まふまふさん「とおせんぼう」の歌詞の意味を考察します。
5thアルバム「神楽色アーティファクト」(2019年10月)の収録曲。
まふまふさんが作詞・作曲した「とおせんぼう」の歌詞を紐解きましょう。

とおせんぼう 歌詞考察!
かくれんぼしている?

「とおせんぼう」の語り手の「ボク」は、友だちと「かくれんぼ」をしていたようです。
ところが夕日が沈み始め、辺りが薄暗くなる「黄昏」になっても、誰にも見つけてもらえなかったのでしょう。
それは「ボク」にとって人から笑われるような恥ずかしいことなので、そっと姿を消したという話です。
生きるのが下手だと自覚していて、「上手に生きたい」と願っています。
そのため「明日」は自分から「鬼」のほうへ近づいて行こうと考えました。

さっそく「露骨に嫌ったり叩いたり」する「鬼のような存在」に語りかけています。
なぜなら「嫌われ未満=無視」が「怖い」から。
まるで「ボク」が存在しないかのように無視されたり、気づいてもらえなかったりするくらいなら、「露骨に嫌ったり叩いたり」されてでも関係性があるほうが嬉しいという心の叫びですね。
素直に好かれて仲良くなることを願えないほど傷ついていると思われます。

「とおせんぼう」(通せん坊)とも「とおせんぼ」ともいう子どもの遊びになぞらえて、まるで境界線でもあるかのごとく、他人の領域になかなか踏み込めない、あるいは自分の領域に誰も入ってこない孤独が描かれています。
まわりには誰もおらず、自分以外に人間の形をしているのは自分の「影」だけという状況のようです。

「かくれんぼ」も子どもの遊びになぞらえた、「ボク」の日常生活の様子を表しているのでしょう。
もしかしたらひきこもり状態で、他人と関わらない暮らしをしているのかもしれません。
あるいは「ボク」としては普通に生活しているつもりなのに、まるで「かくれんぼ」でもしているかのように誰からも相手にされない可能性もあります。
「いないいないばあ」という赤ちゃんをあやすときの言葉をもじって、自分の存在感のなさを表現しているところが切ないです。
ダメなのは自虐モード

誰の目にも映らない状態を「透明人間みたい」ということもありますが、「ボク」の場合は「人間」ですらない「雲」のような気分なのでしょう。
無視されるのは存在そのものを全否定されるくらいのダメージを受けるので、「嫌われ者」のほうがマシということ。
「痛み」を感じることでようやく生きている実感がわき、1人の人間として「数えられている」感じがするところが痛々しいですね。
たしかに「かくれんぼ」で見つからないのは、人数としてカウントされていないことになります。
それでも人気者を目指し、楽しみや喜びを感じることで生きている実感がわくようになってほしいものです。

誰かにかまってほしいあまり、暴力を振るわれたいと懇願するところが「ダメ」なのですが、「ボク」はそのことに気づいているのでしょうか。
4thアルバム『明日色ワールドエンド』(2017年10月)の収録曲「立ち入り禁止」の「幽霊少女」は近寄らないでほしいと願いますが、「とおせんぼう」の「ボク」はどうにかして「白線の内側」に入ってきてほしいようです。

「とおせんぼ、かくれんぼ、わすれんぼ」と韻を踏んでいます。
まわりの人たちに忘れ去られているような状況なので、「白線の内側が空白=ひとりぼっち」にならないように「塗り絵をしている=存在感を示そうとしている」のでしょう。

ようやくここで「君」という「ボク」以外の人物が登場しました。
ところが「ボク」は「もういいよ」という諦めモードに入ってしまい、せっかく近づいてきてくれた「君」に拒絶反応を示してしまいます。
まだ気分は「透明色の雲」のままで、心が傷ついているのでしょう。
君をとおせんぼする理由

まだ「かくれんぼ」は続いていて、「君」が「ボク」を見つけたという展開です。
誰かに見つけてもらいたい、存在に気づいてほしいという「ボク」の念願は叶いました。
それなのに「ボク」は「君」を拒絶したままです。
なぜなら「ボク」は誰かに「嫌われたり、叩かれたり」したいと願っていたので、そのようなネガティブで暴力的なことには「君を巻き込みたくない」という話でしょう。
何しろ「君」は「かくれんぼ」という遊びの「鬼」であっても、「鬼のような人間」ではありません。

2番の「胸が痛い」は「孤独感に押しつぶされ、心が傷ついた」といった意味でしたが、最終的には「優しさで胸がいっぱい」というニュアンスに変わりました。
「いたいいたいなあ」がようやく文字通りの「いないいないばあ」になり、「かくれんぼ」で「君」に見つかったからおどけたという結末です。
これで自虐的な願望は消え失せ、ポジティブなことに反応して生きている実感を見出す方向へ進めるのではないでしょうか。

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さいごに
「とおせんぼう」の「ボク」は集団で故意に無視されたわけではなく、存在感の薄いタイプだったようです。
まふまふさん自身の「楽曲を聴いてほしい」という願望も含まれているかもしれません。
いずれにしても「君」のように見つけてくれる存在がいるはずなので、自虐的な方向にだけは進まないようにしましょう。