星野源さんのデジタルシングル「異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ)」(2022年7月)の歌詞の意味を考察します。
映画「ゴーストブック おばけずかん」(2022年7月)の主題歌として書き下ろされました。
星野源さんが作詞・作曲した「異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ)」の歌詞の意味を見ていきましょう。
映画の概要
斉藤洋さん作、宮本えつよしさん絵による児童書「おばけずかん」シリーズ(2013年6月~)を原作とした、山崎貴さん監督・脚本による実写映画「ゴーストブック おばけずかん」。
海辺の町で祠(ほこら)に願い事をした坂本一樹(城桧吏さん)ら子どもたちは、おばけの図鑑坊(声:釘宮理恵さん)に導かれ、葉山瑤子先生(新垣結衣さん)とともに願いを叶える図鑑「おばけずかん」を探します。
怪しい店主(神木隆之介さん)がいる古本屋で図鑑を手に入れたものの、町は一変。
子どもたちが命がけの試練に挑み、一反木綿(声:下野紘さん)や山彦(声:杉田智和さん)などのおばけを図鑑に封印し、願いを叶えるべく奮闘する物語です。

異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) 歌詞考察
踊り遊ぶ祭りが大事!
静かに 時計の針が止まって
窓から ぬるい風と共に来たる祭ることを忘れた 愚か者達の世
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
枕這う声がきみに 囁いたら
中毒性があるサビのほか、ポップかつファンキーなディスコ調のダンスミュージックのような分厚いサウンドが特徴的な「異世界混合大舞踏会」。
星野源さんがボーカル、コーラス、デジタルシンセ、プログラミングのほか、数々のアナログシンセとストリングスシンセ&ボコーダーを活用していて、ジャズピアニストの海野雅威さんもアナログシンセとストリングスシンセ&ボコーダーを演奏しているため、ジャズっぽい雰囲気も漂います。
さらに、Ovall(オーバル)のドラマーmabanua(マバヌア)さんがベース、デジタル&アナログシンセ、プログラミングのほか、ローズピアノ、クラビネット、テルミンを重ね、ペトロールズの長岡亮介(東京事変の浮雲)さんがギターとコーラス、図鑑坊・一反木綿・山彦役の声優3人がコーラス(feat. おばけ)で参加しているという豪華さです。
早くも妖しさとグルーヴ全開のイントロに続く冒頭のパートでは、映画の子どもたちのもとにおばけの図鑑坊が現れるシーンが描かれているのでしょうか。
あるいは「死者の霊を祭ること=祭り=ダンス、ダンスミュージック」を忘れたら大変なことになると警告しているようです。
おばけが でるぞ
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
耳のうしろ あの世が踊る
おばけが でるぞ
だけど わりとそこまでは悪くない
おばけが きみを
連れて 視えぬ世界を遊ぶ
おばけは いるぞ
だけど 生きた人よりは 怖くないよ
「異世界混合大舞踏会」という曲名が示すとおり、「この世(視える世界)とあの世(視えぬ世界)」や「人間とおばけ」などの「異なる世界」を混ぜ合わせて「踊り遊ぼう」という話です。
「メインストリームのポップミュージック」に「オルタナティブなダンスミュージック、ジャズ、R&B、ソウル、ファンク」などをミックスするニュアンスも込められているでしょう。
「人間とおばけ」の場合、一般的には「生きた人が死者の霊を怖がる」わけですが、ポップマエストロ星野源さんは「おばけにしてみたら人間のほうがよっぽど怖い」とあっさり本質を突いたうえで、さっさと「遊び踊って」います。
歌詞としては表記されていない「うらめしや」というコーラスも、「踊り遊ぶ」ことによってすでに「恨みや怨念」の意味性を失っているように聴こえるところがさすがです。
おばけは見守ってくれている
密かに きみの肩に留まって
この世が 変わりゆく様を観てる名付くことで 我ら生まれてきた いつの日も
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
未知を受け入れることが もしできたら
「おばけ」は想像上の「死者の霊」のはずですが、人間がたとえば「一反木綿」や「山彦」と「名前を付けることによって生まれてきた」という、もはや死んでいるのか生きているのか、存在するのかしないのかもよくわからない「未知」の状態になっています。
実は「私たちを見守ってくれている存在」と考えると、壮大な歴史に感謝したくなるのではないでしょうか。
おばけが でるぞ
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
川の向こう あの子が踊る
おばけが でるぞ
胸の闇を 食べながら歌いだす
おばけが きみを
大人 聴けぬ言葉で笑う
おばけは いるぞ
側で いつも見てるから 覚えててね
星野源さん自身が「おばけ」目線で「おばけ」の心情を代弁しています。
童心を失った「大人」にはなかなか感知できない「おばけ」ですが、私たち人間のネガティブな感情を昇華しながら「歌い踊っている」のかもしれませんね。
遊ぶしかない!
嘆く民に 多様な神に
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
行き詰まるこの地球に
きみが創り 化け出る
「嘆く民」と「多様な神」で韻を踏みつつ、「おばけ」は「人間」が「想像」かつ「創造」しなければ「化け出る」ことができないと指摘しています。
星野源さんのシングル「創造」(2021年2月・6月)の「創り出そう」というメッセージにもつながるかもしれません。
おばけが でるぞ
出典:異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ) / 作詞・作曲:星野源
生きて踊る ぼくらを繋ぐ
おばけが でるぞ
涙拭いて 遊ぶしかないからね
おばけが きみを
残し 視えぬ世界へ帰る
おばけは いるぞ
さらば 生きる人たちよ 気をつけてね
「ポップとオルタナティブ」や「健全さと妖しさ」などを絶妙に「繋ぐ」星野源さんワールドに引き込まれましたが、そもそも「異世界混合大舞踏会」は映画「ゴーストブック おばけずかん」の主題歌。
そろそろ「おばけ」たちが図鑑のなかに戻る時間のようです。
どれほど悲しいことがあっても「遊ぶしかない」と勇気づけてくれたり、「気をつけて」と見守ってくれたりする「おばけ」たちの「大舞踏会」でした。

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さいごに
「おばけがでるぞ」のリズムや「うらめしや」のコーラスがクセになりますが、キャッチーなメロディを「人間」とすると、アナログシンセなどその他のサウンドは「おばけ」に相当しそうです。
イヤホンやヘッドホンなどのノイズキャンセリング(騒音を軽減する機能)のように、ボーカルや歌詞だけを拾い、その他のサウンドを聴かない人もいるかもしれません。
メロディだけだと子どももノリノリになるほどシンプルですが、その他のサウンドに耳を傾けると「異世界混合大舞踏会」という曲名がしっくりくるほど楽器たちが大騒ぎしていることがわかります。
ちなみに英題は「I Wanna Be Your Ghost」。
そういう意味でも「おばけは創造物」であり、「おばけの創造物で踊り遊ぼう」という趣向だったのではないでしょうか。