今回は2020年2月12日にリリースされたアルバム「Smile」に収録された「いのちの食べ方」の歌詞考察をしていきます。
「いのちの食べ方」は、Eveさんが作詞作曲を手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう。

いのちの食べ方 歌詞考察
孤独感と焦燥感

冒頭、主人公は自分自身に何かが欠落している感覚を覚えている様です。
「バックパッカー」は最小限の荷物を背負って低予算の旅をする人たちのことを指しますが、主人公はさながら「バックパッカー」の様に何か心の中で「足りないものを探して」いる状態にあります。
主人公は衝動的な心情とともに、ドラマチックな出来事を期待すると同時にその期待を打ち消しており、焦燥感にかられている様が伺えます。
つまり「君」がふいに現れることを待ち望んではいるが、それはないだろうと期待半分、諦め半分といったところでしょうか。

ここでは主人公は効果があるかどうかも怪しい「おまじない」にすがって「君」を待っているものの、期待と不安に翻弄されている様子が描かれています。
主人公が望んでいるものは「君」であり、また「握りしめる手」「温もり」である様です。
主人公は孤独な中、焦りと同時に人の温もりを渇望している様が強くわかります。

ここでは心の感受性が鈍り、周りにある美しいものに気付かない自分自身に「見過ごすな」と喝を入れ、警告している様です。
心がネガティブな状態の時は、美しい色彩で彩られている物や景色も灰色の様にくすんで見えてしまうものです。
「心まで貧しく」「グレイの海」「彷徨った」というフレーズから主人公の孤独で暗い心情が感じられます。
現状との葛藤

またここでも「君」が出てきます。
主人公が渇望している「君」には時間がありません。退屈しのぎに飲酒し酔って時間を無駄にしている場合ではないのです。
しかし、前半とは矛盾しますが「盲目でいたい」「退屈な今日」といったフレーズから時間をただ漠然と浪費していたい、という心情も垣間見れます。
主人公の心の揺らぎが見て取れる箇所です。

冒頭はとても人間らしいフレーズが描かれています。また孤独であるが故の悲壮感やネガティブな印象はなく、「想いをぶつけ」るという他者に対するアクションを起こしています。
そして一人で頭の中であれこれと考えを巡らせ、堂々巡りになるのはやめようとしています。
現実と空想のはざま

深夜、主人公はマッドハッター(童話『不思議の国のアリス』の登場人物)のように奇妙な行動で時間を浪費します。
そして、空想の世界に入り込んで「君」を待ち望んでは打ち消します。
主人公の虚しさが伺える箇所です。

前半、現実世界と空想世界の間で揺れ動く主人公は、恐らく様々な皮肉や呪詛の言葉を思い浮かべたり呟いたりしたのではないかと思います。
言葉には”言霊(ことだま)”が宿っているとよく言われます。ネガティブな言葉を発すればその言葉がそのまま自分に返ってくるものです。
前述の様々な「言葉の棘」は結果的に主人公自身を痛めつけることになる訳です。
ここで漸くタイトル「いのちの食べ方」に纏わる”食”に関わる言葉「飲み干した」「カトラリー」「テーブル」「ナイフ」が出てきます。
後半でてくる「カトラリー」とは食卓用のスプーン・フォーク・ナイフ等の金物類のことを指します。
孤独な主人公は食器類にこだわりがあるように感じます。「お気に入り」の「カトラリー」を所有しているものの、残念ながらひとり寂しい食事をしていたようです。
そして”食”に対する本音である「テーブルをみんなで囲みたかったんだ」というフレーズが提示されます。
”食べること”=”生きること”と置き換えることが出来るかと思います。
つまるところ人の温もりを感じて生きたかった、愛を感じて生きたかったということでしょう。

フォークやナイフの正しい扱い方を教わることがなかった主人公。つまり上手く生きていく術を知らないということでしょう。
冒頭の「喉仏」は声=言葉に纏わる単語です。主人公の人との関わり方、コミュニケーションが上手くいかない状態を表している様に感じられます。
上手く言葉で人に想いや考えを上手く伝えることが出来ない故に、孤独なままでいるという状況なのです。

主人公は真理から目を背け、命の重さに思いを巡らせます。
上手く生きていく方法は主人公のみならず私達リスナーも同様です。
「篝火」は夜間に燃やす火のことですが、孤独という暗闇の中に上手く、正しく生きていく方法が見えるのか?と問いかけられている様です。
救いを求める声

ラストのサビがリピートされますが、最後にこのフレーズが足されています。

孤独にさいなまれながら生きている主人公を早く見つけて救い出して欲しい、という切実な願いが感じられるフレーズです。
主人公が精神的にかなり追い詰められている様が見て取れます。

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さいごに
タイトル「いのちの食べ方」は目を惹く独特の言葉選びとなっています。
ですが、ひとたび歌詞を紐解いていくと、誰しも抱える孤独感やコミュニケーション、ひいては生きていくことの難しさといった身近な問題が明らかになり、とてもメッセージ性の高い楽曲だと感じました。
Eveの今後の楽曲にも注目したいですね。