今回は2006年1月25日にリリースされたセカンドアルバム「大人(アダルト)」1曲目に収録されている「秘密」の歌詞考察をしていきます。
「秘密」は、ヴォーカルの椎名林檎さんが作詞・作曲を手掛けました。
では早速歌詞の考察を始めていきましょう!
秘密 歌詞考察
理性を捨てる
歌詞の中の登場人物は主人公と「あなた」の二人です。
歌詞で注目したいのが”口”に纏わる言葉やフレーズの数々です。
ここでは「云いたくない」「口は~捕う」「慣用句」と、連なっています。
「口」は食事をしたり、話をしたりする器官ですが、ここでは徹底して言葉に対して否定しています。
言葉というのは理性の象徴みたいなものです。
「今宵」はそういった理性を司る言葉を聞いたり話したりするのは「止めて」欲しいと主人公は思っています。
何故なら、主人公にとって言葉は「虚しい」ものだからです。
そして「あなた」は「獣」で、主人公は今夜その「獣」とは「口」を通して対話をするのではなく、捕獲すると言っています。
しかもその「獣」は「猛威を奮っている」とあり、荒々しく激しく愛し合う様が目に浮かんでくるようです。
愛し合うのに言葉=理性は要らない、という訳ですね。
ここで主人公は「あなた」を只々誘っています。
「此処へ来てさあ早く」「素肌 引っ搔いてみて」といった”挑発的”な言葉で誘惑します。
そしてここでも「食べられちゃあ勿体無い」と”口”に纏わるフレーズが見られます。
「夜に食べられ」る、とはどういったことでしょうか?
そのあとに、「勿体無い」と続いていますので、夜だからと何もせず眠ってしまうことを拒んでいるのでしょう。
睡眠に抗って、「獣」らしく「引っ掻いてみて」欲しいと誘っているだけでなく、「誰も知らない内に」とあり、秘密裡に、こっそりと「獣」みたいなことをして欲しいと言っているのです。これはかなり刺激的ですし、理性は不要というのは納得ですね。
本能のまま
ここでも「聴こえていない」「テレビなどは消して」とあり、”言葉=理性”を拒否しています。
また、”言葉”に纏わる「耳」という言葉が出てきますが、「優雅に踊っている孤独を探す」とあり、「耳」が本来の機能をすることを拒絶しています。
また「獣」は本能の赴くままに愛し合うことの象徴のような言葉です。
「獣」のように愛し合う「今宵」にとって、ニュースが報じられる「テレビ」の音も無粋で邪魔なだけです。
そして何か音がしたところで、「獣」のように只愛し合うことのみに夢中な二人にとっては「何にも聴こえていない」ので、言葉も無意味なのです。
またニュースが伝える「惨事」も、もし聞こえてくれば「哀しい」と感じてしまうので、二人にとっては不要なものでしかありません。
二行目に「優雅に踊っている孤独」というフレーズがありました。
二人は愛し合っているのにも関わらず「孤独」であるのは注目すべき点でしょう。あくまでも、身体だけの関係であって心が通い合っている訳ではないというのがわかります。
「虚しいだけ」「哀しいだけ」といったフレーズが出てきましたが、これは言葉=理性に対してだけではなく、二人の関係性に対する本音なのではないか、と思わざるを得ないですね。
ここでもまた、「飲み込めば」と「口」に纏わるフレーズが出てきます。
「身体だけが証」とあるように、理性が支配するような感情は二人にとって、何の価値も意味もないものとなっています。
「明ける日はもう其処に」とありますので、夜が明けるのがもうすぐそこまで来ているという早朝の時間帯まで、二人は本能のままに愛し合っていたのでしょう。
しかし「いっちゃいたいのに」と少し残念な印象を与えるようなフレーズが続いています。
まだまだ愛し足りないという心残りがそこにはあるのかも知れませんし、「身体だけ」の関係性に物足りなさを感じたり、複雑な感情が少なくとも主人公にはあるのかも知れませんね。
共犯者
主人公はここではっきりと「淋しい」と言葉にしています。
そして、二人の関係性は「恐ろしい闇」がそこには横たわっている様で、普通の恋愛関係にあるのではないことがわかります。
身体だけの繋がりの二人の関係性は「無かったことにする」必要があるということで、不倫や略奪愛などのイレギュラーな恋愛関係にあるのでしょう。
身体だけで、肝心な”心”が置き去りにされている関係の二人には、「淋しい」という感情がつきまといます。
主人公は「淋しいのはあなたばかりじゃない」と言っており、「あなた」の「淋し」さを明言するだけでなく、自身の「淋し」さをも認めています。
「淋しい」という感情を抱きながらも、密やかに関係を持つしかない二人は共犯関係にあるといったニュアンスがしますね。
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さいごに
本楽曲「秘密」はただ刺激的な恋愛の描写が描かれているだけでなく、その関係性にまとわりつく「淋しい」「虚しい」「哀しい」という感情が際立っている印象を受けます。
理性と感情が交錯する言葉選びが秀逸で印象的な楽曲「秘密」。
本楽曲を手掛けた東京事変の今後の曲にも是非注目したいですね!