ラッドことRADWIMPS「IKIJIBIKI feat.Taka」(2018年11月)の歌詞の意味を考察します。
メジャー7th(通算9th)アルバム「ANTI ANTI GENERATION」(2018年12月)の収録曲。
野田洋次郎さんが作詞・作曲した「IKIJIBIKI feat.Taka」の歌詞をチェックしましょう。

IKIJIBIKI feat.Taka 歌詞考察!
描かれているのは現実ごっこ

ラッドの野田洋次郎さんが歌うパートです。
タイトルが「生き字引」をあらわしているとすると「生きる辞書のように物知りな人」という意味の褒め言葉ですが、わざわざアルファベット表記になっているので別のニュアンスでしょう。
「君とのあの戦争」が「誰とのどのような戦争なのか?」については、「僕の六感」と「鈍い夢」の謎が解けるとわかる仕掛けになっています。
勘のいい人はもう「IKIJIBIKI」が「何に精通した、辞書のように物知りな人」なのか、わかったはず。
それを「戦争」や「真実の競争」と表現しているのはコンプライアンスに配慮しているのかもしれませんが、交通ルールを守る余裕もない様子なので、独特で大げさな表現をしがちな主人公という設定になっていると考えられます。

ワンオクことONE OK ROCKのTakaさんが歌うパートから、2人で歌うパートにつながります。
「IKIJIBIKI」を自称する主人公が、自慢げに「失敗例」を10個以上「列挙」する「嬢ちゃんたち」に説教しているイメージでしょうか。
「鈍い夢」も「あぁなる」も「失敗例」に該当するでしょう。
それを「戦争、競争、勝ち負け、失敗」などと表現している時点で、主人公も説教相手も何かを「履き違えている」ような気もしますが、主人公なりの主張は続きます。

引き続き、2人で歌うパートです。
「飛び跳ねる」と「とっ散らかる」は同じことをあらわしているでしょう。
「エイ、ヤ、ソ」も含め、ほとんどは遠回しな表現になっていますが、ちらっと具体的な言い回しも混ざっています。
「僕」と「君」は心の通い合った恋人同士ではなく、単なる「現実ごっこ」にすぎないので、このような「競争」になってしまっているのかもしれません。
愛のない関係が描かれているとすると、「僕」と「君」の両方の立場に対する皮肉とも考えられます。

Takaさんが歌うサビでも、主人公独自の大げさな表現は続きます。
あせればあせるほど思うようにならないらしく、「失敗続きで宿題が終わらず(目的を果たせず)、世界がビクともしない(相手が反応しない)状態」ということですね。
とくに若い頃は恋愛関係で問題を抱えがちかもしれませんが、具体的に踏み込んで歌詞にするのは邦楽ではなかなか珍しいのではないでしょうか。
IKIJIBIKIは成功者の参考書

2番に入ると「1番の僕と君の両方を俯瞰する語り手」になります。
その語り手は「1番のような現実と、鼻差0.1 秒の平行線上で勇気が勝っている表現者」であり、野田洋次郎さん(とTakaさん)目線と考えられるでしょう。
「1番の僕は成功者の参考書(IKIJIBIKI)を読破して街へ駆け出していた」という種明かしです。
これまでに「失敗」という言葉は出てきましたが、ここで初めて「成功」という対義語が登場するところに、表現者としてギリギリで保っている品性を感じます。

1番では「万歳、犯罪、場違い、天才」と韻を踏んでいましたが、2番では「凡才、いらっしゃい、放し飼い」に変わりました。
1番で「万歳と勝った気満々だった君」も、「君のは場違いだと犯罪級の正論を吐き、天才気取りだった僕」も、「凡才が通りゃんせ」劇場で上演された「放し飼いの戦慄と慟哭」という芝居の登場人物のようなもの。
2番の語り手はリスナーに対して「寄っていらっしゃい、馬鹿が見る」と斜に構えています。

結局「どれほど成功者の参考書(イキ字引)を読み込んで街に繰り出しても、まともな恋愛はできない」という警告でしょう。
「明日が怖い」は「一夜限りとしか思っていない」という意味で、それでは「先が見えない」付き合いにしかなりません。
「痛くしないから」という誘い文句に騙されるくらいなら、さっさと「消えた」ほうがマシです。
邦楽では珍しいほど艶っぽい内容に踏み込んだのは、愛のない関係に対する警告であり、音楽に艶っぽさだけを求めるリスナーに対して「ナ、ニ、ガ?」と言いたかったからかもしれません。

愛のない関係を繰り返す知り合いがいても、よっぽど親しい「友達」でなければ「やめたほうがいい」とは忠告しにくいはず。
そのため「もっと自分を知ろう、自分を大切にしよう」というメッセージのこもったこの曲が作られたのではないでしょうか。
最後まで「未開拓」と「未開発」でリップサービスしているのも皮肉が効いていますね。

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さいごに
艶っぽい歌詞かと思って鼻の下を伸ばしていたら、愛のない関係やバンドマンのキャーキャー人気に対する警告でドキッとしたという人も多いのではないでしょうか。
シニカルな歌詞は骨太なロックサウンドに映えますね。