「いつか結婚しても」はマイヘアことMy Hair is Badの3rdアルバム「mothers」(2017年11月)収録曲。
モデル・女優の柳美稀(やなぎ みき)さんが出演している、さわやかなMVも話題です。
ボーカル&ギターの椎木知仁さんが作詞・作曲を担当した「いつか結婚しても」の歌詞の意味を考察します。

いつか結婚しても 歌詞考察
本当に「言わない」言葉とは?

小説家・夏目漱石さんが「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したエピソードにも代表される、「愛してる」と言うか、言わないか問題を強く意識している主人公。
「大好き」などほとんど同じ意味の言葉を連発しているうえに、わざわざ「言わない」と断りを入れながら実際には「愛してる」という言葉を口にしているところがユーモラスです。
本当に「言わない」タイプの男性は、「大好き」という言葉すら恥ずかしいと感じるでしょう。
女性に対して愛情表現すること自体に照れがあるというか、「言わなくてもわかるだろう」精神を生涯貫く男性もいます。
しかし主人公は「言わない」と言いたくて仕方がないようです。

主人公が本当に「言わない」というか、恥ずかしくて言えない言葉は「愛してる」以外にあるのでしょう。
直接的な表現は避けたいものの、どうしても伝えたい話のはずです。
「手紙、写真、贈り物」については「愛してる」に続く前置きであり、照れ隠しに過ぎません。
なかなか本題に入れず、本当にもじもじしています。
「外食もいい」あたりでどうにか察してほしいという主人公の心情が汲み取れるでしょう。
本当に言えない直接的な言葉は「君の手料理が食べたい。結婚しよう」ではないかと思われます。
要するにプロポーズですね。
籍を入れる前に、結婚を前提として同棲しようという話かもしれません。

「君を幸せにする」というプロポーズの決まり文句が何となくしっくりこない人もいるでしょう。
「幸せは自分でつかむものであって、誰かに与えてもらうものではない」という考え方もあり、幸福論に発展したところでプロポーズという本題からずれるばかりです。
遠回しなプロポーズとしては「お互いのことを深く知り合おう」という表現もあります。
主人公が伝えようとしているのはこちらのパターンでしょう。
女性がしがちな「どこが好き?」という答えにくい質問にも、「優しい性格、物知りなところ」としっかり答えています。
「物知り」から「知り合おう」という表現を連想させるところが奥ゆかしいですね。

「言わない」と断りながら、「大好き」も「愛してる」も繰り返し言い続けています。
主人公にとって「君」は本当にかけがえのない存在なのでしょう。
「退屈」を覚悟していることから、2人はある程度長い付き合いなのだろうと推察できます。
恋愛初期にはドキドキするような高揚感があり、非日常的なデートで浮かれたり、ケンカをしてひどく落ち込んだりしがちです。
しかし付き合いが長くなると、日常生活に相手の存在が溶け込むようになり、適度な居心地の良さが生まれます。
何気ない平凡な日々を積み重ねる幸せは、ときには「退屈」と感じることもあるかもしれません。
そこまで踏まえたうえで「ずっと一緒にいよう」というプロポーズですね。
実質プロポーズが続く

わざわざ「他人」という言葉を持ち出しているのは、「家族になろう」という直接的な表現を避けた反動でしょう。
「夫婦といえども元々は他人同士」なので「親しき仲にも礼儀あり」というか、「お互いに好みを尊重し合う夫婦になろう」と提案しているようです。
「このまま暮らす」とのことなので、既に同棲や半同棲は始めていて、いよいよ「入籍しよう」という流れなのかもしれません。
結婚するとお互いの生活も仕事も遊びもすべてが日常になるので、非日常的な息抜きといえば「旅行」です。
「新婚旅行はどこへ行こうか」といった誘いの言葉にも聞こえます。
主人公は妻に対して思いやりのある夫になりそうですね。

「取っておく」と言いながら、実際には何度も「愛してる」という言葉を繰り返し続けました。
それでも本当に言えなかったのは、やはり「結婚しよう」などのプロポーズの言葉でしょう。
とくに同棲から結婚へと進む場合、婚姻届を提出したり、名前が変わったりといった事務手続きはあるものの、生活そのものに「大した」変化はありません。
同棲カップルだったからこそ、なおさら「大げさなプロポーズの言葉は必要ない」ほど既に強い絆で結ばれているとも考えられます。
たしかに直接的な表現はありませんでしたが、主人公らしい熱のこもったプロポーズの歌に仕上がっていたのではないでしょうか。

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さいごに
「いつか結婚しても」は、未練たっぷりの女々しいMy Hair is Badらしからぬ前向きなさわやかソングとして注目を集めています。
しかし「言わない」と断りながら「愛してる」という言葉を連発しまくり、実質プロポーズなのに「いつか結婚しても」というタイトルをつけるところは、やはりひねくれています。
実際に結婚して幸せになったとしても、斜に構えた視点からラブソングを届けてくれることでしょう。