Aimer(エメ)さんの「春はゆく」は、劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song(2020年8月公開)の主題歌です。
アニメ映画の内容と歌詞にはどのような関連性があるのでしょうか。
音楽プロデューサーの梶浦由記さんが作詞・作曲・編曲・プロデュースした「春はゆく」の歌詞の意味を考察します。
アニメ映画の概要
奈須きのこさんとTYPE-MOONのゲーム「Fate/stay night」(フェイト/ステイナイト)が原作です。
正義の味方を志す、魔術師見習いの少年・衛宮士郎(えみや しろう)が、聖杯戦争に巻き込まれる物語。
聖杯戦争とは、願いを叶える器・聖杯に選ばれた7人のマスター(魔術師)が、7騎のサーヴァント(使い魔・英霊)を召喚しながら、聖杯を奪い合う戦いのことです。
劇場アニメ第2作「Heaven’s Feel」(略称:HF、通称:桜ルート)は3部作で、主題歌はいずれもAimerさん。
最終章「spring song」では、士郎の友だち・間桐慎二(まとう しんじ)の妹・間桐桜(まとう さくら)が、士郎と恋人同士になったものの、闇に落ちて「黒桜」と化した後の展開が描かれています。

春はゆく 歌詞考察!
主人公は桜

「春はゆく」は主題歌であり、タイトルからも連想できるとおり、基本的に「Fate/stay night」の3人のメインヒロインのうちの1人・間桐桜(以下、桜)が歌詞の主人公になっています。
「それでも」という接続詞から始まっているのは、桜の壮絶な生い立ちに起因するでしょう。
「Heaven’s Feel」の第1章・第2章に続く、第3章という意味合いも含まれそうです。
人間らしい感情を失っていたのに、士郎の食事を作るようになり、慕う気持ちが実って恋人同士になった様子が重なります。

これまでずっと悲しい出来事が多かったのは壮絶な生い立ちが原因なのに、桜は自分が欲張りなせいだと認識しています。
「あまりにも悲しみすぎて幸せになる余裕がなかった」と考えているところも、自己肯定感が低い桜らしいですね。

もともと桜はネガティブな感情を抑え込むように、表面上は穏やかに過ごしていました。
士郎と恋人同士になり、悲しみに沈んだ毎日から幸せの絶頂へとポジティブに「変わる」ことができたらどれほど良かったでしょう。
しかし魔術師という運命から逃れられず、闇の感情が噴出して悪に染まり、いわゆる「黒桜」と化してしまいました。

士郎と桜の願いとは何なのか、その願いが叶うのかどうかは、最終章「spring song」を観た人ならわかるでしょう。
闇に落ちた桜には償わなければいけない罪があり、ただ恋人と一緒にいて楽しく笑うだけでは済まされないところが切ないですね。
このように「spring song」の世界観に入り込むこともできますが、映画を観ていない人、「Fate/stay night」を知らない人にも響く歌詞になっています。
その場合はネガティブからポジティブに「変わる」という真逆の解釈も可能でしょう。
どちらにしても善悪などの対立構造が溶け合うような深い愛が表現されています。
春が逝った後の変化に注目!

聖杯戦争は世界を救うか、滅ぼすか、命がけの戦いです。
魔術師にはさまざまなルールがあり、闇に落ちたからといって自ら姿を消すこともできない葛藤が描かれています。

「影」をはじめいずれも、「spring song」の世界においては非常に重みがある言葉です。
映画の重要なシーンが目に浮かぶのではないでしょうか。

タイトルの「春はゆく」は「逝く」という漢字でした。
誰かが亡くなったようでもあり、季節の過ぎゆく様子が表現されているようでもあります。
その流れで「輝き」という言葉が出てくるところも意味深ですね。
「許さない」という表現は、第1章「presage flower」(2017年10月)の主題歌「花の唄」とも共通しています。
桜が闇に落ちても助けようとする士郎だからこそ、桜は一緒にいたいと願ったのでしょう。
「壊れて生まれる」という再生が表現されています。

これまではずっとネガティブとポジティブの両方がセットになって描かれていましたが、春が逝ったことによって闇は消え失せ、光だけの状態になりました。
どん底状態を経験したことがある人なら、「せめて」明るく振る舞うところに共感できるのではないでしょうか。

第2章「lost butterfly」(2019年1月)の主題歌「I beg you」では「側にいて」とお願いしていましたが、「春はゆく」では「側にいる」という強い意志に変わりました。
夜に見る夢みたいな運命の物語は、現実でも生きる糧になることでしょう。
どれほど辛いことがあっても、たとえ闇に落ちても、愛の力で乗り越えたいものですね。

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さいごに
「春はゆく」は2020年3月にリリースされた、「marie」と両A面の18thシングル。
ミニアルバム「花の唄/I beg you/春はゆく」(2020年8月)、6thアルバム「Walpurgis」(ヴァルプルギス・2021年4月)にも収録されています。
浜辺美波さんが出演しているMVも話題なので併せてお楽しみください。