yamaさんの「希望論」は、2021年9月リリースの1stアルバム「the meaning of life」の収録曲。
12人の監督、12本の短編からなるオムニバス映画「DIVOC-12」(読み方:ディボック-トゥエルブ、公開:2021年10月)の主題歌として書き下ろされました。
映画「DIVOC-12」に込められた思い・コンセプト・テーマは、どのように楽曲へと反映されているのでしょうか。
ボカロP・ADA(アダ)さんが作詞・作曲・編曲した「希望論」の歌詞について考察します。
映画「DIVOC-12」の思い・コンセプト・テーマ
映画「DIVOC-12」は、COVID-19(新型コロナウィルス)の影響下にあるクリエイターたちの創作活動を支援するため、エンタメ企業ソニー・ピクチャーズ(SPE)が立ち上げたプロジェクト。
「COVID-19を引っ繰り返したい」という思いから、タイトルは「COVID→DIVOC」と逆さ読み(倒語)で、「D:多様性・I:革新・V:新しい価値・O:個性・C:創造」がコンセプトになっています。
12人の監督のうち、藤井道人監督・上田慎一郎監督・三島有紀子監督の3人が4作品のチームをまとめる総指揮となっていて、3チームのテーマは順に「成長への気づき・感触・共有」です。

希望論 歌詞考察!
映画と楽曲の関係性

「希望論」は12本の短編映画の内容に寄り添うというより、映画に込められた思い・コンセプト・テーマがそこはかとなく香る、独自の歌物語になっています。
その手法自体、多様性や個性、創造といった「DIVOC」のコンセプトと重なるようです。
さて、命に関わるコロナ禍のなか、映画や音楽などのエンタメ業界で働く人も、楽しむ側の人も、それぞれ葛藤が絶えないでしょう。
ストレスがたまり、大声で叫びたい言葉が冒頭の「正解なんて~」です。
いくらでも代わりが利く時代だからこそ、不正解と言われがちな人や物などが存在する意味を見出そうとしています。

物が話し始めました。
「張り付く」という表現は、映画の3つのテーマのうち「感触」に近いでしょう。
密を避けるため「人との触れ合い」がなくなり、「物との触れ合い」になってしまうほどの混乱ぶりです。

「Tシャツ、ビルの画面、アスファルト、新聞紙」が話す声を聞いている「貴方」は果たして誰なのか、という「新聞紙」からの問いかけです。

yamaさん自身、他のアーティストの音楽を聴いてダメージを受けたようです。

冒頭と同じ「正解なんて~」という言葉こそ、「怒りに似た希望論」(反論めいた願望)でした。
「DIVOC」のコンセプトでもある「個性」は、場合によっては「不正解」と言われがちです。
yamaさん自身、誰かの音楽と比較して「不正解」と言われたように感じ、物が話しているように聞こえたり、自分を見失ったりするほど混乱しているのでしょう。
そこで「正解なんて~」という「希望論」を「忘れないように」掲げ、「いつか」再会しようと誓っています。
いつか掲げる「希望論」を忘れたの?

「正解なんて~」と威勢よく「希望論」を掲げたことを忘れてしまったのでしょうか。
再会するのは「いつか」なので、「何もない」状態が続きます。

また物が話し始めました。
「希望論」を掲げて再会したいのはリスナーのはずですが、「明日」再会するのは「古ベンチ」なので、まだ「何もない」状態が続きます。
「週刊誌」のネタにされないほど売れていない、と悩んでいるようです。

「売れる音楽が正解とは限らない」と反論したいけれど、「自分の音楽が売れてほしい」という願望もあり、「何も言えない」状態に陥っているのでしょう。

本格的に「希望論」を掲げる3番(いつか)までの間の2番では、葛藤している状態の「憂鬱」を「言葉」にしておく、という話だったようです。
映画のテーマ「共有」に照らし合わせると、「葛藤の共有」になるでしょう。
この歌に込められた本当の思い

エンタメ業界を含むコロナ禍の状況についても、yamaさん自身の音楽活動についても、「正解なんて無い」という旗印を掲げたいものの、結局「怒りに似た希望論」になってしまい大混乱。
そんな「思いの共有」こそが「この歌」であり、「僕の本当」なのでしょう。

代わりが利く世の中でも、「この歌だけ僕の本当」というのがyamaさんの「存在証明」でした。

最後に「正解なんて無い」が「正解だってある」に反転。
「COVID-19を引っ繰り返したい」という映画の思いと共鳴しました。
誰かにとっての「正解」を押しつけられると「正解なんて無い」と反論したくなり、誰かに「不正解」と決めつけられると、自分なりの「正解だってある」と返したくなるもの。
いずれにせよ腹が立つということは、そうであってほしいと望む願望にすぎません。
つまり「正解」はあろうがなかろうが、どちらでもかまわないのです。
だから2番では「希望論」を「忘れたフリ」していたということ。
リスナーと共有したかったのは、何とも言えない「引きずった」気持ち。
「僕の本当」の思いがこもった「この歌」で再会しようと約束しています。

yamaさんの思いも、映画の思い・コンセプト・テーマも、もう伝わりましたね。
全体を通して、映画のテーマ「成長への気づき」も味わえたのではないでしょうか。

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さいごに
さまざまな考え方がありますが、思いを共有し、心がつながる場所があることで救われる人もいるでしょう。
yamaさんの「希望論」と共に、映画「DIVOC-12」も楽しみたいですね。