今回は2019年2月27日にリリースされた20枚目シングルの表題曲「HAPPY BIRTHDAY」の歌詞考察をしていきます。
同年1月クールのTBS系 火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」の主題歌となった「HAPPY BIRTHDAY」は、ヴォーカル・ギターの清水依与吏さんが作詞作曲を手掛けヒットしました。
それでは早速「HAPPY BIRTHDAY」の歌詞を考察してみましょう。

HAPPY BIRTHDAY 歌詞考察
片想いゆえの自虐

1番冒頭で、主人公は誕生日を迎えたばかりの深夜の着信音を聞いて急いで起きます。しかし、好きな人からのそれではなく落胆している心情が描かれています。
「もう背も伸びないくせに」は年を取っていくことへの不満だけでなくアイロニーも感じられます。主人公は、ある程度の年齢を重ねた大人であることがわかります。
好きな人からの電話を期待して深夜にも関わらず慌てて確認する行為や一喜一憂してしまう様は、両想い・片想い関係なく共感できるシチュエーションですよね。

ここで主人公が片想いであることがわかります。自分を想って欲しい、という強く息苦しくなる程の相手への願望が読み取れます。
「何かの手違いで」という表現に相手から想われたいという切実さと恋が成就する確率の低さが感じられますね。

この1番サビ部分で主人公と「君」との関係が提示されています。取るに足らない会話は出来る異性の友人・知人といったところでしょう。
「君を抱き締めていい理由だけが見付からない」から両想いになれる見込みの薄い片想いの切なさが伝わってきます。
そして、主人公は片想いであることを再認識し、自虐的に「ハッピーバースデー」とお祝いの言葉を自身にかけるのです。
やっかいな片想い

2番では、更に主人公の一方通行の心情が描かれています。
知っているのは「好きと言う名前の痛み」=片想いであって「愛」=両想いではないと言っています。
更には、その「痛み」を「教えてあげたい」が「結局教わるのは俺だろう」とあり、主人公はひとり堂々巡りをしている様子が痛々しくもあります。

主人公の誕生日である「今日」は、「君」から連絡があるかないか、つまり両想いになる可能性があるかないかが判明する日です。そして連絡もないまま「明日」を迎えてしまえば、これまでと同様の片想いの日々が継続するのです。
「駆け引きにも綱引きにもならないやり取り」という表現に、両想いになる可能性が限りなくゼロに近い片想いであることがわかります。
また「何ひとつ終われないけれど」に、主人公の一途な「君」への思いと気持ちを断ち切るまでの勇気がない心情が凝縮されている様に思います。それと同時に、主人公独自のやっかいな、かなり重症の片思いの状態に強烈な切なさや侘しさを感じるのです。
自己卑下と慎ましやかな願い

取るに足らない言葉でのみの繋がりの主人公と「君」。一方通行で上手くかみ合っていない関係、つまり主人公の片想いの状態が続いています。
そんな主人公の今の唯一の願いは誕生日にお祝いの言葉を掛けて欲しいだけなのです。
「つまらない」「つじつまもきっと合ってない」「ひとりよがり」と自分を卑下するネガティブな言葉が続きますが、「君」との歪んだ関係性を客観的に捉えて認識しています。
この関係性というのは、主人公は「君」に特別な感情を抱いているのに対し、「君」は主人公のことを友人・知人としかみなしていない、というもの。
見込みがなく実に辛い片想いの主人公の心の痛みが良く理解できますね。
そんな痛々しい主人公の欲しいものは、「君」からの「ハッピーバースデー」の言葉だけという非常に慎ましやかなもの。
たとえ両想いになる可能性がゼロであっても、思いを寄せる人から言葉をかけてもらえたら嬉しいものですよね。
たとえそれが友達に対しての軽い気持ちの何ということもない言葉であっても、辛すぎる片思いの只中では幸せな気分になれるのではないでしょうか。
その言葉が「ハッピーバースデー」であれば尚更ですね。
辛いだけじゃないHAPPY BIRTHDAY

このラストのサビで1番のサビに戻ります。
主人公と「君」とはただの友人・知人の関係で両思いの可能性も殆どないというかなり辛い状態にあり、その状況を直視しています。
2回繰り返される「ハッピーバースデー 片想いの俺」は、この楽曲の肝となる部分と言えるでしょう。
「ハッピーバースデー」と「君」から言われることはないだろうと悟り、受け入れて、自ら仕方なく言っているという考察がある一方で、「君」から言ってもらえたら良いのに…と祈る気持ちで自ら2回言っていると解釈をする考察もあります。
本楽曲の作詞を担当したボーカル清水依与吏さんのオフィシャルインタビューによれば
とのこと。
歌詞の殆どの部分は、じっくり読み込んでいけばいくほどに切なく、痛々しく、苦しい感じが伝わってきます。
祝ってくれる人のいない寂しい誕生日が描かれていますが「ハッピーバースデー 片想いの俺」の部分で少し気持ちが楽になる感じがしますし、主人公は勿論、リスナーも少し救われる気がしますね。
自分に「ハッピーバースデー」と言う情景は、客観的に見ると少し滑稽で可笑しみを感じますが、そうすることで主人公は究極の片想いとも言える現状をうまく受け入れて共存しようとしているのでしょう。

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さいごに
「HAPPY BIRTHDAY」というタイトル自体は楽しそうでポジティブな印象ですが、歌詞を紐解いていくと「ハッピー」とは真逆な風景が目の前に広がっています。
大人になるにしたがって恋愛に対して以前より慎重になり、親しい間柄であるがゆえに自分から好意を示すのを躊躇ってしまい受け身に徹してしまう、という人も少なくはないのでは?
また子どもの頃には楽しく嬉しかった誕生日も、年を重ねるにつれ少しずつポジティブな感情も薄れていきますよね。
それでも自分の誕生日を誰かに祝ってもらえたら、「おめでとう」の一言だけでも言ってもらえたら、やはり嬉しいはずです。
そして、もしも片想いの相手から「おめでとう」と言われたら、ほんの数パーセントくらいでも希望が持てるのではないでしょうか。
「HAPPY BIRTHDAY」は、大人ゆえにナイーブでもどかしい片想いの心情が細やかに表現された上質なラブソングに仕上がっています。
2021年BTSへの楽曲提供で話題になるなど、活躍の場を広げていくback numberの今後の歌詞にも注目していきたいですね。
しんどい時って、自分のことを皮肉れると、良い方向に向かえるかもしれないので、「誕生日おめでとう」って自分で自分に言ってみるという。