今回は、人気ボカロP・ピノキオピーの「神っぽいな」という曲を考察していきたいと思います。
2009年から活動されているベテランボカロP。
今回考察する「神っぽいな」は、2021年9月19日にリリースされた楽曲です。
YouTubeでのカバー動画で人気が再燃しているこの歌にはどんな想いが込められているのでしょうか?
早速見ていきましょう!

神っぽいな 歌詞考察

この楽曲では「ネット中心の社会で生きている私達への皮肉」が歌われています。
ネタバレとは、つまり結末を知ってしまうこと。
「愛」の結末は「別れ」、「人生」の結末は「死ぬ」ことっぽい。
確定ではないけれど、どうやらそんな感じらしい、と結末が見えてしまった主人公の心が歌われています。
「なにそれ意味深でかっこいいじゃん」は、主人公の言葉に対する誰かの感想でしょう。
意味深でかっこいいと言っても、詳しく知ろうとはしない、表面的な知識だけ身につけて本質を探し出そうとしない現代人の考え方を暗に批判しているように感じました。
そんな軽い感想に対して、「それっぽい単語で踊ってんだ」と詳細を説明することを諦めている様子が浮かんできました。
わからないならそのままでいいよ、と見捨てている冷酷な一面が見て取れます。

ピノキオピーは、リリース時のYouTube Liveで「『〇〇っぽい』という部分を意識して作った」とコメントされています。
その言葉通り、「〇〇風」「〇〇っぽい」という歌詞が目立ちますね。
「とぅ とぅる とぅ とぅ とぅる」という歌詞に意味なんてありません。
意味のない言葉を並べて会話している現代人への皮肉でしょう。
「〇〇風」「〇〇っぽい」と、まとめて表現し、詳しく知ろうとしない。
すぐに思考停止してしまうネット社会の悪い部分が表れていますね。
全てをカテゴリライズして知ったかぶりをする現代人は、まさに全知全能の「神っぽいな」と最大級の皮肉が歌われています。

物事を大まかに見て、本質を知ろうとしない風潮は「もういいぜ」
便利になった反面、考える力が低下してしまった現代人へのメッセージでしょう。
続く「おっきい夢」「景気は良いけど 品性はThe end」は、SNSの普及で爆発的に増えたインフルエンサーを指しているのではないでしょうか?
有名になりたい、お金持ちになりたいと大きな夢を持って、活動するYouTuberやインスタグラマー。
人の迷惑を考えない行き過ぎた行動が度々問題になっていますよね。
お金持ちで景気は良いけど、やってることは品性の欠片もない低俗なことだ、と批判しているように感じました。
「Gott ist tot」は、ドイツ語で「神は死んだ」という意味で、有名なフリードリヒ・ニーチェの言葉です。
ネットが普及し、自分自身を神のように考える「神っぽい人」が増えたせいで、本当の神という存在は消え去ってしまったということを訴えかけているのではないでしょうか?

「神」という1単語も、「すごい」「驚き」という意味で使われるようになりました。
「それマジ神」「神ってる」など、全ての物事を神でまとめるせいで、うやむやになっていく現代の社会への皮肉でしょう。
「アイウォンチュー」というフレーズも、意味なく歌詞に盛り込まれることが多いですよね。
これは、ピノキオピーの目線で感じたことなのかもしれませんが、特に意味もない歌詞を、ただ間を埋めるためだけに使うのはいかがなものか、という問いかけなのではないでしょうか?
何も考えず、ただぼんやりとした言葉で濁す現代人。
まさに卑怯で、IQの低い感じが出てしまってますね。
「畢竟」とは「つまり、要するに」といった意味を持つ言葉です。
何も考えず、それっぽい言葉を曖昧に使う奴らは、つまり邪心。
そうした人のせいで、人間全体の思考能力や価値観が下がっていくんだと、強烈に批判している様子が浮かんできます。
「アイウォンチュー」「アイヘイチュー」、「卑怯」「畢竟」、「IQ」「害虫」と、ガッツリ韻を踏んでいるところからもピノキオピーのセンスが感じられます。
そうした考えなしの「神っぽい」害虫たちは、流行りのファッションに群がります。
髪型やメイク、トレンドを追い求めた結果、皆同じようなファッションに身を包んだマネキンのようなグループの出来上がりです。
口に出す言葉でさえも、何処かで聞いたようなものばかり。
しっかりと考えて自分の言葉で表現することが出来なくなった人たちを皮肉っています。
そんなぽいぽい生活に憧れる主人公。
もう煽ってるとしか思えませんね笑。

「メタ思考」とは、物事を上から俯瞰的に見る考え方。
いい言葉のようですが、「悪意」「小馬鹿にしたような作為」というマイナスな歌詞から、ここでは「上から目線」という意味で使われているのではないでしょうか?
本当は分かっていないのに、知ったかぶりをして上から見下ろしてくる相手。
そんな人達を避けて生きるのは現代社会では難しいと悲観している様子が伝わります。
本当の神を否定し、自らが「神っぽい」存在に成り代わった人間。
器の小さい人間ほど、権力を手にすると豹変して途端に偉そうになりますよね。
「批判に見せかけ自戒の祈り」という歌詞は直接的で、他人を批判しているけど、自分もそうならないように気をつけなさいよと、呼びかけているのですね。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」というニーチェの言葉とも繋がります。

言葉の本質を理解しようとしない人は「何いってんの?それ ウザい」と、そこで情報をシャットアウト。
自分の興味のないことにはとことん無関心の現代社会の悲惨さが歌われています。
「飽きっぽい」「踊れるやつちょうだい」とは、現代人が飽き性で、流行り廃りが激しいことを批判しているのでしょう。
前述の何処かで見たことあるメイクやファッションも、すぐに過去のものとなります。
次々と新しいものを持ってきて満足させ続けて、というわがままな現代人の欲望が表現されているように感じました。

「きっしょいね」とは、動画やSNSのコメントで送られてくるアンチコメントを指しているのでしょう。
ネットゲームの世界でも、精神年齢の低いキッズ達が騒ぎ立てている場面をよく目にします。
アンチコメントを大量に送ってくる時点で「もうファンじゃん」と、煽っている主人公。
ちっちゃい器で精一杯頑張っている姿を「天才ゆえの孤独」と称賛し始めています。
煽りスキルが高い主人公ですね笑。

この部分も体を張って視聴回数を増やそうとする危険なYouTuberに向けた言葉なのではないでしょうか?
人気ものになるため度を超えた行動に走ってしまうYouTuber。
ヤケになっていると思われても仕方がないですよね。
「エピゴーネン」とは、優れているものを真似する人たちのこと。
「ヒール」はそのまま靴のヒール(踵の部分)のことを指していると考えました。
人気の企画をすぐに真似するインフルエンサー。
鶏口牛後という四字熟語がありますが、ヒールの人間たちは、まさに牛後の端にいるのでしょう。
呆れを通り越して「哀愁」を感じてきました笑。

冒頭の歌詞と同じですが、これからの結末が分かってしまった主人公。
自分も、その他大勢の人のように「無邪気に踊っていたかった」けど、すべてを理解してしまった。
もう何も考えず踊り続けることはできないという寂しさも感じられます。
「〇〇っぽい」と一言で片付けてしまう現代人を痛烈に皮肉った本楽曲。
ピノキオピーさんの想いがダイレクトに伝わってきました。

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さいごに
いかがでしたか?
聴いている自分たちも「〇〇風」「〇〇っぽい」という軽い言葉で、考えることを放棄しないように注意しないといけませんね。
ピノキオピーさんの他の楽曲も気になります。