

UKマンチェスター出身の電子音楽家フローティング・ポインツ(アーティスト名)ことサム・シェパード(本名)は1曲目の表題曲「BADモード」、6曲目「気分じゃないの(Not In The Mood)」、本編のラスト10曲目「Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-」の3曲に参加し、「気分じゃないの」ではプロダクションのほか、キーボード(電子音楽)、プログラミング(打ち込み)、ピアノ(生楽器)を担当しています。

さらに宇多田ヒカルさんのプロダクションとボーカルのほか、ギターとベースとパーカッションが加わった編成で、「生演奏(ジャズ)と打ち込み(エレクトロニカ、トリップホップ)」の融合を堪能できる名曲です。

アルバムは2022年1月19日にリリースされましたが、この曲の作詞はなかなかできず、これまで「実話の歌詞はあり得ない」とこだわってきた宇多田ヒカルさんが「締め切り日(2021年12月28日)当日に目に留まった風景をルポルタージュ風に描写する」という「初の実話といえる歌詞」にチャレンジしています。

UKロンドン在住の宇多田ヒカルさんが街を歩き回りながら立ち寄ったのは、おそらくカフェ。

「テーブルと椅子」の色が統一されておらず、しかも「パイプ椅子」ということで、キッチュなアートカフェのようなイメージかもしれません。

「コーヒーカップとソーサー」も同じく「ピンクとブルー」とか、突拍子もない組み合わせなのかと思いきや意外と統一されていたなど、さまざまな配色の想像がふくらみます。

「生演奏と打ち込み」や「ジャズと電子音楽」の組み合わせにも通じるところがありそうです。

さて、宇多田ヒカルさんの歌詞やボーカルといえば、おもしろいのはリズムや言葉の響き。

まず耳につくのは「カップ」の跳ねるリズムでしょう。

しかも「予想外な色」に驚いたタイミングにも当てはまり、意味内容的にもドキュメンタリー風になっています。

  • ピンク、パステル、パイプ:パ行(破裂音)
  • テーブル、(パステル)ブルー:韻を踏んでいる、バ行(濁音)
  • 差し出された、ソーサー:サ行(摩擦音)
  • パイ(プ椅子)、(予想)外:「アイ」の母音で韻踏み、上記のバ行に対するガ行(濁音)

そのうえ実は上記のような仕掛けもてんこ盛り。

そもそも「母音や子音の響きから言葉をパズルのように当てはめる」という音響的かつリズム重視の作詞方法なのに、それを感じさせないほど自然な意味になっているところが唯一無二の鬼才といえるでしょう。

強い風が吹く度に
売れ残りの小さなツリーが倒れて
通行人が起こしてあげては去る

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

「実話の歌詞」といってもリアルな心情が吐露される抒情詩ではなく、淡々と風景が綴られる叙景詩になっています。

それでも、あるいはだからこそむしろ「クリスマスに売れなかったツリー」と「クリスマスを過ぎても書けていない歌詞」が重なるような「寒い冬の悲哀」が感じられるのではないでしょうか。

新型コロナのパンデミックでロックダウンという「BADモード」を経験した「ロンドンの悲哀」も連想できるかもしれません。

強い風が~ 吹くた~びに~
売れ残りの~ 小さ~なツリ~
が倒れてつ~こ おに~んが
起こしてあげ~て は去~る

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

リズムやアクセントの置きどころ(譜割り)が、J・ディラ(打ち込み)やディアンジェロ(ベース:ピノ・パラディーノ、ドラム:クリス・デイヴなど)由来の「揺れるビート」のようになっているところも最高です。

さっきまで指相撲をしてた
端の席の男女は二人とも
スマホをいじっているところ

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

引き続き、おもしろい言葉の響きやリズムと共に、目に留まった人間模様が綴られています。

仲良くじゃれ合っていたかと思うと、それぞれ自分の世界に入り込むカップル。

「指相撲(古い)」と「スマホ(新しい)」の対比により、「時代の流れ」と「時間の経過」の両方を読み取ることができるでしょう。

Oh
Rain, rain, go away
Fall on me another day
Oh
Rain, rain, go away
I’m not in the mood today
I’m not
I’m not

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

後ほど日本語でも歌っていますが、「今日は気分じゃないから、雨はどこかへ行ってほしい」と願っています。

「レイン、アウェイ、デイ、トゥデイ」の「エイ」という母音の響きが印象的です。

アウトロでは息子さんも参加

杖を片手にかけて
タバコに火をつけてる老女を横目に
スコッチを呑んで作詞しているとそこへ
クリアファイルを抱えた人がやってきて
こう言った

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

宇多田ヒカルさんがロンドンの街を歩き回りながらたどり着いたのは、パンクファッション発祥の地として知られるカムデンにあるパブ

「火~を」や「老~女」などやたらと伸ばすところと、「を横目にスコッチを」など早口になるところの交ざり具合が絶妙です。

1番の「カップ」の「カ」に呼応するように、「スコッチ」の「コ」にもアクセントが置かれています。

「私のポエム買ってくれませんか?
今夜シェルターに泊まるためのお金が
必要なんです」
ロエベの財布から出したお札で
買った詩を読んだ

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

これまで英語のサビ以外は低音ボイスでしたが、急に高音ボイスになりました。

明かされたのは「締め切りに追われて作詞中の宇多田ヒカルさんが、ねだられるままクリアファイルを抱えた人の自作ポエムを買って読んだ」という、できすぎた実話。

まず「老女がパブで煙草を吸う」ことで「高齢化社会」が浮き彫りになりました。

さらに「その日シェルター(DV被害者やホームレスなどの宿泊施設)に泊まるお金を稼ぐために、パブでポエムを売る人」に対して「ロエベの財布からお札を払う」ことで「格差社会」の実態も見えてきます。

「よりによって作詞で追い込まれている宇多田ヒカルさんにポエムを売るとは…」とか世の中の不条理についてなど、さまざまな感情がわくはずの場面でも宇多田ヒカルさんの心情は吐露されず、淡々と事実が綴られるのみです。

もしかしたら「歌詞に必要なのは気分(感情、心情吐露、意味内容)じゃなくて、言葉の響きやリズム」という話かもしれません。

案の定「私の~買ってくれませんか?」や「ロエベ」を含め、すべてのリズムや響きが非常におもしろくなっています。

実際には「ポエムを売る人」は英語で話したはずなので、訳したからカタコトの日本語のようになっているのか、それとも多少ラップ調にしてリズムをずらしまくっている可能性も考えられます。

「ロエベ」という固有名詞を使うのもヒップホップ的手法です。

一貫して音楽的表現にこだわりつつ、ポップミュージックとして昇華されているところが才能の塊といえるでしょう。

Oh
Rain, rain, go away
Fall on me another day
Oh
Rain, rain, go away
I’m not in the mood today
Oh
雨、雨、どっかいけ
また今度にして
Oh
雨、雨、どっかいけ
今日は気分じゃないの
じゃないの
じゃない じゃないの
Oh
今日は 今日は
Oh
今日は 今日は

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

日本語も交ざったサビです。

「物売りを迷惑がっている」とも受け取れるかもしれませんが、そんな「雨のような気分」こそ「どっかいけ」という話ではないでしょうか。

Hey, how are you?
How has your day been?
I’ve been quiet
Just didn’t know what to say

Hey, how are you?
How has your day been?
I’ve been quiet
It’s just one of them days

出典:気分じゃないの (Not In The Mood) / 作詞・作曲:Hikaru Utada

「本当に同じ曲?」というくらい、1曲のなかで曲調や雰囲気がガラッと変わる構成も宇多田ヒカルさんらしいおもしろさでしょう。

アウトロにつながるような曲調になり、より低音ボイスで歌い方まで変わったように感じるラストのパートです。

やあ、元気?どんな一日を過ごした?私は静かにしていたよ。何を言えばいいのか、わからなかっただけ。そんな日もあるよ」といったニュアンスでしょうか。

ロンドンの街を歩き回り、目に映ったものを描写した果てに、リスナーに語りかけているイメージかもしれません。

約7分30秒の楽曲中、5分10秒前後からアウトロに突入しますが、5分40秒前後から宇多田ヒカルさんの当時6歳の息子さんの「Not In The Mood」という天使みたいなソプラノの歌声と「できた?」のような会話がうっすら聴こえてきます。

フローティング・ポインツのサウンドと共に、聴き逃せないポイントです。

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さいごに

もしかしたら「洋楽ファンは邦楽をほとんど聴かないため宇多田ヒカルさんの突出した才能に気づかず、邦楽ファンは宇多田ヒカルさんの良さが今一つピンとこない」といった問題があるかもしれません。

クリス・デイヴとコラボした7thアルバム『初恋』から、さらに進化した8thアルバム『BADモード』ではフローティング・ポインツとコラボ。

この驚異的な流れに洋楽ファンも邦楽ファンも追いつくといいですね!

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