スピッツの19thシングル「楓」(読み方:かえで)は「スピカ」と両A面で1998年7月にリリースされました。
音楽番組「COUNT DOWN TV」(1998年7月)のオープニングテーマ、ドラマ「Over Time-オーバー・タイム」(1999年1~3月)の挿入歌、ドラマ「お母さんの最後の一日」(2010年9月)の主題歌に起用されたタイアップソングです。
ドラマ「オーバー・タイム」では、反町隆史さんが演じたカメラマンの名前が楓宗一郎(かえで そういちろう)でした。
キリンビバレッジ「午後の紅茶」(2017年)のCMソングとして、上白石萌歌さんがカバーしたことでも人気が再燃しています。
ボーカル&ギターの草野マサムネさんが作詞・作曲し、スピッツと元カーネーションのキーボード&ボーカル棚谷祐一さんが編曲した「楓」の歌詞の意味を考察していきましょう。
楓 歌詞考察
失恋ソング?
「午後の紅茶」のCMでは遠距離恋愛が描かれていましたが、「楓」は失恋ソングなのでしょうか。
はっきりとわかるのは、主人公の「僕」と「君」が何気なく交流していたのは過去の話であり、現在2人は一緒にいないということです。
「君」は別れた元彼女のようですが、もしかしたら死別したのかもしれません。
主人公が抱える悩みや苦しみといった心の傷が、「君」の笑顔によって癒されていたことは間違いないでしょう。
その状況が「小さく丸く」と表現されている点については、後ほど深読みします。
主人公は過去を回想しています。
「穴」が何を表しているのか、悩ましいですね。
草野マサムネさんが書く歌詞は抽象的で、自分では解説しないというポリシーを貫いているため、正解はわかりません。
「楓」のMVでは、3Dメガネをかけ、プラネタリウムで星を眺める様子が描かれています。
MVから想像できるのは、1つの望遠鏡を2人で交互に覗き合った天体観測デートです。
その場合、実際に見えたのはスピカ(おとめ座α星)などの「星」になりますが、それぞれ別の「夢」を描いていたから2人は別れた、という展開かもしれません。
時間軸は現在に戻り、主人公は「君」に別れを告げながらも、「君の声」は決して忘れないと固く誓います。
この誓いが「君」に届くかどうか、主人公は不安な様子です。
その際の「僕のままで」という表現も、いったいどういう意味なのか、解釈が難しいでしょう。
たとえば恋人が亡くなり、主人公はずっと落ち込んでいたけれど、「恋人の声」を心に抱えながら前に進むと決意したのかもしれません。
その場合「僕が生きているまま」では、亡くなった恋人に「僕」の決意が伝わるかどうか不安、という流れになるでしょう。
「楓」の意味
別れたのか、死別したのか、いずれにしても「君」が恋人だとすると、出会うまでに主人公が「探していた」のは「愛」や「君」です。
ところが別れる(亡くなる)までに「散らかっていた」のは「水玉の雲」という表現は謎めいています。
「ガラス」という隔たりがあり、天気にたとえるなら「雨模様」なのが、別れた後ではなく交際期間中という点が腑に落ちません。
ここで、もしかしたら「君」は恋人ではないのかもしれないという考えが浮上します。
タイトルの「楓」は歌詞には登場しませんが、近い表現と思われるのは「風が~タマシイ」の部分です。
シングルのジャケットには「楓の葉、目、手」のイラストが描かれています。
「楓の葉」は「赤ちゃんの手」に似ているので、「君」は「亡くなった赤ちゃん」。
お腹の中の「小さく丸い」赤ちゃん(水玉の雲、風が~タマシイ)が笑う様子を、超音波検査装置や保育器(穴、ガラス)を通して見ていた、と深読みしてみましょう
赤ちゃんは「父親と母親の2人がいて授かることができる夢」(1人きり~夢)です。
妊娠中、出産と同時、出産後のいずれにせよ、赤ちゃんは「幸せ」に生きることができず、亡くなったのかもしれません。
「君」が「赤ちゃん」だとしても、「僕」は父親ではないでしょう。
おそらく「僕」自身の話ではなく、「僕」の友人夫婦の話です。
主人公は父親目線で心情を語ってきましたが、「主人公自身のまま」では友人夫婦と亡くなった赤ちゃんに声が届くかどうか、不安だと考えられます。
「こだま」や「君の声」は「胎児や新生児・乳児の超音波」(エコー)、つまり「赤ちゃんの心臓の音、鼓動、命そのもの」かもしれません。
もちろん「友人の亡くなった赤ちゃん」に捧げる歌ではなく、「元恋人との遠距離恋愛、失恋、死別」やその他の可能性もあります。
さまざまな考え方を参考にして、しっくりくる解釈を見つけてください。
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さいごに
「楓」は8thアルバム「フェイクファー」(1998年3月)、シングル集「CYCLE HIT」(2006年3月、2017年7月)に収録されているほか、多数のカバーがあります。
- 松任谷由実さん(トリビュートアルバム「一期一会 Sweets for my SPITZ」)
- 朝倉さやさん(2ndアルバム「マストアイテム」)
- Uruさん(1stアルバム「モノクローム」)
- 土岐麻子さん(カバーアルバム「HOME TOWN ~Cover Songs~」)
その他も含め、さまざまなアーティストに愛される人気曲ですね。