「星屑」(ほしくず)の響きが切ないバラードには、どのような意味が込められているのでしょうか。
シンガーソングライター・Aimer(エメ)さんの「星屑ビーナス」は、中居真麻さんの恋愛小説原作、佐々木希さん主演のドラマ「恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?」(2012年3~5月・10月)の主題歌に起用されたタイアップソングです。
Aimerさんが作詞、クリエイター集団agehasprings(アゲハスプリングス)所属の作曲家&サウンドクリエイターの飛内将大(とびない まさひろ)さんが作曲・編曲、音楽プロデューサー&agehasprings・CEOの玉井健二さんが編曲した「星屑ビーナス」の歌詞について考察します。
ドラマの概要
原作の中居真麻さん「恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?」は、宝島社主催の文学賞「第6回 日本ラブストーリー大賞」(2010年)を受賞した恋愛小説です。
受賞時のタイトルは「星屑ビーナス!」。
ドラマはCS放送「フジテレビTWO・NEXT・ONE」の後、地上波でも放送されました。
主人公は恋愛経験ゼロでモテない、20代後半の独身女性・宝池青子(佐々木希さん)。
一生懸命なのに不器用でだらしなく、お風呂とお酒で気分転換しつつ、独り言をつぶやきながら波乱万丈の日常に向き合う、ユーモラスで切ない恋愛物語です。
星屑ビーナス 歌詞考察!
ポジティブな失恋ソング
別れのシーンが描かれた失恋ソングです。
何事にも一生懸命でグチや悪口を言わない非モテ女子というドラマの主人公の姿が重なります。
振られても泣かずに笑う理由は、相手に不愉快な思いをさせないため。
結局うまくいかなかったにも関わらず、相手を思いやり、散らばって光る無数の小さな星(星屑)の1つのように、貴重で煌めくような出会いだったと感謝しています。
心優しく、ポジティブですが、最後に何を言えばいいのかわからないところは切ないですね。
主人公を振った相手も、誠実に向き合っていたようです。
別れを切り出す側も、申し訳ない気持ちになるもの。
だからといってきちんと謝られても、余計に惨めになります。
失恋しても大丈夫というのは、本当は「強がり」なのかもしれませんが、何度でも立ち直るタフさを持ち合わせているとも考えられるでしょう。
最初の英語の部分は「それはとても貴重なこと」と和訳できます。
失恋は悲しい出来事ですが、「出会いは貴重だった」と捉えているところが前向きですね。
「Now~」の部分は、「miss」の対象が「you」(人)なら「恋しい、寂しい」という意味になりますが、ここでは「it」(物)なので「失う、逃す」と訳すのが妥当でしょう。
「恋は貴重なものだけれど、願いは叶わず、今失ったから、1人でも頑張る」と決意を新たにしています。
たくさんの小さな星が散らばって光る夜空。
その「星屑」を「出会い」にたとえることで、恋のチャンスは限りなくあるから問題ないと言い聞かせています。
星屑みたいなのは自分だった
2人で楽しい時間を過ごしたときより、振られる今のほうが笑っていたいと主人公は願っています。
「強がり」ではないと主張するほど、本当は強がっている場合もあるものです。
矛盾する心の表れなのでしょうか。
1番で「it」だった部分が「you」に変わりました。
別れを切り出された今でも、主人公にとって「君」は貴重で恋しい存在ですが、思い出として昇華しようとしています。
別れの場面で泣かずに笑う理由は「相手に自分の笑顔を思い出してほしいから」でした。
たしかに最後に会ったときの表情が、記憶に残りやすいものかもしれません。
「自分が涙を流す姿をもう見たくないはずだから」というストレートな思いやりだけでは、相手が恐縮してしまったので、今度は「自分の都合で笑っている」と気遣っています。
振られても泣かない理由をさんざん積み重ねているうちに、涙があふれてしまいました。
一生懸命で不器用というドラマの主人公の性格がにじみ出る瞬間です。
結局「ただ一緒にいる」というささやかな願いさえ叶いませんでした。
これまでは「出会い」を「星屑」にたとえていましたが、最後は自分自身を「星屑」になぞらえています。
その他大勢の1人に過ぎない、出来の悪いクズみたいな人間だったかもしれないけれど、ビーナス(美と愛を象徴する金星)のように光り輝いていたことを覚えていてほしい、という意味ではないでしょうか。
最終的に泣いてしまったにも関わらず、「出会い」は星の数ほどあると繰り返しています。
たとえ「強がり」でもポジティブな言葉を放つことによって失恋を乗り越えられるでしょう。
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さいごに
「星屑ビーナス」は「あなたに出会わなければ ~夏雪冬花~」と両A面の4thシングルで、2012年5月に先行配信、7月に配信、8月にCDリリースされました。
1stアルバム「Sleepless Nights」(2012年10月)、ベストアルバム「BEST SELECTION “blanc”」(2017年5月)にも収録されているので、併せてお楽しみください。