ゲスの極み乙女。(ゲス乙女)「人生の針」の歌詞の意味を考察します。
5thアルバム「ストリーミング、CD、レコード」(配信:2020年5月、パッケージ:2020年6月)の収録曲。
川谷絵音さんが作詞・作曲した「人生の針」の歌詞をチェックしましょう。

人生の針 歌詞考察!
「人生の針」は間違い?

「人生の針」は「新しいゲス乙女の始まり」を提示する楽曲です。
冒頭の前サビ、とくに「私~使えないの」の部分がテーマかつ歌詞の取扱説明書になっています。
「間違う」といえば、川谷絵音さんの過去の騒動を連想するでしょう。
むしろ「私は間違う生き物です」と開き直り、そう理解してもらえたら「あなた」と「わかりあえるはずなのに~」と続くイメージです。
ここで肝心なのは、「間違う」云々を理解しなければ「わかりあえない」ということ。
つまり「これからも間違い続けます(ただし歌詞で)」という宣言になっていて、実際「人生の方針(指針)」を「人生の針」と「間違えて」います。
もともと方針とは「方位磁石の針」、指針とは「時計などの針」のことで、転じて「物事の目指す方向、物事を進めるときに参考になるもの」といった意味で「使われます」。
要するに「人生の方針を間違えた」から「針を正しく使えない」という強烈な皮肉。
この点を理解しないと、この先の歌詞でも「わかりあえない」ことが示唆されています。

一口に「針」といってもさまざまな「針」がありますが、1番では「裁縫道具の縫い針」になぞらえているようです。
「切り込み」にも複数の意味があるものの、ここでは「裁縫で、縫い代が引きつらないように入れる布の切れ目」を下敷きに、「切り込み隊長」的な「攻撃、突撃、開拓」といったニュアンスで「使われて」いるでしょう。
「縫い針」が「正しく使えない」ために、「切り込み」という裁縫用語も別のニュアンスになっているという「間違い」です。
こうした言葉遊びに主眼がありますが、「予想外に深入りし、バッシングが大きくなった、身勝手な過去の間違いを忘れない」という内容のほうが注目されがちかもしれません。
「業」(ごう)は「自業自得」や「カルマ」的な「報い」の意味で用いられているでしょう。
その果てに「業」と「行」(ぎょう)で韻を踏む言葉遊びが繰り広げられているところにも、「間違い」を貫く覚悟を決めた新生・ゲス乙女らしさが表れています。

「タチの目」は裁縫用語「経ち目」(布の切れ目)の「間違い」で、「輩の目」を表したかったのでしょう。
過去の騒動を引き合いに出している点を踏まえると、「あなた=タチ=マスコミ」。
「マスコミに張られているから、珍しく安全な場所で善行を重ねる」といった内容です。
それより「針」にからめた「縫う」という裁縫用語や、「根を張る」と「値が張る」の言葉遊びに気づいてほしいのではないでしょうか。
この後、冒頭のサビが繰り返されます。
縫い針からレコード針へ

2番は「レコード針」。
レコードプレーヤーのターンテーブルの上にガムテープの芯などを置き、その上にレコードを「縦に上げる」ように乗せ、「レコード針」を上下逆さまにつけて再生すると逆回転になります(遡る)。
「縦に上げる」は「棚に上げる」の「間違い」で、サンプリングされたサンプル音源は味わいがない(機微とは程遠い)という意味でしょうか。
こうしたレコードの音が「隣の部屋」から聴こえてきて、休みの日にハッとしたようです。
「縫い針」から「レコード針」に変わったのは、「針」を「間違い」続けるにしても、ファッション(表層)ではない音楽家としての本質を表現すべきだと気づいたから、かもしれません。
レコードが「擦れる」、音程が「ズレる」と、言葉遊びも音楽関連になりました。

「ズレる音を笑おう」には、過去の騒動に対する皮肉も込められていたようです。
それほど遠慮なく非難する声が多かったのでしょう。

これまでのサビに「時の怖さを~走るか」の後半が加わりました。
「撫でる、切れる、わかりあえる」など韻を踏んでいますが、もう言葉遊びのような軽さは感じられません。
「舵(かじ)を切る」とは「船の舵を操作して、進行方向を変える」ことで、幅広く「方向転換、方針の変更」という意味で使われます。
「時の怖さ=過去の業」を歌詞に落とし込み、音楽として昇華することで、やっと再出発できるようです。
新生・ゲス乙女と「あなた=非難した人」はいつか「わかりあえる」でしょうか。
針のむしろを経て

どうやら過去の騒動時は「針のむしろ」状態だったという意味も込められていたようです。
誰しも「間違える」ことはあり、世間を敵に回すような経験をしたら、「その時は人に優しく」なれるでしょう。
「私」自身がレコードであり、音楽そのものになっているところが新たな始まりを象徴しています。

皮肉や苦言もありましたが、最後は「私」のほうから「わかりあおう」という姿勢を示しました。
これは「間違いではない」でしょう。

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さいごに
ラストの素直さに辿り着くと、「人生の針」は「間違い」ではなく、文字通りの意味だったことがわかります。
当時は「縫い針」が無数に刺さるような痛みを感じたから、できれば「レコード針」のように「優しく落として」ほしいという結末でした。
アルバム「ストリーミング、CD、レコード」がゲス乙女初のアナログリリースだったことから、ここまで壮大な展開になったのかもしれませんね。